超高齢化住宅を考える パナホームと大阪市立大学が共同研究を開始

2014年10月4日 19:40

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記事提供元:エコノミックニュース

 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり」。これは、かの戦国武将・織田信長が好んで舞ったことでも知られる幸若舞「敦盛」のあまりにも有名な一節だ。人間の人生は僅か五十年。天界の時間の流れに比べると一瞬にしか過ぎないというような意味だが、最近は天界だけでなく人間界でも、50歳程度ではまだまだ「若い」といわれるようになってきた。

 敬老の日に合わせて総務省が発表した推計によると、65歳以上の高齢者は2014年9月15日現在で3296万人にのぼり、総人口の25.9%を占めていることが分かった。これは昨年と比べると、なんと65歳以上の高齢者がわずか一年で111万人も増えている計算になる。数字で言われてもピンとこないかもしれないが、富山県の人口が2014年8月1日現在で109万人であるといえば、その規模の大きさと深刻さをお分かり頂けるだろうか。

 これに対し、法制度の面でも様々な施策が進みつつある。とくに住宅施策においては2011年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」が改正されたことに伴って、国土交通省と厚生労働省の共同管轄で「サービス付き高齢者向け住宅」の登録制度など、高齢者が安心して生活できる住まいづくりへの取り組みが行われている。しかし、残念ながらサービス付き高齢者住宅の供給戸数は必要数に対して大幅に不足しているのが現状だ。さらに、認知症高齢者に欠かせない生活支援や介護サービスなどは、現行制度上ではサービス付き高齢者住宅において必須条件にはなっていないなどの課題もある。

 このような状況の中、今後深刻化していくであろう超高齢化社会に向けての取り組みが民間レベルでも活発化している。例えば最近では、公立大学法人大阪市立大学と住宅メーカー大手のパナホーム株式会社が2014年9月11日、サービス付き高齢者向け住宅などにおける自立支援の実施状況と、住環境が入居者の心身機能維持に及ぼす影響について、共同研究を開始したと発表している。

 パナホームは大手住宅メーカーの中でも早くから医療・介護建築に積極的に取り組んでおり、認知症高齢者の住まいである「グループホーム」や、今年発売を開始した認知症配慮ケア付き高齢者住宅「グランマ」など、過去14年間に渡って約1400ヶ所以上の建築を手掛けている。また、同社が今回タッグを組む大阪市立大学大学院生活科学研究科の三浦研教授は、認知症に配慮した環境計画など環境行動理論に基づく高齢者施設や住宅の計画・設計・研究に取り組んでいる。両者は今後、これまでの実績とノウハウを活かし、また共有しながら研究を進めていく。

 具体的には、同社が施工したサービス付き高齢者向け住宅など15の施設で、入居者や職員に対する聞き取りやアンケート調査を実施する。一施設あたり10名、計150名の入居者との面談が行われる予定で、今後のサービス付き高齢者向け住宅のあり方を方向づける貴重なデータが収集されることが期待されている。

 高齢化社会といえば、なぜだかマイナスイメージを持つ人も多いが、長寿高齢は本来、決して悲観することではなく、むしろ喜ばしいことであるはずだ。長く快適に生きるためにも、こうした研究が住宅業界に限らずに進んで、もっと快適な超高齢化社会が実現することを期待したい。(編集担当:石井絢子)

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