【水田雅展の株式・為替相場展望】地政学リスクとジャクソンホールが当面の焦点だが、重要イベントの谷間で材料難

2014年8月18日 00:22

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■政府の景気対策や日銀の追加緩和に対する期待あるいは督促が波乱要因

 来週(8月18日~22日)の株式・為替相場については、方向感に欠ける展開となりそうだ。国内では企業の4~6月期業績発表と4~6月期GDP1次速報の発表を通過した。当面は地政学リスクと週末21日~23日の米国ジャクソンホールでの金融・経済シンポジウムが焦点となるが、重要イベントの谷間でやや材料難となりそうだ。政府の景気対策と日銀の追加緩和に対する期待あるいは督促が波乱要因となる可能性もあるだろう。

 前週(8月11日~15日)は地政学リスクが後退して株式市場は反発し、外国為替市場ではドル高・円安方向に傾いた。日経平均株価は8月8日の急落分を取り戻し、終値で1万5300円台を回復した。ドル・円相場は米10年債利回りが上昇しない状況でも1ドル=102円70銭近辺までドル高・円安方向に傾いた。

 来週もリスクオンの流れを期待したいところだが、前週末15日の米国株式市場では買い先行でスタートしたものの、ウクライナ情勢緊迫化を警戒する動きが優勢になって結局、ダウ工業株30種平均株価とS&P500株価指数は下落、ナスダック総合株価指数は上昇と、主要株価指数は高安まちまちで終了した。外国為替市場でドル・円相場は1ドル=102円30銭~40銭近辺とややドル安・円高方向に傾いた。CME日経225先物9月限(円建て)は1万5315円だった。

 このため来週初18日の日本市場はやや慎重なスタートとなり、その後も材料難の中で方向感に欠ける展開となりそうだ。ウクライナ情勢、イラク情勢、イスラエル情勢、そしてエボラ出血熱といった地政学リスクに対する警戒感がやや後退したが、引き続き予断を許さない状況であることに変化はない。情勢悪化の報道に敏感に反応する可能性もあるだろう。

 週末21日~23日に開催される米国ジャクソンホールでの金融・経済シンポジウムでは、22日にイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長とドラギECB(欧州中央銀行)の講演が予定されている。米FRBのQE3(量的緩和策第3弾)に関しては年内に終了することがほぼ確実視されているが、ゼロ金利解除時期を示唆する発言が注目され、ECBに関しては追加利下げや量的緩和導入を示唆する発言が注目される。

 ドイツの4~6月期実質GDPが前期比0.2%マイナス成長、ユーロ圏全体で同ゼロ成長となり、ユーロ圏の景気減速が警戒されている状況でもあり、世界的に緩和的な金融政策が長期化するとの思惑に繋がれば、金融相場継続の可能性が高まるだろう。

 国内要因としては、企業の4~6月期業績発表と4~6月期GDP1次速報の発表を通過した。企業業績は自動車や電機・精密を中心に想定以上という印象だ。製造業の海外事業の好調が国内消費増税の影響をカバーした。一方で4~6月期実質GDP成長率は前期比年率換算でマイナス6.8%となった。全体で見るとほぼ想定内の水準だったが、輸出の伸びが鈍いこともあり、好調な企業業績との対比でマクロとミクロのギャップを懸念する見方は根強い。また7~9月期のプラス成長率に対する見方も強弱感が交錯している状況だ。

 重要イベントを通過したことで当面は手掛かり材料難となる。お盆休暇明けで売買代金の増加が期待され、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革に対する期待感も引き続き支援材料だが、外国人投資家のバカンスは日本より長く、GPIF改革への期待感も賞味期限切れが警戒される。物色面で引き続きゲーム・ネット関連、ロボット関連、自動運転関連などテーマ関連の主力株に個人投資家の資金が向かうかも焦点だ。

 また4~6月期実質GDP成長率が大幅なマイナスとなったことで、15年10月の消費増税第2弾実施に向けて、政府の景気対策や日銀の追加緩和の必要性を指摘する見方が優勢になっている。政策に対する期待や督促が波乱要因となる可能性もあるだろう。

 為替については、米10年債利回りが一段と低下傾向を強め、ドイツ10年債利回りも1%を割り込んだ。20日の米FOMC(連邦公開市場委員会)7月29日~30日開催分議事要旨公表、22日の米国ジャクソンホール経済シンポジウムでのイエレン米FRB議長とドラギECB総裁の講演が当面の焦点だが、地政学リスクなども影響して様子見ムードを強め、ドル・円相場は1ドル=101円台後半~102円台後半、ユーロ・円相場は1ユーロ=136円台~137円台での推移だろう。

 その他の注目スケジュールとしては、18日の中国7月主要70都市新築住宅価格、タイ4~6月期GDP、ユーロ圏6月貿易収支、米8月住宅建設業者指数、19日のユーロ圏6月経常収支、米7月消費者物価指数、米7月住宅着工・建設許可件数、20日の日本7月貿易統計、21日の中国8月HSBC製造業PMI速報値、ユーロ圏8月総合・製造業・サービス部門PMI速報値、米7月中古住宅販売件数、米7月コンファレンス・ボード景気先行指数、米8月製造業PMI速報値、米8月フィラデルフィア連銀業況指数などがあるだろう。

 その後は、8月27日のトルコ中銀金融政策決定会合、28日の米4~6月期GDP改定値、29日のブラジル4~6月期GDP、インド4~6月期GDP、9月2日の豪中銀理事会、3日~4日の日銀金融政策決定会合、英中銀金融政策委員会、4日のECB理事会と記者会見、5日の米8月雇用統計、8日の日本4~6月期GDP2次速報、16日~17日の米FOMCと記者会見などが予定されている。(アナリスト)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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