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強まるROE重視は株価形成をゆがめかねない
株価指数「JPX日経インデックス400」の構成銘柄入れ替えに伴い、ROEが注目されている。しかし、ROEは利益成長を伴わない企業でも、人為的に引き上げることが可能だ。ROE重視は度が過ぎると正常な株価の形成をゆがめかねない。[写真拡大]
日本経済新聞社と日本取引所グループ<8697>、東京証券取引所は共同で開発、運営する株価指数「JPX日経インデックス400」の構成銘柄のうち31銘柄を入れ替えると発表したことで、ROE(自己資本利益率)についての関心が再び強まっている。
JPX日経400は、構成銘柄の選出に資本効率性を示すROEなどを用い、投資魅力の高い400銘柄で構成しているのが特徴。毎年8月に定期的に構成銘柄を見直すとしており、今回が初めての入れ替えとなる。ROEは純利益を株主資本で割った値で、資本効率を示す数値とされる。3期平均ROEがマイナスとなったソニー<6758>などの指数からの除外が決まり、ROEが時価総額に代わる投資指標として重みを増したことを印象づけた。
しかし、ROEは利益成長を伴わない企業でも、人為的に引き上げることが可能だ。利益剰余金を吐き出して、株主資本をそぎ落とす一方、多額の借入金で事業資金を賄って利益を出せば、理論上はROEがいくらでも大きくなる。たとえ大幅減益でも、減益率より株主資本の減少率が大きければ、ROEは大きくなる。
昨年から「リキャップCB」の発行が相次いでいる。カシオ計算機<6952>、日本ハム<2282>、ヤマダ電機<6392>が発行しているが、まさにROE重視の流れを反映したものだ。新株予約権付社債(転換社債=CB)の発行と自社株買いを組み合わせたのがこの手法。市場に流通する株式数が減り需給の引き締まりにつながる。CB発行で負債を増やすと同時に自社株買いで株主資本を圧縮する結果、資本効率が向上してROEの上昇につながる。CBは、普通社債と異なり金利ゼロでも発行できるメリットもある。
利益剰余金の一部を自社株買いにまわせば、株主資本が減少するとともに1株あたり利益も増えROE向上に貢献する。年金基金のような長期投資家にとって好ましいのは、長期的に成長していく企業だろう。しかし、ROEを重視すれば、利益剰余金で次世代の成長に向けて設備投資する企業よりも、自社株買いでROEを引き上げる企業の方が高く評価されることになってしまう。ROE重視は度が過ぎると正常な株価の形成をゆがめかねない。(編集担当:久保田雄城)
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