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JRA当たり馬券に課税強化が進む 税制調査会、取りやすいところから…
世界一の規模を誇るJRA最大の東京競馬場。過去には1日で20万人近い入場者を記録したこともあるが、近年はG1でも10万人を超えることがなくなった。当たり馬券への課税強化が進めば、さらにファンの足は遠のく?[写真拡大]
中央競馬、正式に記載すると日本中央競馬会(JRA)が開催する競馬レースの払戻金の払戻率が、今年6月以降のレースで変更となっている。意外に競馬ファンに注目されていない事実だ。
これまで、JRAでは「馬券(勝馬投票券)の売上のうち25%を控除し、うち10%分を国庫(税金)に入る(つまり払戻率75%)」とするとしていた控除率を変更し、6月7日の東京・阪神競馬場でのレースから適用している。
具体的に説明すると馬券の種類によって払戻率が異なる。順番に表記すると、「単勝・複勝」は80.0%、「枠連・馬連・ワイド」が77.5%、「馬単・3連複」で75.0%、「3連単」72.5%、そしてネットでしか投票できない「WIN5」は70.0%となる。
つまり、払戻率が高くなる傾向の馬券ほど払戻率が悪い。
同時に「WIN5」払戻金の最高額は、これまでの2億円から6億円に引き上げられた。毎週日曜日の指定5レースで行われる「WIN5」の売上は、おおむね毎週10億円程度なので、6億円が出現するには「全国で1票だけの当選」が必要となる。逆にキャリーオーバーは「当選者ゼロ」でなければ、なかなか発生しないことになるわけだ。
ところで、「外れ馬券が経費にあたるか?」を争点に争っていた大阪A氏を巡る裁判で、馬券の買い方によっては、外れ馬券が経費になると判断された。この「外れ馬券が経費」裁判では、競馬予想ソフトを使って大量購入した馬券の払戻金をめぐり、昨年5月の大阪地裁での1審判決に続き、今年5月の大阪高裁の控訴審でも「経費」と判断された。金額の多寡と継続性が「事業目的」とされ、払戻金は一時所得ではなく「雑所得」と認定された。
一般的なサラリーマンの場合、競馬の払戻金などで一時所得の儲けが年間90万円を超えると、所得税と住民税の支払い義務が生じる。これに対し、経費として認められれば、得た払戻金は必要経費すべてを所得から控除でき、税負担が劇的に減る。しかしながら、「外れ馬券は経費」という理屈は、100~1000円単位での購入が多い普通の競馬ファンの払戻金が、雑所得と見なされるケースはまれだというのが多くの意見だ。「外れ馬券が経費」は、まず認められないようだ。
ここで浮上してきたのが、税制改正の実権を握る自民党税制調査会の野田毅会長の「馬券に対する課税方法の見直しが必要」との発言だ。税制は「公平、中立、簡素」であることが大原則。万馬券を当て、律義に申告義務を果たす人もいる(あまり聞かないが?)。野田氏は「便乗していろいろとごまかしをするケースも多々ある。正直者が損するというのは、税制上、最も避けなければいけない」と、改正の必要性に言及したというのだ。
すでに政府・与党内で競馬払戻金見直しに向けた、いくつかの案が浮上しているという。JRAによる高額当選者からの源泉徴収を提案しているが、単純に「宝くじ方式」を導入しては?という案もある。つまり「6月から実施している現行控除率をさらに引き上げ、馬券購入段階で税金を支払う。その代わりに、当たり馬券の払戻金に税金はかけないという手法だ。確かに宝くじ方式を採用すると税金の取りはぐれが無くなる。しかし、当然のように払戻金が減り、ファンの競馬離れを招く恐れもある。また、この方式だと、外れ馬券購入者にも税負担を強いることとなり、「公正、中立」と言えるかという疑問も残る。
このため、野田氏は見直しにあたって「競馬を楽しむ方々の考えも踏まえて検討していかなければいけない」と慎重な考えも示しているとか。
今後の税制改正作業はなかなか難しい問題を含んでいる。全般にJRAの売上が減少傾向にあるなかで、世界最大の競馬場とされる東京競馬場ですら撤退する飲食店が表れている。競馬を巡る税制改正で、さらに売上が落ち込み、競馬場などへの来場者が減少することも予想される。競馬ファンだけでなく馬主会、競走馬生産者、調教師組合なども巻き込んだ、大きな議論を呼ぶ可能性がある。ハードルは高い。(編集担当:吉田恒)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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