(ロシア)“制裁発動のジレンマ”=米欧が制裁に動けば事態は泥沼化も

2014年3月6日 09:40

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記事提供元:フィスコ


*09:40JST (ロシア)“制裁発動のジレンマ”=米欧が制裁に動けば事態は泥沼化も
欧州連合(EU)に加盟する28カ国の代表は5日、ロシアに制裁を課す方向で足並みをそろえた。ただ、「制裁をどれだけ厳しくするか」「いつ制裁を発動できるか」については妥協点を見出せていない。

EU加盟国の間ではロシアとの経済結びつきの濃淡があり、これが具体的な制裁に向けた詰めの作業を困難にしている。

ロシアのプーチン大統領はウクライナ南部クリミア自治共和国に展開する黒海艦隊に、基地への撤収を命令したばかり。この命令の解釈の仕方がEU内部の意見対立を招いており、主に東欧諸国は「モスクワは軍を基地に戻すだけで簡単に緊張緩和を演出できる」と懸念。引き続き、ロシアがウクライナ東部に侵攻する事態を恐れている。

一方、ドイツを中心とした西欧諸国はロシア軍が軍事演習をやめて基地に撤収した点を東欧以上に評価し、ただちに制裁を加える流れには否定的だ。

また、欧米はロシアがクリミア半島から撤退することを求めているが、ドイツは「プーチン大統領がそれほど大きな譲歩に動く可能性はほとんどない」と見ている。

このため、妥協点が遠のく厳しい要求をロシアに突きつけるより、EUとウクライナ新政権との緊密な情報交換、クリミア半島の国際的監視などが現実的な事態解決に向けた道筋になるとの意見もある。

なお、米国のケリー国務長官は5日、パリでロシアのラブロフ外相と会談。ここでは具体的な合意に至らなかったものの、両者の協議は継続され、きょう6日もローマで会談が設定された。

米国はプーチン大統領が事態を悪化させた場合、ロシアに対して経済制裁を発動する構えを明白にしているが、実際に制裁が打ち出されればロシア側も対抗措置を取ることは間違いない。

ロシアは米国が制裁に動けば米国債の売りを周辺国に働きかけるなどの計画を明言している。また、制裁の発動がロシア側の態度を硬化させ、ウクライナ東部への軍事侵攻という最悪の事態につながる可能性も大いにある。

EU内部では「早くロシアを懲らしめてほしい」東欧諸国と「下手にロシアを刺激したくない」西欧諸国で意見が食い違っているが、早くロシアを懲らしめれば東欧諸国への脅威が一段と増幅する公算は大きい。プーチン大統領がこうしたEU内部の足並みの乱れを計算に入れているようで、ウクライナ情勢は緊張と緊張緩和の綱引きが長期化するかもしれない。《RS》

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