無意味な「先進国VS新興国」:対立避けて妥協点模索を

2014年2月21日 09:10

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記事提供元:フィスコ


*09:10JST 無意味な「先進国VS新興国」:対立避けて妥協点模索を
オーストラリアのシドニーで22-23日に開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、新興国が米国に対して量的金融緩和の縮小ペースを緩めるよう要求する見込みです。

ただ、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は先週、現時点では新興国の混乱が米国経済の回復に影響を及ぼすとは考えていないと述べ、現状のペースで緩和縮小を継続させる方針を示唆しました。

実際、米量的緩和の縮小が新興国全体の金融市場を揺るがしたり、マクロ環境を悪化させている訳ではありません。内戦が激化するウクライナや通貨を切り下げたアルゼンチンなど、一部の新興国に対しては投資家の不安心理が高まっていますが、“すべての新興国”ではないということです。

実際、インドやインドネシアは足元で経常収支や財政収支が改善、タイでは大規模デモが続いていますが金融市場に目立った動揺は観察されません。タイの代表的な株価指標のSET指数は今年1月6日に付けた安値から前日20日の高値まで9.3%上昇。タイバーツ相場は対米ドルで年初から0.4%の下落にとどまっています。

こう見ると先進国にも言い分があると思われますが、問題は先進国と新興国とで対立軸が深まっていること。英国のオズボーン財務相は20日、「新興国は欧米の金融政策を非難すべきでなく、自国の欠陥を修理すべきだ」と発言。

これより先の18日には、麻生首相も「米量的緩和を緩めたら大量に外貨が入ってきてどうにもならないといい、引き締めたら(外貨が)引き揚げられてどうにもならないという。一体、どっちにして欲しいのと多分米国は思っているだろう」と述べました。

新興国サイドでは、インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁が米緩和縮小を受け、「国際的な金融協調が崩壊した」と警告しました。

確かに、米国の緩和策で新興国は潤いましたが、先進国も企業などの積極的な市場参入でその恩恵を受けました。先進国の景気が回復すれば新興国から資金が引き揚げられ、今度は先進国の企業にも打撃が及ぶのは目に見えています。例えば、日本の貿易赤字が拡大した一因としてインドなど新興国向け輸出が減速したことが挙げられています。

G20ではお互いのつばぜり合いをやめなければ、先進国にも痛みがブーメランのように返ってくるかもしれません。

(フィスコ・リサーチ・レポーター)《RS》

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