(ウクライナ)通貨切り下げが現実味、外貨準備の減少がカギへ

2014年2月7日 09:44

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記事提供元:フィスコ


*09:44JST (ウクライナ)通貨切り下げが現実味、外貨準備の減少がカギへ
新興国通貨に対する過度の不安感は次第に薄れつつあります。ただ、世界には“第二のアルゼンチン”となりそうな国や地域が複数あり、何らかのきっかけで市場不安が強まる可能性は残されています。

その候補のひとつがウクライナ。同国の通貨グリブナは昨年11月から対米ドルで約10%急落しました。

ウクライナではロシア寄りのヤヌコビッチ大統領率いる政権側と、欧州寄りの民衆との対立が激化しています。昨年12月には欧州連合(EU)加盟を求める民衆が暴徒化し、レーニン像を破壊した事件は記憶に新しいと思います。

さて、通貨暴落の皮切りとなった“11月”というのはウクライナがEUとの自由貿易協定(FTA)交渉を打ち切った時期に当たります。

EUとの決別を決断したウクライナ政府を評価し、ロシアは12月に30億ドルのウクライナ国債を購入するという形で同国を支援する姿勢を明確化。これを受け、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はウクライナの信用格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げました。

とはいえ、報道によるとロシアから第2回目(トランシェ)の支払いは滞っているもよう。ウクライナ政府は国際通貨基金(IMF)との支援交渉も打ち切っており、ロシアにそっぽを向かれると危機的な状況に陥ります。

ウクライナでは外貨準備高が減少の一途を辿っており、今月10日に発表される1月の準備高は前回12月の204億1600万米ドルから187億6500万米ドルに縮小すると予想されています。昨年11月のモノの輸入総額は64億4810万米ドルで、外貨準備で輸入代金を支払える能力は3.2カ月。1月の外貨準備が予想通り減少した場合にはこれが2.9カ月となり、危険水域とされる3カ月を下回ることになります(12月の輸入額は今月14日に発表される予定)。

ウクライナの国内総生産(GDP)は2012年で1763億ドル。日本の5兆9600億ドルの約100分の3しかなく、同国の経済危機が世界経済に与える影響は無視できる程度でしょう。

ただ、同じく経済規模の小さなアルゼンチンの通貨暴落の際にも、投資家が不安心理を一気に強めた点には注意が必要です。

ウクライナは現在、ドルとのペッグ制を採用していますが、これが4年ぶりに解除されて通貨切り下げが現実味を増しています。少なくとも、新興国通貨の連鎖がマインドに影響する可能性は残りそうです。

(フィスコ・リサーチ・レポーター)《RS》

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