新興国リスクの高まり、市場メッセージは先進国の緩和策?

2014年2月4日 09:53

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記事提供元:フィスコ


*09:53JST 新興国リスクの高まり、市場メッセージは先進国の緩和策?
新興国市場の金融混乱が止まりません。米国で量的金融緩和の縮小が継続されるとの見方に加え、中国の成長ペース鈍化に対する不安が投資家のリスク回避姿勢を強めていると説明されています。

ただ、米国の量的緩和については、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ前議長が昨年5月に縮小のタイムテーブルに触れており、市場にとって目新しい材料ではないはず。中国の成長鈍化についても習近平政権による「持続可能な経済成長」への改革を推し進める政策の一環で、ここまで市場が混乱する要因にはなりえないはずです。

では、今回の新興国危機の引き金を引いたのはアルゼンチンの通貨暴落でしょうか?同国では外貨準備高が過去3年間で4割ほど減少しており、投資家が危機感を抱いたのも無理はないかもしれません。

トルコや南アフリカ、インドなど緊急利上げを打ち出した通貨も売られ、新興国売りに歯止めがかかる気配はありません。これらは政情不安や度重なる労働者のストライキ、慢性的なインフレ、経常赤字など様々な不安を抱えた国々です。

一方、投資家が「新興国」をひとくくりにし、経済ファンダメンタルズ(基礎的要件)の健全な国からも資本が逃避していることを問題視する意見もあります。調査会社EPFRグローバルの統計では、アジア新興国の株式および債券ファンドから前週に39億米ドルの資金が流出していたことがわかりましたが、比較的ファンダメンタルズの強い韓国から7億600万米ドル、中国からも6億6000万米ドルの資本が逃げています。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3日、新興国市場の混乱について、「一律の危機は存在しない」との見方を披露。同社は投資家が新興国市場を同質のグループとして扱うリスクを指摘し、「リスク回避の悪循環」を引き起こす恐れがあると警告しました。

では、現在の混乱を招いた市場のメッセージは何なのでしょうか?新興国の景気を考慮し、FRBに緩和縮小のペースを緩めるべきだと訴えているようにも聞こえます。ただ、FRBがこの通り緩和縮小の手綱を緩めれば、今度は「新興国危機が米国経済にも波及しはじめた証拠だ」との思惑でさらに売りに拍車がかかる可能性も否定できません。

きのう3日発表された米ISM製造業総合景況指数は前月から低下しましたが、この時点で新興国危機が米国経済に及んだと捉える投資家は少ないでしょう。ただ、雇用統計が悪ければ「新興国経済の悪影響がグローバルに拡散し始めた」といぶかる投資家が出てきても不思議ではありません。

さらにグローバル経済の悪化が意識されて株安・円高の流れが継続すれば、日銀が早めに追加の金融緩和を打ち出すとの見方もあります。ただ、日銀は1月22日の金融政策決定会合で世界経済の先行き判断を小幅だが上方修正しており、2月に追加緩和を実施するには相応の理由が必要になりそうです。

(フィスコ・リサーチ・レポーター)《RS》

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