【小倉正男の経済羅針盤】アメリカ金融緩和縮小とその因果

2014年2月4日 09:49

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■揺らぐ「世界の金融協調体制」

 アメリカの金融緩和縮小が、新興国の金融不安を惹起している。

 インドのラジャン中銀総裁は、「先進国は世界の金融協調体制の立て直しに努めなければならない」、と批判した。先進国とはアメリカにほかならない。

 アメリカが金融緩和縮小に走れば、高金利を求めて新興国に流れていた資金がアメリカに戻ることになる。新興国の通貨は低下し、それに歯止めをかけるために新興国の金利は上昇する。

 当然ながら新興国の経済は軋むことになる。 新興国サイドから見れば、アメリカは「世界の金融協調体制」を揺るがしており、"立て直さなければならない"状況に陥っているということになる。

■「異例」から「通常」に戻る代償

 アメリカとしては、リーマンショックから経済がようやく立ち直り、異例だったゼロ金利など金融緩和の訂正を図る――。(どこかの国のように"ゼロ金利依存症"になることは避けなければならない!)

 いわば、「出口戦略」、つまり予定通りのスケジュールということになる。

 となれば、中国の経済成長にブレーキがかかり、さらに中国に食料品を輸出しているアルゼンチンなどの新興国経済が打撃を受ける、とマイナスの連鎖がつくられる・・・。

 日本円は安全資産ということで買われ、円高になり、株式(日経ダウ)も直撃を余儀なくされてきている。

 アベノミクスには、株式上昇による「資産効果」といったものも織り込まれている。アベノミクスにとってもこれはマイナスのファクターになる。

 世界中の株式が不安定になり、どこで歯止めがかかるか。世界経済が「異例」から「通常」に戻る動きだが、代償は小さいとはいえない模様だ。

■アメリカの因果、はたまた資本主義の因果

 その昔、「ベアリング恐慌」(1890年)という金融恐慌では有名な事件がある。

 この時代、世界金融市場に提供される資金は、圧倒的に大英帝国によるもの。 大英帝国の金利が低く、高金利のアルゼンチンに資金が流れていたが、アルゼンチンの経済破綻からマーチャントバンク・ベアリング商会が倒産した――。

 ベアリングは、金融界でロスチャイルドと並ぶ巨大な存在だっただけに、「ベアリング恐慌」という名が付けられた。

 ついちょっと前に世界を襲った「リーマンショック」と同じ発想によるネーミングにほかならない。

 今回のアメリカの金融緩和縮小が、何をもたらすのか――。なんとか混乱を収束させ、ソフトランディングしてほしいというのが大方の願いである。

 リーマンショックの克服のための「入口戦略」がゼロ金利といった異例の金融緩和だった。その「出口戦略」の金融緩和縮小が皮肉にもまた世界経済を執拗に揺るがしている。 これはアメリカの因果、あるいは資本主義の因果というしかないのだろうか。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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