【アナリスト水田雅展の為替&株式相場展望】戻り高値圏に来ても売買代金が盛り上がらない地合いの悪さ、米株高支援でも中国金融引き締め観測がかく乱

2013年10月27日 13:09

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【為替&株式相場展望】(28日~11月1日)

■9月中間期決算発表では主力銘柄の通期見通しが事前の市場予想が高すぎる

  来週(10月28日~11月1日)の株式・為替相場は、米株高が支援材料だが、リスクオンの状況から一転して不安定な地合いとなりそうだ。米国のデフォルト(債務不履行)回避で警戒感が後退して一旦はリスクオンの流れとなったが、中国の金融引き締め観測が浮上してかく乱要因となった前週の動きを引き継ぎ、日米の金融政策会合や国内主要企業の13年9月中間期決算発表が注目材料となる。

  前週の動きを振り返ると、米国のデフォルト回避で警戒感が後退してリスクオンとなった流れで10月23日に日経平均株価が1万4799円28銭まで上昇し、9月27日の1万4817円50銭に接近する場面があった。しかしドル・円相場で円が約1円上昇して流れが一転し、10月23日の日経平均株価は終値で287円20銭(1.96%)安と急落した。そして10月25日には1ドル=96円90銭台まで円高方向に傾く場面があり、日経平均株価は終値で398円22銭(2.75%)安と急落した。

  リスクオンの流れから一転して、円高・株安というリスクオフの地合いとなった形だ。米国の量的緩和縮小開始時期の先送り観測で円の先高感を強めたこと、中国の短期金利上昇で金融引き締め観測が浮上したこと、アジア株が軟調だったことなどが円高に繋がり、リスクオフの動きを強めたとされている。ただし10月25日の急落は、警戒感を強めているところにヘッジファンドの仕掛け的な円買い・株価指数先物売りが出て、裁定解消売りや手仕舞い売りを誘った形だろう。こうした売りで相場が大きく崩れる状況を見ると、戻り高値圏に来ても売買代金が盛り上がらない地合いの悪さを象徴しているようだ。

  来週の重要イベントは、10月29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、31日の日銀金融政策決定会合となり、29日の米10月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、30日の米10月ADP雇用報告、31日の日銀展望リポート(経済・物価情勢の展望)なども注目される。

  米FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に関しては、バーナンキ議長の後任にハト派とされるイエレン副議長が指名されたこと、10月22日発表の米9月雇用統計で非農業部門雇用者増加数が弱い結果だったこと、10月前半の米政府機関の一部閉鎖など財政問題を巡る混乱が景気に与えた悪影響を見極める必要があること、さらに14年2月7日まで先送りした連邦政府債務上限引き上げ問題が控えていることなどから、量的緩和縮小開始は14年3月以降に先送りとの見方が優勢になっている。

  日銀の金融政策に関しては、ポジティブサプライズとしての追加緩和を期待する声も聞かれるが、当面の金融政策に変更はないだろうとの見方が有力だ。このためセオリーどおりであれば米国の量的緩和長期化がドル売り・円買い要因となり、さらに中国の金融引き締め観測でリスクオフの動きが強まる可能性もあるだろう。したがってドル・円相場についてはトレンドとしての円高ではなく、当面は円の強含みで1米ドル=96円~99円近辺で推移することになり、中国の金融引き締め観測が後退すればやや円安方向に傾きそうだ。

  国内では主要企業の13年9月中間期決算発表が本格化し、主力銘柄の通期(14年3月期)見通しの上方修正幅が注目されるが、事前の市場予想平均値が高すぎるため市場予想に届かなかった場合の失望売りが警戒される。ただし円の先高感を強めていることもあり、市場が期待するほど大幅な業績上振れにならないとの警戒感が足元で急速に広がっている。さらに14年4月の消費増税実施後の反動が来期(15年3月期)業績に与える悪影響を警戒する見方も強まっている。したがって上方修正幅が市場予想を下回った場合でも、織り込み済みとしてネガティブな反応は限定的となるかもしれない。

  日経平均株価をチャート面で見れば7月23日の1万4820円18銭、9月27日の1万4817円50銭、そして10月23日の1万4799円28銭を結ぶ上値抵抗線が意識される形となった。このため全体として売買代金の盛り上がりに欠ける状況では、下値メドとして意識される三角保ち合いのレンジ下限1万3900円近辺まで一旦は下押す可能性があり、その場合はレンジ下限からの反発力が試されることになりそうだ。

  需給面で見れば売り圧力が強まっている状況だ。高水準の裁定買い残高や信用買い残高に加えて、5月高値の信用期日が接近している。海外ヘッジファンドなどのポジション調整に絡む売り、先物の仕掛け的な売りに伴う裁定解消売り、期日接近に伴う見切り売り、さらに海外ヘッジファンドの11月決算に絡む売り、年内の証券優遇税制廃止に向けた利益確定売りにも注意が必要な時期となる。売買代金が膨らんで、こうした売りを吸収できるかも焦点だろう。

  物色面では、9月中間期決算あるいは通期見通しで好業績を発表した銘柄への個別物色が中心となるだろう。また米グーグルの株価1000ドル台乗せ、スマホ向け無料通話・アプリを手掛けるLINEのIPO観測、米アマゾン・ドットコムの市場予想を上回る好決算などで、関心が高まっているネット関連銘柄への物色も継続しそうだ。9月中間期決算発表で主力銘柄が市場予想を上回る大幅な上方修正を示し、地合い好転に繋がることを期待したい。

  その他の注目スケジュールとしては10月28日の米9月鉱工業生産、米9月住宅販売保留指数、29日の日本9月完全失業率、日本9月有効求人倍率、日本9月家計調査、米8月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米9月小売売上高、30日の日本9月鉱工業生産速報、ユーロ圏10月景況感業況感指数、米9月消費者物価指数、31日の独11月GfK消費者信頼感指数、ユーロ圏10月消費者物価指数速報値、米10月シカゴ地区購買部協会景気指数、11月1日の中国10月製造業PMI(国家統計局)、中国10月製造業PMI改定値(HSBC)、米9月建設支出、米10月ISM製造業景気指数などがあるだろう。

  その後は、11月2日の中国10月非製造業PMI(国家統計局)、5日の豪中銀理事会、6日~7日の英中銀金融政策委員会、7日のECB(欧州中央銀行)理事会、米7~9月期GDP速報値、8日の米10月雇用統計、14日の日本7~9月期GDP速報値、ユーロ圏7~9月期GDP速報値などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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