【水田雅展の為替・株式相場展望】米FOMCで想定どおり量的緩和縮小開始なら一旦アク抜け、一方的な円安にはならない

2013年9月16日 13:52

印刷

記事提供元:日本インタビュ新聞社

【為替・株式相場展望】(9月17日~20日)

 3連休明け来週(9月17日~20日)の株式・為替相場は、17日~18日の米FOMC(連邦公開市場委員会)が焦点となる。シリア情勢に対する懸念が後退するなど、不透明とされた要因が順々に解消されており、米FOMCで市場の想定どおりに量的緩和の緩やかな縮小開始を決定すれば、一旦はアク抜け感が優勢となりそうだ。

 市場が身構えた9月最大の重要イベントである米FOMCを迎える。9月6日発表の米8月雇用統計で非農業部門雇用者数の増加が市場予想を下回ったことや、シリアに対する米国の軍事介入と時期が重なる可能性があったことで量的緩和縮小開始の先送り観測も浮上したが、やはり今回の米FOMCで量的緩和の緩やかな縮小開始を決定するとの見方が有力だ。そして市場は量的緩和の縮小開始をほぼ織り込んだため、今回の米FOMCで正式決定すれば一旦はアク抜け感が広がるとの見方が強まっている。

 シリア情勢に対する懸念が後退することも支援材料だ。14日には米国とロシアの外相会談で、14年前半までにシリアの化学兵器をすべて廃棄させる枠組みで合意した。シリアの内戦が終了するわけではなく、化学兵器廃棄の実効性に課題も残されているが、今回の米ロ外相会談の合意によって米国による軍事介入が当面は回避されることになった。したがって株式・為替相場ともにリスクオフの動きは後退するだろう。

 国内でも不透明要因とされた消費増税実施時期に関して、安倍晋三首相が予定どおり実施の意向を固めたとの報道が相次いでいる。市場の想定どおりであるため特にサプライズとはならないが、少なくとも不透明要因の一つが払拭される形だろう。消費増税による景気腰折れを防ぐための5兆円規模の経済対策や東京特区構想などに関する報道も相次いでおり、20年夏季五輪の東京開催とともに支援材料となるだろう。

 もちろん新たな不透明要因にも事欠かないだけに注意は必要だ。ユーロ圏では22日にドイツ総選挙が実施され、ギリシアに対する追加支援問題も新たな不透明要因として浮上している。米国ではバーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長の後任人事問題があり、量的緩和縮小に積極的とされるサマーズ元米財務長官が指名されるのかが注目される。さらに米連邦政府債務上限問題に関する米議会の攻防も控えている。また新興国からのマネー流出問題も一旦は落ち着いた形だが、予断を許さない。

■米国長期金利上昇、ドル高・円安のシナリオだが?

 米国の量的緩和縮小開始で米長期金利が上昇し、為替はドル高・円安方向に進行するというシナリオが有力だが、米FOMC以降の不透明要因を考慮すればリスクオフの状態が継続する可能性もあり、一方的に円安が進行する状況にはならないだろう。また米国株は金融相場から業績相場に移行する前に一旦は調整局面に入る可能性があり、米国株離れができない日本株にとって上値を押さえる要因となりかねない。日本の主要企業の業績上ブレを期待する動きが強まるのも少し先になりそうだ。

 ただしチャート面で見れば、日本株は三角保ち合いを上放れて7月の戻り高値を目指す形だ。一本調子の上昇は期待し難いが、全体としては底堅い展開となりそうだ。特に20年東京五輪や消費増税に伴う経済対策・成長戦略関連を中心とするテーマ物色は旺盛だろう。引き続き観光・カジノ関連などに注目したい。また19日から東京ゲームショウが開催されるため、SNS・ゲーム・ネット関連などにも注目が集まりそうだ。

 その他の注目スケジュールとしては、16日の米8月鉱工業生産、米9月ニューヨーク州製造業業況指数、17日のユーロ圏7月経常収支、独9月ZEW景気期待指数、米8月消費者物価指数、米9月住宅建設業者指数、18日の中国8月新築住宅価格、米8月住宅着工件数、19日の日本8月貿易統計、スイス中銀金融政策会合、米8月中古住宅販売、米8月景気先行指数(コンファレンス・ボード)、米9月フィラデルフィア地区連銀業況指数、米第2四半期経常収支などがあるだろう。

 その後は9月23日の中国9月製造業PMI速報値(HSBC)、10月1日の日銀短観(9月調査)、10月3日~4日の日銀金融政策決定会合などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

【関連記事・情報】
【編集長の視点】トーカイは反落も増益転換業績を再評価し内需割安株買いが再燃余地(2013/09/11)
【株式評論家の視点】レオパレス21は今期も好スタートを切る、業績の更なる好転に期待(2013/09/11)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

関連記事