【忠田公夫の経済&マーケット展望】オリンピック決定はデフレ脱却に効果、ただ経済波及効果は年4000億円と小さい

2013年9月9日 15:34

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■円安103円更新とNYダウの高値更新が揃わないと1万6000円難しい

  2020年のオリンピック開催地が東京に決定した。原発事故後の汚染水問題が浮上し、海外メディアが厳しい視線で報道していただけにIOCの最終プレゼンテーション直前には、東京五輪招致にやや失望感が漂い、9月6日(金)の日経平均は204円安で終えていた。

  短期的にはデフレ脱却のプラス材料の出現で不動産や建設、道路、橋梁、セメントなどの関連株中心に賑わいをみせそうだ。

  ただ、東京都の試算によると、五輪招致の経済波及効果は2013~2020年で合計約2兆9600億円にすぎない。年平均では約4000億円程度と、わが国のGDPの0.1%にも達しない。一部には、年内に日経平均1万6000円という強気な見方もあるが、ドル円が5月の103円74銭を更新する円安と米国株の高値更新の2つの条件が揃わない限り、期待通りに運ばないのではなかろうか。

  前回の8月9日付けで、NYダウは8月から9月にかけて重要な高値を形成する可能性を指摘した。8月8日のNYダウは1万5498ドルだったが、オバマ大統領がシリアへの軍事介入に言及したことなどで、8月27日には1万4776ドル(終値)まで下落。6月24日の1万4659ドル(同)を割り込まずに、当面は戻りを試しつつある。軍事行動に踏み切った場合には、グローバル・マーケットでリスクオフの流れが強まることは避けられないとみられる。ただ、米国民の6割が軍事行動に反対との報道もあり、化学兵器使用に関する国連の調査結果までは事態の推移を見極めるものと推察される。

  NYダウの足取りは5月28日に1万5409ドルの高値、8月2日に1万5658ドルの高値をマークしており、この9月から10月につける高値をもってトリプル・トップ(三尊天井)を構成する可能性が出てきた。高値形成後の急落はグローバル市場にリスクオフの動きをもたらすことになるかもしれない。(忠田公夫=経済・株式評論家・アナリスト。ナショナル証券投資調査部長、SMBCフレンド調査センター常務を経て現職。96年に日本経済新聞社・日本経済研究センター主催の関西経済人・エコノミスト会議において優秀エコノミスト賞受賞)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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