住宅ローンの滞納により、競売にされてしまう事を回避できる任意売却とは

2013年8月21日 09:42

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■住宅ローン滞納の先にあるのは

 国土交通省の平成25年版「土地白書」によると、「土地・建物両方とも所有したい」という回答は79.8%だった。8割を切ったのは12年ぶりで、持ち家志向の低下傾向が伺えるが、依然として8割近い国民が“夢のマイホーム”願望を持っているといえる。

 しかし、厳しい経済環境の昨今では、住宅ローンの返済が家計の大きな重しとなっている家庭も少なくないだろう。十分な経済力があれば問題ないが、返済が滞った場合には、せっかく手に入れたマイホームを手放さなければならない状況に置かれることもある。

■競売による債務の返済

 一般的に、自宅などの不動産を担保とした住宅ローンの返済が困難になった場合、最終的には不動産が競売にかけられて売却代金をローンの返済に充てることになる。

 競売は、市場価格の7割から8割程度の低い価格で落札されるケースが多く、住居を失ったうえに残った債務の返済も続けていかなければならない。また、売却代金は全てローンの返済に充当されるため、当座の生活資金や引っ越し資金のねん出に困る、競売情報が公開されることで肩身の狭い思いをするというデメリットもある。

■競売よりも好条件で債務返済ができる任意売却

 このように、住宅ローンが返済不能となった場合に債務者が置かれる状況には厳しいものがあるが、競売よりも有利な条件で担保不動産を売却し、債務の返済を進めることができる「任意売却」という方法が存在する。

 通常、ローン返済中に担保不動産は売却することができないが、任意売却は、借入れ先の金融機関を含め全ての利害関係者と交渉をして合意をとりつけ、第三者に住宅を売却することができるものだ。

 競売に比べて、市場価格に近い金額で売却できたり、債権者側から引越費用の捻出を認めてもらえるケースもあるなど、競売に比べて有利な条件で売却できる可能性がある。債権者(借入金融機関)にとっても競売よりもより多くの資金を回収できるメリットがある。

■任意売却を行なうには

 任意売却を実際に行なうためには、債務者が自分で手続きすることもできるが、任意売却を専門に扱い、各債権者、利害関係者との交渉を有利に行うノウハウを持つ業者も存在する。

 任意売却の仲介サイト「任意売却マネージメント」(http://www.vector-e.jp/)を運営する株式会社ベクトル(大阪市北区)もその1社だ。社長の西真由美氏は、大手不動産会社で売買仲介の営業職を経て、任意売却専門の不動産会社へ転職した経歴を持つ。会社の利益よりも、相談者の希望を第一に解決方法を提案したいとの思いから独立したという。

 売却に必要な仲介手数料や登記費用は売却代金から差し引かれるため、債務者が別途費用を用意する必要はない。

 同社では、子どもの学校や高齢の両親のために今の家に住み続けたいという要望にも極力対応しており、身内・知人が買い取る、成人した子供が住宅ローンを組みなおして買戻す、家賃収入を目的とした投資家(家主)に売却し、家賃を支払って住み続ける、などの手法で取り組んでいる。

 これまでに手掛けた案件では、競売入札まで2週間前に迫った状態で問い合わせを受け、無事任意売却に成功したケース、ローン滞納で競売手続きが始まったが、協力会社の投資家に売却することで、家賃を払うことで住宅に住み続けられるようになったケース、任意売却に加えて顧問弁護士・提携司法書士を通じて住宅ローン以外の借入の債務整理や、過払い金請求をしたケースなどがあるという。

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