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新しいがん治療の開発に成功、高まる根治療法への期待
3月19日に内閣府が公表した「がん対策」に関する世論調査によると、がんを「こわいと思わない」とする者の割合が22.4%(「こわいと思わない」12.1%、「どちらかといえばこわいと思わない」10.2%)であったのに対し、「こわいと思う」とする者の割合が76.7%(「どちらかといえばこわいと思う」33.4%、「こわいと思う」43.3%)となっており、がんに対して不安に思う人の方が圧倒的に多くなっている。その理由として圧倒的に多く挙げられたのが「死に至る場合があるから」というものであった。
近年、がん組織を構成している細胞群にはヒエラルキーが存在し、多くの「がん細胞」はこのヒエラルキーの最上位に位置するごく少数の「がん幹細胞」から生じると考えられている。「がん幹細胞」自体は非常に数が少ない上に冬眠状態にあり、それ自体はほとんど増殖しないという。しかしその子孫である「がん細胞」は急速に増殖するため、生命を脅かす存在となっており、多くの人を不安にさせているのが現状である。従来の抗がん剤や放射線療法は、この急速に増殖する「がん細胞」を一時的に殺すことは可能であっても、あまり増殖しない「がん幹細胞」にはほとんど効果がなく、その為治療後に残存したがん幹細胞から再びがん細胞が生じ、再発や転移を引き起こすと考えられている。がんを完全に治療するためには、このがん幹細胞を根本的にたたく必要があるものの、がん幹細胞が冬眠状態(静止期)にある基本的なメカニズムが明らかになっていなかったため、効果的な治療法がなかったのである。
こうした中、九州大学を中心とする研究チームが、「がん幹細胞」の撲滅による新しいがん治療の開発に成功したと発表した。本研究チームは、がん幹細胞が静止期にとどまる機構を明らかにし、その中心的なたんぱく質Fbxw7を発見。Fbxw7には細胞分裂を抑制する働きがあることが知られていたものの、Fbxw7のがん幹細胞における役割は不明であった。しかし、このFbxw7を無力化することでがん幹細胞が眠りから覚め、静止期から増殖期に移行することにより、抗がん剤で死滅することを確認。Fbxw7の働きを抑える阻害剤が実現すれば、がん根治療法を実現することが期待できるという。がん幹細胞は白血病をはじめとして、乳がんや脳腫瘍、大腸がんなど様々ながんにおいて同定されている。他のがん幹細胞においても治療抵抗性の原因となっている可能性があるため、慢性骨髄性白血病だけでなく、多くのがんにおいて根治療法の確立が期待できることとなる。
がんの根治療法への道筋が示された。後は、Fbxw7の働きを抑える阻害剤の実現可能性と、実現した際の速やかな実用化が課題となろう。日本は、こうした許認可に関しては人一倍動きが鈍いと言われる。技術・研究だけが最先端で、それが実社会に活かされなければこれ以上のムダは無い。一日も早い根治療法の確立とその実用化を期待したい。(編集担当:井畑学)
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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