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「ワーク・ライフ・バランスで人件費削減」は可能か
非正規社員が増える一方、多くの正社員は長時間労働に悩まされている。総務省の「平成19年就業構造基本調査」によると、25~44歳の男性正社員の5人に1人が週に60時間以上働いている。一方で働く時間の短い非正規雇用として働く人の割合も増加しており、労働時間は二極化の傾向にある 。
このような状況がなかなか改善しないのは、企業がワークライフバランスをコストとして捉えているからだ。ニッセイ基礎研究所の調査では、仕事と生活との両立を支援する制度を導入することに関して、約半数の企業が「企業にとっての負担が大きい」と回答している(「両立支援と企業業績に関する調査」2006年) 。
とはいえ「多少賃金が下がってもいいから労働時間を減らしたい」と考える人もいるのではないだろうか。たとえば、経済産業研究所RIETIのレポートでは、週当たり労働時間が60時間以上の男性労働者については、柔軟な働き方の導入と引き換えに賃金の大幅な引き下げを許容するという結果が出ている。長時間労働をする正社員は、賃下げしてでもワークライフバランスを望んでいるとみることもできる。
このように、企業が労働者の潜在的なニーズをうまく汲みとることができれば、フレックスタイム制度などの導入により従業員の長時間労働を改善すると同時に、人件費の大幅削減が実現可能になるかもしれない(「ワークライフバランスに対する賃金プレミアムの検証」2013年) 。
もちろん現実には課題もある。たとえばフレックスタイム制度を導入しても、サービス残業が横行していればあまり意味がない。全体として賃金が抑えられている中、さらなる賃下げが果たして可能なのかという考え方もできるだろう。
だが長期的に見れば、労働時間を減らして仕事の効率を上げることは、企業にとっても社員にとってもプラスになるはずだ。安定雇用とセットの長時間労働か、それとも不安定な雇用で短い労働時間か、という二極化した働き方を見直すべきであることは間違いない。
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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