【アナリストの眼】日米首脳会談を好感してモミ合い上放れの可能性、ＴＰＰ前進

＜相場展望＞（２５日～１日）

　　来週（２月２５日～３月１日）の株式市場は、イタリア総選挙や日銀新総裁人事などで為替に波乱がなければ、２２日の日米首脳会談の結果を好感して、高値圏での短期的なモミ合いから上放れる可能性があるだろう。

　　２２日の日米首脳会談後、日米両国はＴＰＰ（環太平洋経済連携協定）に関する共同声明を発表した。声明では「全ての物品が交渉の対象」としたうえで「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国とも二国間貿易上のセンシティビティ（敏感な問題）が存在することを認識しつつ、最終的な結果は交渉の中で決定されることから、ＴＰＰ交渉参加に際し、一方的に全ての関税撤廃を予め約束するよう求められるものではないことを両政府は確認する」とした。すべての関税撤廃が前提とはならず最終的な決定は交渉の中で行っていくという方針を確認し、日本のＴＰＰ交渉参加への下地を整えた形だ。こうした日米首脳会談の内容を受けて安倍晋三首相は「早期に決断したい」と語りＴＰＰへの交渉参加を決断する見通しとなった。ＴＰＰへの交渉参加は「アベノミクス」の第３の矢である成長戦略の象徴的存在となっているだけに、これを好感する動きが活発化する可能性があるだろう。

　　為替に関しては、日本が日銀新総裁の下で金融緩和を一段と強化するという観測に加えて、米国の金利上昇や日本の貿易赤字拡大なども要因として基本的には米ドル高・円安方向という見方が優勢だが、Ｇ２０財務相・中央銀行総裁会議後に円高修正の動きが一服感を強めている。公表された米ＦＯＭＣ（連邦公開市場委員会）議事録を巡って、米ＦＲＢ（連邦準備制度理事会）の出口戦略の時期が早まるとの観測で円買いが優勢になる場面もあった。２２日の日米首脳会談では特に為替に関してのコメントが見られないが、オバマ米大統領は「日米の最優先課題は経済成長」と述べ、安倍晋三首相は「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信を持って宣言したい」と述べているため、概ね円安黙認ムードと受け止められている。ただし来週は２４日～２５日のイタリア総選挙、２６日～２７日のバーナンキ米ＦＲＢ議長の議会証言が注目され、さらに国内で日銀新総裁人事が本格化することや、米国で３月１日の強制歳出削減の発動期限を迎えることもあり、波乱の展開にも注意が必要だろう。なお日銀新総裁人事に関しては、有力候補者として名前が挙がっている誰になっても、金融緩和強化の方向は変わらないとの見方が有力のようだ。

　　ここ３週間、日経平均株価は高値圏でやや荒い展開が目立ち、信用買い残の急速な増加もあって、１万１０００円～１万１５００円のレンジでモミ合い感を強める展開だった。しかし一方では、２５日移動平均線が接近して短期的な過熱感は解消されてきた。為替に波乱がなければＴＰＰへの交渉参加見通しを好感して、高値圏での短期的なモミ合いから上放れる可能性があるだろう。

　　その他の注目スケジュールとしては、２５日の中国２月製造業ＰＭＩ速報値（ＨＳＢＣ）、米１月シカゴ連銀全米活動指数、２６日の米１２月住宅価格指数（連邦住宅金融局）、米１２月Ｓ＆Ｐケース・シラー住宅価格指数、米１月新築一戸建て住宅販売、米２月消費者信頼感指数（コンファレンス・ボード）、２７日の独３月消費者信頼感指数、ユーロ圏２月景況感・業況感指数、米１月耐久財受注、米１月住宅販売保留指数、２７日～２８日のＥＵ議会本会議、２８日の日本１月鉱工業生産速報、米２月シカゴ地区購買部協会景気指数、米第４四半期ＧＤＰ改定値、３月１日の中国２月ＰＭＩ（国家統計局）、中国２月製造業ＰＭＩ改定値（ＨＳＢＣ）、ユーロ圏２月消費者物価指数速報値、米１月個人所得・消費支出、米２月ＩＳＭ製造業景気指数などがあり、その後は３日の中国２月非製造業ＰＭＩ（国家統計局）、５日の豪中銀理事会、中国全国人民代表会（全人代）開幕、６日～７日の英中銀金融政策委員会、７日のＥＣＢ理事会、８日の米２月雇用統計、１４日～１５日のＥＵ首脳会議などが控えている（本紙・シニアアナリスト水田雅展）（情報提供：日本インタビュ新聞社＝Ｍｅｄｉａ－ＩＲ）

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