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今後の住宅市場を左右する大工育成と工務店経営塾
戸建住宅(在来木造)の約60%を供給している中小の大工・工務店。住宅業界を下支えしてきた、その大工の就業者数が現在、大幅に減少、また、高齢化もかなり進んでいる。同様に工務店の数も減少しており、今後の生産能力低下が懸念されている。
総務省の国勢調査から分かった大工の就業者数は、1980年代の約937万人をピークに2010年には約397万人と5割以下にも減少している。さらに、60歳以上の大工就業者は2005年で20%を超えており、今後も増加していく傾向だ。国交省では問題の早期解決の必要性を唱え、木造住宅の担い手育成を積極的に支援している。在来工法の機械プレカット率の増加問題などもあることから、手刻み加工や墨付けなどの伝統的な木造住宅建築の知識・技術修得の場を若手・中堅の大工就業者に与え、技能者の育成を目指すとしている。具体的には実技指導や座学、OJTなどを行う育成団体に対し、補助金を交付するというスタイルだ。
一般社団法人である「大工育成塾」は、講義と受け入れ工務店の指導棟梁の下での現場修行を育成カリキュラムとして導入し、3年間にわたって様々なことを学ぶことができる。伝統木造建築の規矩術、墨付けから板図、設計までの基礎技術・理論の修得だけではなく、省エネ住宅・シックハウス対策などの時代に合ったニーズにも対応できるようになる。このように、いくつかの団体が国交省の施策の下、大工職人の育成に取り組んでいる。
だが、その大工を育ててきた工務店自身も減少の一途をたどっており、将来のゼロエネ住宅の普及にも大きな影響を及ぼす可能性が高い。
そんな中、工務店の経営持続と優良化を目指し、専門の経営塾を開講する団体も現れた。
中堅住宅メーカーのアキュラホームが主宰する全国の工務店ネットワーク「ジャーブネット」が行う経営塾「永代ビルダー塾」は、地域に優良な工務店を多数輩出することを目的に開講されたものだ。永代に渡る顧客へのサービスを行うためには、工務店自身が経営力を高め、永代続く優良な工務店になるというコンンセプトの基、受講する工務店経営者は”年間30棟””売り上げ6億””経常利益率10%”という安定経営を目指す。そのために「経営哲学・経営理念の深化」「社員の積極的な経営参画」などのプログラム化されたノウハウを3年間継続して実践し、身につけていく。まだ開講して2年も経っていないが、目覚ましい成果を出す工務店が続々と増えているという。
このような経営塾スタイルを持つ工務店のネットワークは他にも存在しており、少しずつであるが成果を残している。だが、一方では、未だに1人親方というスタイルの大工も数多く存在しており、その多くは、木造省エネ住宅の建築技術を取得するための方法すら知らないという。経営力を高め、安定していく工務店に所属する大工たちは当然、技術的な進歩もしており、格差が生まれてきているのも事実だ。新しいなり手を育成するだけでは、2020年のゼロエネ住宅標準化は難しいとの声も聞こえる中、このように技術進歩に取り残されようとしている大工たちへの情報提供の方法を、今以上に業界全体で考えていくことも重要なのではないだろうか。(編集担当:滝浦巧都)
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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