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三菱重工、8mまでの高所作業ができるロボットを開発 福島原発での活用を想定
MHI-Super Giraffe(MARS-C)(写真:三菱重工業)[写真拡大]
三菱重工業は20日、高放射線環境など人が近づけない場所を自由に移動し、伸縮はしごの先に搭載したロボットアームで高さ8mまでの高所作業ができる遠隔作業ロボット「MHI-Super Giraffe(MARS-C)」(スーパージラフ)を開発したと発表した。
アームや先端工具の交換により、バルブの開閉や除染など多様な作業に対応する。同機は移動機構や作業機構にモジュール設計思想を取り入れており、今後他社による新モジュール開発への参入も促進し、用途拡大に向けた高機能化を加速させるため各接続部の技術情報を公開していく。
同機は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」による委託を受け、東京電力の福島第一原子力発電所での作業を想定し、バルブ開閉、除染、漏洩検出・特定、切断などに対応できるように開発したもの。リチウムイオン二次電池を動力源として、標準的なコンピューターネットワーク規格のイーサネットを使った遠隔操作により、連続5時間の稼働が可能。
同機は、台車モジュール(移動機構)、荷揚げモジュール(伸縮はしご機構)、搭載モジュール(ロボットアーム部)、エンドエフェクターモジュール(先端工具)の4つのモジュールで構成されている。台車モジュールは4輪駆動4輪操舵方式によりスピン(その場での回転)や真横への移動が可能で、狭い場所での機動性に富み、高所作業時はアウトリガーを伸ばして安定性を高める。
また、荷揚げモジュールには5段伸縮式を採用。8mの高さで150kg以上の荷揚げ能力を発揮する。ロボットアーム部の搭載モジュールは人の腕と同じような7つの関節を持ち、高い自由度と小型軽量性を確保。エンドエフェクターモジュールはバルブの開閉が可能で、着脱は遠隔操作により空気圧で簡単に行える構造を搭載している。
台車本体に搭載している駆動バッテリーおよび充電システムは、三菱自動車工業製電気自動車(EV)i-MiEV(アイ・ミーブ)の技術を同機用にカスタマイズ。高信頼性と大容量を両立した電池を用いることで、4トンの質量がありながら15度傾斜面での走行や平地における速度6km/hでの走行を可能とした。また、8mの高所でのマニピュレーター作業を含む想定作業での連続5時間稼働も実現した。
三菱重工は今後、他社との協業も含め、荷揚げモジュールでは折りたたみ式やパンタグラフ式、搭載モジュールに関しては油圧駆動でせん断破壊作業を行うウォールクラッシャーや荷揚げ用デッキ・バケットなどの開発を検討する。先端工具では既存のバルブ開閉向け以外に、溶接、ドリル、ハンド、漏洩検知などの各種用途向け、台車モジュールは段差などに強いクローラー走行式などの開発に力を注ぎ、保守性などにも優れたさらに高機能な遠隔作業ロボットの技術開発を進めていく。
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