西暦 774~5 年の炭素 14 増加は、銀河系内で発生した中性子星・ブラックホール衝突が原因か

2013年1月23日 11:50

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記事提供元:スラド

 TarZ 曰く、

 屋久島で伐採された杉の年輪試料の分析から、西暦 774~5 年というごく短い期間内に、大気中の炭素 14 (14C) が急激に増加したことが分かっている。また、南極の氷の試料からは同時期にベリリウム 10 (10Be) の増加があったことも分かっており、この時期に宇宙から強力な放射線が地球に降り注いだのではないかと考えられている。こうした現象には、太陽系近傍での超新星爆発や巨大太陽フレアの発生が考えられるが、いずれも当時の記録が残っていないことや他の証拠と合わないことから考えにくく、原因については謎となっていた (/.J 記事」) 。

 この原因について今回、太陽系に比較的近い位置 (銀河系内) でショート・ガンマ線バースト (short Gamma-Ray Bursts, short GRBs) が起こり、発生した強烈なガンマ線が地球を叩いたことが原因ではないか、とする説が発表された (本家 /. 記事論文) 。

 GRB のうち、比較的詳細に観測されている 2 秒以上続くロング・ガンマ線バースト (long GRBs) 源は、候補として超新星爆発が考えられている。long GRBs はガンマ線のスペクトルが比較的フラットであり、西暦 774~5 年の 14C / 10Be の生成比をうまく説明できない。一方、2 秒未満で完了する short GRBs は、現象がごく短時間なうえ可視光で目立つ残光もないため当時の観測記録がなくても不思議ではなく、ガンマ線のエネルギーも 14C / 10Be 生成比と矛盾がないとしている。short GRBs の正体はまだよく分かっていないが、候補としては中性子星やブラックホールの衝突・合体が考えられている (国立天文台による解説) 。著者らの見積りによれば、太陽系から 3000~12000 光年の距離でこうしたイベントが発生したとすれば、14C 増加をうまく説明できるという。この通りだとすると、我々の銀河系内で発生した short GRBs の初の証拠ということになる。

 ガンマ線バーストといえば、遠い銀河で発生する高エネルギー現象という印象があるが、天文学的スケールでみてこれだけの至近距離かつ最近に発生し、その痕跡を地球上に残した、というのはなかなか恐ろしい話である。

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