【話題】進む円安の功罪は?

2013年1月20日 17:30

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■輸出にプラスも原油、LNG、食料、飼料など輸入調達価格は上昇

  外国為替市場で18日、ドル・円相場は1ドル=90円台、ユーロ・円相場は1ユーロ=120円台まで円が下落した。21日~22日の日銀金融政策決定会合後に、政府・日銀の『本気度』が確認されたとして円高修正が一段と加速する可能性もありそうだ。立場によって表現は異なるが、急ピッチの「過度な円高の修正」=「過度な円安の進行」がもたらすデメリットに対して懸念も浮上している。

  円高修正の加速は、過度な円高進行に苦しんできた自動車、自動車部品、電機、精密、電子部品、建設機械、工作機械などの輸出型産業にとって、大きなメリットとなることは言うまでもないだろう。輸出採算が改善して企業業績の大幅な改善が期待されるだけに、日本の経済成長を支えてきた輸出型産業にとって、足元の円の下落は「過度な円高を修正する局面」である。

  一方で過度な円安進行は、原油、LNG、食料、飼料、衣料品などの輸入調達価格の上昇を通じて、食品、小売、空運、電力など輸入調達依存度の高い企業の採算悪化が懸念される。したがって足元の円の下落は「過度な円安進行を警戒する局面」となる。日本全体として見ても、貿易赤字拡大による経常収支悪化が警戒されるだろう。

  そして消費者にとっても「過度な円安進行」は、輸入調達価格の上昇が食品や生活必需品などの値上げに繋がり、家計を直撃することになりかねない。すでにガソリン価格の上昇が続き、オーストラリアの干ばつも影響して小麦の輸入価格が上昇しているようだ。円高を追い風としていた海外旅行に影響が及ぶ可能性もあるだろう。

  脱デフレ・日本経済再生に向けた『アベノミクス』に対する期待は強く、円高修正→輸出型産業の企業利益増加→国内の雇用や所得の拡大→消費の拡大→適度な物価上昇→内需型産業の企業利益増加という好循環が理想だが、所得が増えない中での輸入インフレという事態も警戒される。

  このため「過度な円安進行」を牽制する要人発言も聞かれ始めた。15日には甘利明経済財政再生相が「過度な円安になれば輸入物価に跳ね返り、国民生活にマイナスの影響も出てくる」と述べた。また16日には石破茂自民党幹事長が「円安で困る産業が出てくる」と述べ、いずれも「過度な円安進行」を牽制する発言と受け止められた。

  ただし、16日には菅義偉官房長官が「政府の見解としては過度な円高が是正されている段階」と述べ、17日には甘利明経済財政再生相が「依然として行き過ぎた上昇の修正局面にある」と述べた。そして18日には内閣官房参与の浜田宏一・米エール大学名誉教授が「1ドル=110円になると問題かもしれないが、95円~100円であれば問題ない」と述べ、この発言を受けて外国為替市場では1ドル=90円台に円が下落している。

  21日~22日の日銀金融政策決定会合では、政府・日銀の共同文書への「物価上昇率目標2%」の明記や資産買入基金の10兆円規模増額が予想され、結果発表を受けて円高修正の動きが一段と加速する可能性もあるだろう。米国景気回復に対する期待感で米国金利が上昇傾向を強めていることもドル高・円安要因となっているだけに、今後は安倍晋三内閣がドル・円相場について、どの程度の水準を目指すのかを巡って思惑が交錯することになりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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