世界的スポーツイベントに向けて行われるブラジル市場への資本投下とは

2012年9月10日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 世界第5位の経済大国でありながら豊富な資源に恵まれ、約1億9500万人の総人口うち、半数以上が中間所得層であるブラジル。東南アジアに次ぐものとしてこれまでもその経済成長は注目されてきたが、現在、2014年のFIFA ワールドカップや2016年のリオデジャネイロオリンピックの主催国であることもあり、経済規模の拡大に対する期待がより一層高まっている。こうした中、ブラジルにおける日本企業の活動も徐々に活発化しているようである。

 NECは、中南米地域の大手ゼネコンOAS社の子会社であるOAS Arenas社と協業し、ポルトアレグレ市に新たに建設される名門サッカーチーム「グレミオ」のスタジアムのICTインフラ整備プロジェクトに参画すると発表。新スタジアムは、中南米地域でも有数の、最新鋭の設計・最先端技術を採用した多目的施設であり、FIFAの基準を満たした6万人を収容するスタジアムとなっている。この新スタジアムにおいてNECは、IPデータネットワーク、通信ネットワーク、監視カメラ246台によるセキュリソリューション、音響システム、火災検知システム、ビル管理システム等と、これらを総合的に管理する統合ICTインフラの設計・構築を担当する。

 また製造業においてもトヨタが、生産現地化の更なる推進を目的として、ブラジル連邦共和国サンパウロ州ポルトフェリス市に、「エティオス」「カローラ」向けエンジンを生産する新工場を建設すると発表。エンジン新工場では「エティオス」用の1.3Lおよび1.5Lエンジン、「カローラ」用の1.8Lおよび2.0Lエンジンを生産、生産能力は約20万基で、生産開始は2015年後半を予定しているという。さらに三菱電機も、CNC(数値制御装置)事業強化の一環として、ブラジル市場における同社代理店のCNC販売・サービス部門を買収し、新会社を設立している。

 その他、オリックスが現地法人を設立して、M&Aや資本参加を通じてアセットマネジメント、ストラクチャード・ファイナンス、投資銀行などの事業分野への新規展開を図っていたり、長瀬産業も現地法人を設立し、「バイオ」分野での高付加価値製品の市場開発を進めるとともに事業の拡大を目指すと発表していたりと、枚挙にいとまがない。

 日本企業がブラジルでの活動を活発化させている一方で、2012年第2四半期の実質GDP成長率は前年同期比0.5%と、市場の予想を下回っている。中でも低迷している製造業が5.3%減を記録し、総固定資本形成も3.7%減と2期連続マイナス成長になっている。世界的なスポーツイベントが特需ともいえる経済発展をもたらすという従来の傾向が、徐々に弱まってきているのかもしれない。各イベントが近づくにつれてブラジル市場がどういった動向をみせるのか、注目に値するのではないだろか。

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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