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FFRIセキュリティ:国家安全保障関連のセキュリティ・サービス案件を受託、地政学リスク高まるなか防衛関連としても注目
*15:38JST FFRIセキュリティ:国家安全保障関連のセキュリティ・サービス案件を受託、地政学リスク高まるなか防衛関連としても注目
FFRIセキュリティ<3692>は、サイバー・セキュリティ事業(2025年3月期売上高予想に対して84.3%)が主力で、研究開発活動を事業の源泉としてセキュリティ・プロダクト(FFRI yarai シリーズ)とセキュリティ・サービスを提供している。セキュリティ・プロダクトは、販売パートナーによる代理店販売や製品のOEM提供による販売、同社からユーザーに対する直接販売を行っている。一方で、セキュリティ・サービスは、官公庁・法人向けに、調査・研究・開発・分析・教育等のサービスを提供している。また、ソフトウェア開発・テスト事業(同15.7%)も展開している。
同社のサイバー・セキュリティ事業は、ナショナルセキュリティーセクター(2025年3月期売上高予想に対して34.9%)、パブリックセクター(同32.0%)、プライベートセクター(同17.4%)の3つの販売区分に分けられている。
まず、ナショナルセキュリティーセクターは、防衛省及び自衛隊、防衛産業企業から国家安全保障関連のセキュリティ・サービス案件を受託しており、セキュリティ調査・研究案件を中心に実施している。同セクターのセキュリティ・プロダクト売上は極めて少ない。サイバー安全保障関連のサービス案件はほぼ請負契約で、高い技術力や調査力、研究開発体制が必要な案件が多い。マーケットの拡大ペースに対して国内の人材不足による業界全体のキャパシティは不足しており、新規参入の障壁も高い領域となる。
続いて、パブリックセクターでは、官公庁向けのセキュリティ調査・研究、開発などの案件を実施している。また、NICTの政府端末向けセキュリティソフトの開発をサポート。同セクター売上のうち、25年3月期上期時点でセキュリティ・プロダクト売上が46.3%、セキュリティ・サービス売上が53.4%と、同セクターでは「FFRI yarai」などのプロダクト販売も広がっている。販売パートナーによる代理店販売や製品のOEM提供による販売、直接販売がメインとなる。
最後にプライベートセクターでは、国内や海外の一般企業を対象にセキュリティ・サービスやセキュリティ・プロダクトを提供するほか、小規模事業者や個人を対象にセキュリティ・プロダクト販売を実施している。同セクターは、法人向けのセキュリティ・プロダクト売上が大半を占めている。ただ、販売パートナーによるOEM製品の販売が増加するなか、エンジニアのリソースをナショナルセキュリティセクター・パブリックセクターに集中しているため、セキュリティ・サービスの新規案件受注を限定している。
2025年3月期上期累計の売上高は前年同期比9.6%増の1,044百万円、営業損益は13百万円の赤字(前年同期は52百万円の黒字)で着地した。安全保障関連のセキュリティ・サービスの案件が増加しており、ナショナルセキュリティーセクターでは防衛省・自衛隊、防衛産業企業向けに国家安全保障関連のセキュリティ・サービス案件を受託した。パブリックセクターも経済安全保障関連の政府の積極的な取組みによりセキュリティ・サービスの需要が増加したようだ。上期時点で営業赤字となっているが、エンジニアの待遇向上や採用活動の強化に伴うコスト増加によるもので、計画に織り込み済みとなっている。セキュリティ・サービス案件のほとんどが下期に集中しており、業績は下期偏重傾向であるため、通期計画に対するネガティブな印象はない。FFRI yarai シリーズの販売状況は、契約ライセンス数477,359(同10,203増)、継続率91.6%。通期の売上高は同29.1%増の3,158百万円、営業利益は同3.6%増の515百万円を見込む。
サイバー安全保障関連のサービス案件は、ほとんど請負契約で高い技術力や調査力・研究開発体制が必要な案件が多く、マーケットの拡大ペースに対して業界全体のキャパシティは不足している一方で、新規参入の障壁も高い。また、経済安全保障推進法や防衛3文書、セキュリティ・クリアランス法案など法整備も進むなかで、防衛費を2027年度までにGDP比2%とするなど政府の進めるサイバー安全保障の取組は急速な進展を見せており、急速に市場規模が拡大して需要増加は今後も中長期に渡って続く見込みとなる。このような状況下で、海外企業の参入が困難な安全保障領域において、国内でセキュリティコア技術の研究開発を行う企業ははほぼ同社のみである。実際、エンジニアのリソースをサイバー安全保障に集中させ、採用体制も強化してキャパシティの向上を進めているが、需要の増加はそれ以上に旺盛で追いついていないという。そのほか、セキュリティ・プロダクト「FFRI yarai」の機能強化を継続し、国産製品の強みを活かして官公庁・重要インフラ企業への販売施策を進めていく。
さらに、活発な事業環境を踏まえて、株主に対する継続的な利益還元の実施が可能であるとの判断のもと配当を開始している。2025年3月期(予想)で配当性向18.3%と、グロース銘柄ながらも今後も株主の皆様への安定的かつ継続的な利益還元を目標としている。世界中で地政学リスクが高まる中、創立以来磨き上げてきた高い技術力で日本のサイバー領域における安全保障を実現していく同社は応援したい企業の一角となりそうだ。《NH》
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