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犬は長い歴史の中で、人間の良きパートナーとして活躍し続けてきた動物である。最近はペットとして家族の一員というイメージが強いが、歴史的には、猟犬や牧羊犬、番犬として人間社会で重要な役割を果たしてきた存在だ。
【こちらも】「犬が犬を食べる」とは?犬にまつわる英語イディオム(4)
そのため我々の使う言葉の中にも、犬の特性や行動を色濃く反映したイディオムが数多く存在する。そういうわけで、今回も犬にまつわる英語のイディオムを2つ取り上げよう。
■Work Like a Dog
「work like a dog」とは、非常に懸命に、または過酷に働くことを意味するイディオムだ。たとえば、仕事で体力や気力を使い果たした状態を表現する際に用いられる。
The Beatlesの『A Hard Day’s Night』の冒頭にある、「It's been a hard day's night and I've been working like a dog」という歌詞で、知っている人も多いだろう。
この表現の起源は、歴史的な犬の役割に深く根ざしている。過去には、犬は単なるペットではなく、労働力として重要な存在だった。牧羊犬は羊の群れを守り、番犬は財産を保護し、猟犬は狩猟の手助けをするなど、多くの犬が長時間にわたり働くことを期待されていた。
こうした背景から、「dog」という言葉は時に「骨身を惜しまない働き手」を象徴するようになったのである。
一方、この表現には少しネガティブな響きも含まれている。仕事があまりに過酷で報われない場合も、「work like a dog」は用いられるのだ。
現代では犬の役割が大きく変わり、家族の一員という位置付けが主流だが、興味深いことに、このイディオムは依然として苦労や努力の象徴として使われ続けているのである。
使用例
・I worked like a dog to finish the project before the deadline.
(締め切り前にプロジェクトを終わらせるために必死に働いた)
■Gone to the Dogs
「gone to the dogs」とは、かつては良い状態だったものが、衰退したり荒廃したりする様子を意味するイディオムだ。
このイディオムの起源にはいくつかの説があるが、有名なのが中世ヨーロッパに由来するという説だ。当時、戦争や疫病によって放棄された村には、野犬などの野生動物に占領されることは珍しくなかった。こうした背景が、「gone to the dogs」というイディオムを生んだと考えられている。
また古代中国が起源という説もある。中国では、都市部で犬を飼うことが禁止されていた時代があった。そのため、周辺地域には犬が捨てられたり、それが野犬化したりして、荒廃した状況になってしまうことが多かった。
洋の東西を問わず、昔は犬のイメージは今ほど良いものではなく、特に野犬は凶暴で危険な存在と見なされていた。それゆえ、「gone to the dogs」は、荒廃や堕落を示唆するネガティブな意味を持つようになったのである。
使用例
・This neighbourhood has really gone to the dogs since the factory closed.
(この地域は工場が閉鎖されて以来、すっかり荒れてしまった)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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