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頭部に微弱な電流を流し、統合失調症患者の生活技能を改善する研究
経頭蓋直流電気刺激(tDCS)施行の様子。(a)刺激発生装置、(b)アノード電極、(c)カソード電極、(d)電極固定用ストラップ、(e)ゴムバンド。(画像:国立精神・神経医療研究センター発表資料より)[写真拡大]
経頭蓋直流電気刺激(tDCS)。transcranial direct current current stimulation。1~2ミリアンペア程度の微弱電流を頭皮上から当てるという方式の、ニューロモデュレーションと呼ばれる施術の一種である。これが、統合失調症患者の認知機能障害を改善し、結果として日常生活技能の改善をもたらすことを、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)が突き止めた。
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統合失調症の有病率は、総人口に対し約1%。近代精神医学において最も古くから知られる精神疾患の一つであり、長年に渡り無数の研究が重ねられているが、今日なお、その明瞭な原因すら明らかではない。
主な症状は陽性と陰性の2グループに分けられる。陽性症状とは幻覚や妄想である。陰性症状は、意欲の低下、感情の平板化、記憶、注意力などの認知機能の障害を生じさせる。
認知機能が低下するため、金銭管理、対人コミュニケーションなどの、さらに高次の機能にも当然障害が生じる。陰性症状の治療は全体に難しく、有効な治療方法は長年に渡り精神医学領域の悲願の一つであった。
tDCSは、ぱっと聞くと昔あった電気ショック療法に似ていなくもないが、あれほど侵襲性があるわけではない。麻酔は要らないし副作用も少ない。うつ病などでは、既にその有効性が立証されており、統合失調症における有効性が研究されているところであった。
今回の研究では、28人の患者に対し、1回20分、1日2回、5日間の施術が行われた。1カ月後に調べると、日常生活技能に有意な改善が見られたという。この研究は、tDCSの統合失調症の日常生活技能への効果を立証したものとしては、初めての研究例となる。
なお、研究の詳細は、「Frontiers in Psychiatry」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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