関連記事
東大、消火機能を備える有機電解液を開発 リチウムイオン電池の革新なるか
研究成果のイメージ図(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]
東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授らのグループは28日、物質・材料研究機構の館山佳尚グループリーダーらとの共同研究により、消火機能を備える高性能有機電解液を開発したと発表した。
これまで二次電池の発火・爆発事故の主原因とされてきた有機電解液が、消火機能を備えたことから安全対策の切り札となり得る。このことは、解決不可能なジレンマとされてきた二次電池の高エネルギー密度化・大型化と高度な安全性の確保の両立を可能とする。
なお、本研究成果の詳細は、27日付の英国学術雑誌Nature Energy電子版に掲載されている。
●二次電池の開発動向
現在最も優れた二次電池であるリチウムイオン電池を超えるべく、多様な研究開発が行われており、次世代型と派生型に大別されるという。
主として高エネルギー密度化を志向した次世代型としては、空気電池、硫黄電池などが挙げられる。
一方、低コスト化や安全性確保に向けた派生型としては、電解質媒体を変更したナトリウムイオン電池や全固体電池などが検討されている。今回の発表は、この派生型での有機電解液に関するものである。
●有機電解液
二次電池に採用される有機電解液の電解質塩濃度は、イオン伝導性が最大となる比率が電池の商品化で一貫して用いられてきたという。
研究グループは、この電解質塩の濃度を濃くすると、全く異なる性質が得られることを2014年に発見し、様々なアプローチを実施。多様な塩と溶媒の組み合わせでも実用的な性能を発揮可能であることや異なる電解液機能を有することが判明する。
このことから消火機能を備えた有機電解液の開発につながる。それは、200度まで引火点を持たず、200度を超えると消火剤として機能する蒸気を発生するという。
また、この有機電解液を用いても、リチウムイオン電池の性能劣化は見られないという。
●リチウムイオン電池(東大ら、有機電解液)のテクノロジー
これまで発火・爆発事故の諸悪の根源とされてきた有機電解液が、最も有効な安全対策の切り札となり得ることがブレークスルーである。
本有機電解液を用いて、リチウムイオン電池用炭素負極が1,000回以上の繰り返し充放電を行っても劣化はみられないという。これは、時間にして連続1年以上に相当する。
また、正極との適合性も良好であり、商用リチウムイオン電池(3.8ボルト)を超える高電圧4.6ボルト級リチウムイオン電池の安定充放電にも成功し、電圧耐性も十分に高いことも確認した。
なお、レアメタルを使用しないナトリウムイオン電池でも同様な効果が得られたという。従って、現在研究開発中のほぼすべての二次電池の正極・負極材料に対して、直ちに実証試験が可能であるとしている。(記事:小池豊・記事一覧を見る)
スポンサードリンク