村田製作所のM&Aが続く 成長戦略の行方を見つめてみると・・

2017年10月19日 11:10

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ワクラ村田製作所では新生産棟の建設も予定している。(画像: 村田製作所の発表資料より)

ワクラ村田製作所では新生産棟の建設も予定している。(画像: 村田製作所の発表資料より)[写真拡大]

 村田製作所のM&Aが続いている。昨年11月に高機能ポリマー製品に強みを持つプライマテックの全発行済み株式を取得した。今年の3月には米子会社を通して、電圧変換効率を高める技術で業界をリードする米アークティックサンドテクノロジーズを買収した。

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 さらに9月1日にソニーの電池事業を約175億円で買収し、10月13日には医療機器開発企業である、米ヴァイオス・メディカル(ミネソタ州)を約114億円で買収し完全子会社化することが報じられた。

 アップルの新型iPhoneが発売される都度、その評判次第で株価が上下する位スマホ向けの電子部品に強みを持ち、またスマホ向けの製品ウエイトが高い村田製作所が急速にM&Aを続けている。

 16年に通信モジュールの大幅な受注減少とセラミックコンデンサー(蓄電部品)の市況悪化の影響をもろに受けたため、円安のチャンスを生かせずに業況の低迷を招いた。その反省もあり今後の需要が大幅な増加が見込める「メトロサーク」(樹脂多層基板)への傾斜を深めた。メトロサークは曲げても劣化しない特性を持ち、スマホ内部の省スペースに大幅な貢献が見込める有力素材である。現在数百億円の年間売上は今後数年間で1,000億円規模に拡大することが見込まれている。昨年11月に買収したプライマテック社はメトロサーク製造の材料技術を保有している。

 更に、アークティックサンドテクノロジーズ社の小電力パワー半導体技術と村田製作所の技術を融合させて、通信市場のみならず、データコム、産電市場においてもパワーモジュール事業の増強を指向している。

 ソニーから買収した海外の電池事業では、500億円を2020年3月期までに投資してスマホ向けリチウムイオン電池の生産に加えて、自動車用電装品向け電池にも新たに参入する計画だ。ソニー製のリチウムイオン電池は電解液がゲル状であるため、液体電解液よりも発火リスクが低いというアドバンテージが期待される。さらには、トヨタも開発を続けている「全固体電池」を19年に実用化させたいという目論見もある。

 ヴァイオス・メディカル社は胸部に装着する小型センサーで心拍数や呼吸、心電図を測定し、市販されているタブレット端末などで操作できることを目指す医療分野でのIT(情報技術)活用企業である。すでに小型センサーの製造承認を米食品医薬品局(FDA)から取得済みであるが、病院現場での試験導入を経たうえで数年のうちに本格販売に至るものと見られる。村田製作所は既に自社で電気はり治療器などを手掛けているが、今後は医療関連事業を戦略分野と位置付けてヴァイオス社との技術融合を進める。

 世界市場で高いシェアを誇るセラミックコンデンサーなどの電子部品を持つ村田製作所は、iPhoneの売れ行きに左右されない業態を目指して革新している。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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