明暗わかれるローカル線 生き残りへあの手この手の努力

2017年9月2日 11:55

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千葉県を走る小湊鐵道。(c) 123rf

千葉県を走る小湊鐵道。(c) 123rf[写真拡大]

 人口減少に転じた日本、広くあまねく国土を鉄道網が占めているはずが、地方は車社会になり、ローカル線に採算の目処が立たないまま廃線になる例が増えている。

【こちらも】地域鉄道からみる地方創生 逆開発という選択肢

 国鉄がJRに地域分社化されたのが1987年。バブル経済の最中だったが、それ以前から不採算ローカル線の扱いをどうするかが重要な国鉄改革の課題に挙げられていた。慢性赤字体質だった国鉄の特に足を引っ張っていたのがローカル線である。

 JRになってからローカル線が次々と地域路線である第三セクター方式を始めとする地域運営になり、結果として増加して来たのが「地方私鉄」「地方ローカル鉄道」という分類である。鉄道の利用度を測る指標としてよく使われるのは、一つは乗客数と乗車キロ数を掛け合わせた「人キロ」であるが、これはJRの方が大きい。東京・新大阪間の新幹線に1人乗っただけで500人キロにも昇るのだから自然な結果であるが、もう一つの乗客数は私鉄の方が多い。そして、私鉄の方が年々乗客数が漸増している様子が窺える。「私鉄」枠の路線数と延長距離が増えていれば当然ではある。

 さて、全体に地方私鉄、地方ローカル鉄道は採算が押しなべて苦しい。地方がほぼ車社会に移行しているのだから当然と云えば当然なのだが、そうした中、小さく光る特長を前に出し、観光客の訴求点に注力し売り込み作戦が奏功して集客しながら話題性を高めているローカル私鉄は幾つかある。

 その一つが小湊鉄道だ。養老渓谷という関東圏随一の桃源郷を沿線に持つ同鉄道だが、元は誕生寺への参拝客を輸送するため建設されて、さらに現在の鴨川市の先、小湊まで延長する予定だった。これが「小湊鉄道」の名前の由来である。また、戦前に黒滝発電所を保有し、電化して発電しながら電車を走らせる計画もあったが、これは戦時中の財政逼迫のため計画中止になった。それ以降、現在に至るまで電化されず関東圏では稀な非電化路線のままである。なお、経営体としては地域住民のきめ細かな足になっているバス事業の方が稼ぎ元であるが、鉄道事業でも黒字を維持しているのは立派である。その原動力は広告戦略であろう。テレビの特集始め、周辺観光地への観光旅行ツアーなどがよく計画されている。

 場所を関西に移し、和歌山鉄道の貴志駅に居るねこ駅長は既に全国区の有名駅長だ。話題性で観光客を呼び込みリピート集客に成功した例と言えよう。たま駅長の集客力の前には頭が上がらない観光関係者も多いに違いない。

 鉄道を大量輸送の道具ではなく、話題性と観光の箱とみなし、地域振興に繋がる輸送機関にした取扱いと立ち位置の確立に成功した地方私鉄が経営的に安定しているとはいうものの、人口が減少に転じ、少子高齢化により活動人口、就労人口が減って行く事態を織り込めば、いま安定しているからと言って決して予断を赦さないのはどこの鉄道会社にも共通する現状である。

 そうした中、鉄道会社が次の事業展開を目論んで挑戦している姿がある。駅舎の再活用によるコミュニティ運営、一例は近江鉄道。少子超高齢化社会への先駆けとして、今後の動向に注目して行きたい。(記事:蛸山葵・記事一覧を見る

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