喫煙が老化を促進するメカニズムの一端を解明―阪大・中西香織氏ら

2015年10月13日 21:52

印刷

今回の研究成果の概要を示す図(大阪大学の発表資料より)

今回の研究成果の概要を示す図(大阪大学の発表資料より)[写真拡大]

 大阪大学の中西香織助教・瀧原圭子教授らの研究グループは、喫煙習慣が血中の老化関連分子に影響を与えることを発見した。

 喫煙が様々な疾患や健康障害の危険因子であることは広く知られており、禁煙を推進することは疾病予防の観点から極めて重要であると考えられている。実際、喫煙者の平均寿命は非喫煙者と比較すると10年以上短く、喫煙は老化を促進する一因と言われいるが、喫煙によって老化が促進される詳細な機序についてはこれまで明らかになっていなかった。

 今回の研究では、喫煙者群では、メタボリックシンドロームになると上昇する線維芽細胞増殖因子「FGF-21」、老化遺伝子として知られている「αクロトー」、関節リウマチや感染症などの疾患で血中濃度が上昇する「インターロイキン」が、非喫煙者群に比べ有意に高値であることが分かった。

 FGF-21は、代謝関連サイトカインとして知られるアディポネクチンと負の相関を持ち、喫煙者でFGF-21が上昇していたことは代謝異常を示唆していると考えられる。

 一方で、αクロトーは非喫煙者群においてIL-6と正の相関を示したが、喫煙者群ではその相関は認められなかった。αクロトーは抗炎症作用を持つと過去に報告されており、喫煙者でαクロトーとIL-6の相関性がなかったことは、αクロトーの抗炎症作用が喫煙ストレスによって減弱化されている可能性が考えられた。

 今回の研究では、喫煙習慣が血中の老化関連分子クロトーに影響を与えることを初めて発見した。今後は、喫煙習慣がもたらす老化の促進や加齢性疾患発症の指標となる新しいパラメーターとして血清クロトーが利用できるようになることが期待される。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Klotho-related Molecules Upregulated by Smoking Habit in Apparently Healthy Men: A Cross-sectional Study」。

関連記事