東大、電子軌道の量子揺らぎによって発生する新しい超伝導現象を発見

2014年12月12日 23:11

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強い軌道揺らぎによってf電子同士がクーパー対を組み、超伝導状態の固体内を伝搬している様子を示す概念図(東京大学の発表資料より)

強い軌道揺らぎによってf電子同士がクーパー対を組み、超伝導状態の固体内を伝搬している様子を示す概念図(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の松本洋介助教らによる研究グループは、電子の形の揺らぎを媒介とした新しいタイプの超伝導を常圧下で実現できることを発見した。

 これまでに発見されてきた超伝導現象は、電子の磁気的な自由度(スピン)によって引き起こされることが分かっている。一方で、電子は形(軌道)の自由度も持っているため、これを利用した新しい超伝導現象が模索されている。

 今回の研究では、希土類金属間化合物であるPrV2Al20(Pr:プラセオジム、V:バナジウム、Al:アルミニウム)の純良化に成功し、極低温度における精密物性測定から、この物質の軌道揺らぎによる異常な電子状態と、この軌道揺らぎを媒介とした新しい超伝導を発見した。さらに、この超伝導でクーパー対を形成する電子の有効的な質量は通常の約140倍もあることが分かった。

 今後は、軌道揺らぎを媒介とした新しい超伝導のみならず、軌道揺らぎを用いた新規物性探索の研究が加速的に進むことが期待されている。

 なお、この内容は12月16日に「Physical Review Letters」オンライン版に掲載される。

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