タンパク質の異常構造を修復することで、てんかんを軽減できることが明らかに

2014年12月10日 21:21

印刷

LGI1変異がLGI1のシナプスへの輸送を障害したり、受容体ADAM22との結合活性を低下させることを示す図(生理学研究所の発表資料より)

LGI1変異がLGI1のシナプスへの輸送を障害したり、受容体ADAM22との結合活性を低下させることを示す図(生理学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 自然科学研究機構生理学研究所(NIPS)の深田正紀教授らによる研究グループは、遺伝性てんかんの一つである常染色体優性外側側頭葉てんかんの原因がタンパク質の構造異常に基づくこと、そして異常タンパク質を修復することでてんかんが軽減することを明らかにした。

 これまでに知られているヒトのてんかん原因遺伝子の多くは、神経細胞間の情報伝達を担うイオンチャネルタンパク質で、抗てんかん薬の多くはイオンチャネルを標的として開発されてきた。しかし、一部のてんかん症例ではこれら薬剤だけではコントロールが難しい場合もあり、新たな治療戦略が求められている。

 今回の研究では、遺伝性側頭葉てんかんの原因遺伝子LGI1の遺伝子変異を「分泌型」と「分泌不全型」に分け、これらの変異を持つモデルマウスを作成した。その結果、分泌型変異マウスでは、LGI1は細胞外に分泌されるものの受容体であるADAM22との結合が特異的に阻害されていること、そして分泌不全型変異マウスでは、LGI1はタンパク質の構造異常のために細胞内で分解されてしまい脳の中で正常に機能するLGI1が減少することを発見した。さらに、タンパク質の構造を修復しうる低分子化合物が分泌不全型LGI1の構造異常を改善させることを明らかにした。

 研究メンバーは、「タンパク質の構造異常を改善することに着目した化学シャペロン療法は、これまで嚢胞性線維症やライソゾーム病といった遺伝性疾患に対し試みられてきましたが、てんかん治療への応用は、今回が世界で初めての試みです。同様の治療戦略は、LGI1以外の遺伝子異常によるてんかんにも有効である可能性があります」とコメントしている。

 なお、この内容は12月9日に「Nature Medicine」電子版に掲載された。

関連記事