東大、動物の運動速度を制御する神経回路を明らかに

2014年10月18日 10:51

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PMSI の活動と運動速度との関係を示す図。生きた個体の中で、PMSI神経細胞の活動を強制的にOFFにすると、運動速度が遅くなった。(研究結果の発表資料より)

PMSI の活動と運動速度との関係を示す図。生きた個体の中で、PMSI神経細胞の活動を強制的にOFFにすると、運動速度が遅くなった。(研究結果の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の高坂洋史助教・能瀬聡直教授らによる研究グループは、運動の速さを制御する神経細胞PMSIsを発見した。

 動物が適切な速さで動くことは、エサやなわばりの確保、配偶行動などにおいて非常に重要であり、速さを制御する神経回路は進化の過程で洗練されてきていると考えられている。しかし、神経ネットワークを構成する膨大な数の神経細胞の中から速さを制御している細胞を見つけ出すのは容易ではなく、これまでほとんど詳細は明らかになっていなかった。

 今回の研究では、ショウジョウバエの幼虫の「ぜん動運動」を制御する神経細胞を探索し、神経細胞PMSIsを発見することに成功した。また、オプトジェネティクスと呼ばれる手法を用いて神経細胞PMSIsを活性化したところショウジョウバエ幼虫の動きが止まることが分かった。これは、PMSIs が運動神経細胞の活動を強力に抑制できることを示している。また、PMSIsの活動を強制的に不活性化した場合は幼虫の運動速度が遅くなった。これは、幼虫が適切な運動速度で動くためには、PMSIsの適切な活動が必要であることを示している。

 今回ショウジョウバエ幼虫で発見されたPMSIsと非常に性質の似ている神経細胞は、魚類、両生類、哺乳類の運動回路にも見出されている。このことから、運動速度の制御には、種を超えた共通の機構が使われていることが強く示唆され、今回の研究が運動制御の原理の解明に貢献することが期待される。

 なお、この内容は10月16日に「Current Biology」に掲載された。

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