理研、短期記憶によって「行動を修正する脳の仕組み」を明らかに

2014年4月26日 19:46

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理研が今回の研究で実施したT型迷路空間ワーキングメモリ課題の概要を示す図

理研が今回の研究で実施したT型迷路空間ワーキングメモリ課題の概要を示す図[写真拡大]

  • 正常正解試行中の神経活動を示す図。テスト試行で正解した時の海馬-大脳嗅内皮質間の位相同期性を解析したもの。T型迷路の分岐地点にさしかかる直前に高域ガンマ波の位相同期性が高くなっている(下、赤い矢頭で示している)。
  • 自己訂正試行中の神経活動を示す図。テスト試行で、マウスが自分の間違いに気づき、進行方向を変更して最終的に正解したような場合。T型迷路の分岐を過ぎて、間違ったアームに侵入し、「おっと、これは間違い」と気づいた時に高域ガンマ波の位相同期性が高くなっている(下、赤い矢頭で示している)。T分岐で高域ガンマ波の位相同期性が高くなる正解試行の例と比べると、位相同期性の高くなる時間と場所がシフトしていることが分かる。

 理化学研究所は25日、マウスを使った実験で、短期記憶によって行動を修正する際の脳の働きを明らかにしたと発表した。

 私たちの脳には、短期的に情報を記憶する「ワーキングメモリ」と呼ばれる機能を備えている。その役割を担うためには脳内の海馬の働きが重要だと言われていたが、詳細は明らかになっていなかった。また、ワーキングメモリによって間違った行動を修正する「メタ認知」はヒトのみに備わった能力で、マウスなどの小動物がこの能力を持つことは立証されていなかった。

 今回、理研の研究チームは、マウスが食べ物を探し当てる実験を行い、ワーキングメモリには脳内の海馬と嗅内皮質の間でガンマ波と呼ばれるの脳波の同期が起きていること、そしてこのガンマ波の同期が時間的・空間的にシフトすることで間違った行動を修正することを明らかにした。

 この研究結果は、米国の科学雑誌『Cell』(5月8日号)、及びそのオンライン版(日本時間4月25日)に掲載される。

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