【小倉正男の経済羅針盤】最近のオヤジたちの軽すぎる発言撤回

2014年2月23日 13:27

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■すぐに撤回するぐらいなら・・・

 発言内容の是非を論じる以前に、

 最近は、何かというと「撤回します」「取り消します」である。NHK新会長に続いて、首相補佐官――。

 エラそうなことは極力言わないようにしているのだが、最近のいい歳のオヤジたちは何を考えているのやら。

 発言を撤回したのだから、「どこが悪いのか」「問題ないのではないか」というのは軽すぎるのではないか。

 発言したばかりなのにすぐ撤回するぐらいなら、発言などしないほうがよい。

 「綸言汗の如し」――、いったん発した言葉は、訂正したり取り消したりすることはできない。NHKの大河ドラマなどで何度も語られてきた中国古典の教えである。

■政府が右なら右、とは身も蓋もなし

 籾井勝人・NHK会長の発言は、慰安婦問題を含めて多岐にわたるものだが、「政府が右と言っているのに我々が左と言うことはできない」とは、ほとんど思考停止の感がある。

 この発言は、国際放送、そして領土問題に関しての発言らしい。 だが、原発事故などの報道についても、政府の言動が右なら右と言うことになりかねない。

 政府の任命なのだから、最初に政府の顔を伺うということなのだろうか。少なくとも、第一義に視聴者=国民に顔を向けないということになる。

 身も蓋もないことだが、もう少しというか巨大メディアのトップとして最低限の"見栄"を張ってほしいものである。

 これでは、任命した筋も当てが外れたというか、頭を抱えているのが本当のところではないか。身も蓋も、つまり普段の見識や教養のようなもの、いうならば少々の資質があれば見栄も上手に張れるものだが・・・。

■「失望したことに失望」、すぐ撤回したことに失望!?

 衛藤晟一・首相補佐官の発言撤回も身も蓋もない話である。

 安倍晋三首相の靖国神社参拝に「米国が失望を表明したことに失望した」、という発言。

 靖国参拝の是非は様々な議論のあるところだが、米国に率直にモノを言ったことはオヤと思わせた。

 是非はともかく骨がある人がいるではないか、と。これはどういう人物なのだ、と。 しかし、即日すぐの撤回、オヤオヤである。動画も削除となった。

 同盟関係だとか言っているが、結局、米国には何も言えないのか。中国外交部報道官からは、「日本は一体何をしたいのだ――」と揶揄される始末である。

■再び失敗の轍を繰り返すのか

 さらには森喜朗・元首相まで浅田真央ちゃんについて無神経な発言。イヤハヤ困ったものである――。国民からの批判・反響は、これがいちばん大きかったのではないか。

 これでは前回の安倍内閣の失敗の轍を繰り返すことにならないか。

 廻りが軽い発言や行動をしたり、失言を重ねたりして、国民の失望を大きく膨らませていく。

 ところでいま安倍首相に直言するとすれば、アベノミクス第3の矢=経済成長戦略に集中すべきであるということだ。

 第3の矢は、どこにいったのか。「バイ・マイ・アベノミクス」は終わったのか――。

 これこそが日本の失望の源である。第3の矢をしっかりと放つことこそが、徐々に膨らんでいる失望の源を断つことになる。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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