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【ロンドン通信】イギリスでマスクは定着するか? 変わる欧州のマスク事情

2020-05-23 21:01:07

「ヨーロッパの街中でマスクをつけて歩くのは日本人旅行者くらい」、そんな認識も過去のものとなるのだろうか。写真:ロンドンで購入したマスク

「ヨーロッパの街中でマスクをつけて歩くのは日本人旅行者くらい」、そんな認識も過去のものとなるのだろうか。写真:ロンドンで購入したマスク

 「ヨーロッパの街中でマスクをつけて歩くのは日本人旅行者くらい」、そんな認識も過去のものとなるのだろうか。新型コロナウイルス感染症対策として、改めて効果が見直されているマスク。日常的にマスクをする文化がなかった欧米でも、意識が変わり始めている。「マスクが買えない」と言われるイギリスでも遂に、マスクを販売する店が現れた。私が偶然マスクを見つけたのは、薬局でも怪しげな個人店でもなく、意外なところだった。

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 日本人は誰に強制されるでもなく外出時は自主的にマスクをしていて、今や都内中心部での着用率はほぼ100%。大手メーカーやアパレルブランドがマスクを発売すると聞けば注文が殺到し、抽選になるほどの人気だ。だが日本の「マスク熱」は海外の人には異常と思われるかもしれない。

 例えば、日本の留学エージェントによる現地生活へのアドバイスを、HPで読むとこう書かれている。「マスクは『医療従事者や食品関係の仕事をしている人が仕事上必要で着用するもの』とイギリス人は認識している」よって「イギリスではマスクは買えない」。科学的に根拠があるかどうかは別として、イギリスで「感染の予防」という観点でマスクを取り入れる人はいなかったようだ、2020年初めまでは。

 3月頃まで、ロンドン市内でマスクをしているのはアジア系の人ばかりだった。だが国内全土で外出制限が実施され、5月6日に感染症による死者が3万人を超えた。4月頃からスーパーマーケットの店員がマスクをつけて接客するようになり、街中にも徐々にマスク着用者が増え始めた。「増えた」とは言っても、東京に比べれば圧倒的に少ないのだが、イギリスでは大きな変化かもしれない。

 イギリスでマスクが本当に売っていないのなら、彼らはどこでマスクを入手したのだろう? 疑問に思ったので探してみることにした。

 まずは近所の薬局2店を回ってみたがマスクは売っていなかった。ティッシュやのど飴のコーナーはあっても、店内にマスクのコーナーが見当たらない。「Face Mask」と書かれたポップの下にあったのは美容目的で使うフェイスパック。確かにこれも“フェイスマスク”だけど……こちらではマスクは「Face covering」「Medical face mask」と呼ばれているようだ。ひょっとしてカウンターの奥にしまってあるのかも? 店員に聞いてみるも「ありません」のひと言。街行く人の中には、水色の医療用マスクの他に、工事現場で使うような防塵用マスクや、スカーフを巻いている人も。やはりイギリスに医療用マスクを一般に売る店は存在しないのか……。

 しかし意外なところで私はマスクと対面した。それはスーパーマーケットチェーンM&S(マークス&スペンサー)の最寄りの店舗だった。食料品を買いに行ったその店に、上から下までマスクが並んだ棚が立っているではないか。1種類のみだが、在庫も豊富だ(1人2点まで購入できる)。ちなみにスーパーにも階級があると言われるイギリス、M&Sは高級スーパーのカテゴリーに入る。

 さっそく購入して実際につけてみると、鼻の部分にワイヤーも入っているし、顎までカバーできる“ちゃんとした”マスクだった。イギリスで、しかもスーパーでマスクが売っているという事実に驚き、思わず買ってしまったが、よく考えると使い捨てマスク3枚セットで3£、1枚あたり1£=約130円は高い。このように店頭で買える確率はまだまだ低いが、イギリスの薬局チェーン「Boots」のオンラインストアでは50枚セットを30〜35£で販売している。

 日本人には興味深いことに、ヨーロッパでは政府が義務化しないとマスクの着用率が上がらない。フランスは公共交通機関を利用する際に着用を義務化し、1人あたり2枚のマスクを国民に無料配布した。より厳格な措置をとるスペインでは、屋内・屋外を問わず、他者と2mの距離を確保できない場合は着用を義務付けている。同様にドイツ・オーストリア・チェコなども買い物時のマスク着用を呼びかけている。

 イギリス政府も公共交通機関や狭い店舗内でのマスク着用を推奨しているが、現在のところ、義務化までには至っていない。だが、アパレルブランドがファッションの一部のようにおしゃれでカラフルな布製マスクのオンライン販売を始めたり、Web版BBCニュースが「How to make your own face mask」と題して、バンダナやTシャツをリメイクしてマスクを手作りする方法を紹介したりと、マスク事情は確実に変化し始めている。

 パンデミックを機にヨーロッパでマスクに対する意識が変わり、今後さらに浸透していくのかもしれない。真冬の乾燥する時期に、堂々とマスクをつけて外出できるなら、個人的には嬉しい。ただ、夏に向けて気温が上がるこの時期、イギリスでマスクがどこまで普及するかは政府のガイダンス、そしてイギリス人の意識の変化次第だ。
(Sara Suzuki/London)

ムビコレ

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