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相場展望5月18日号 米国株式はなぜ力強いか。その疑念は? EPS(1株利益)の大幅悪化は、時間差で株価急落の前兆

2020-05-18 08:30:00

■I.米国株式市場
●1.米国株式はなぜ強いのか
  ⇒ (1) FRBが何兆ドルもの資金を経済に注ぎ込むからだ。(2) 僅かの銘柄が、新型コロナを追い風に利益増で米株を力強く牽引。

【前回は】相場展望5月13日号 トランプ『FRBにマイナス金利を要求』で、2番底に警戒

 1)米国株式は史上最も割高であるが、今のPERの高さは問題にならない。しかし、株価が上昇する中で、利益予想は低下している。
  ・SP500指数の2020年予想1株当たり利益(EPS)は今や128ドルとなり、年初の152ドルから低下。
  ・利益予想の下方修正と驚異的な株価上昇との組み合わせにより、予想株価収益率(PER)は23倍近くと、過去最高近辺となっている。
  ・1999年には予想PERが約26倍だった為、現状では過去最高ではないが、2020年の予想利益がさらに引き下げられれば、PERは30倍に近付く可能性がある。

 2)高いPERは気掛かりかもしれないが、心配の必要は無い。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)によって何兆ドルもの資金が経済に注ぎ込まれている為。
  ・過去にも金融刺激策が取られていた時期には、PERが大幅に再評価された。
  ・PERがさらに上昇するとは言い難いが、今の水準なら問題ないという声がある。

 3)ナスダック総合指数は抜群の上昇力で、米国株指数全体を牽引している。
  ・しかし、ナスダック銘柄全体で上昇しているのではなく、僅かな銘柄数だけで大きく寄与している。
  ・ナスダック銘柄数は約2,700であるが、アップル・アマゾン・マイクロソフトなど上位10銘柄が時価総額の約44%を占めている。そして、アップルなどGAFAMという銘柄は、新型コロナでの巣ごもり現象を追い風にして業績を大きく伸ばしている。しかも10大銘柄は割安ではなく、2020年の平均予想PERは47倍となっている。
  ・高PERの僅かな銘柄数の株価上昇が、ナスダック総合指数の上昇となり、米国株全体の上昇につながって、投資家が安心して夜に眠れるような状況を作りだしてきた。

●2.その僅かな銘柄の高PERに疑念が生じた場合、株式市場全体が動揺することに注目。
  ・米株式市場の牽引役であった(1)クラウド関連 (2)インターネット関連の株価は新型コロナ感染前に戻ってきており、足元はもみ合う状況にと変化してきている。
  ・SP500の益回りから、10年国債利回りを差し引いた幅は、新型コロナ感染前の水準に戻っていることから、株式市場の相対的魅力はかなり低下している。
  ・楽観的な見方は、現実と向き合う局面に入ると徐々に後退してくる。

●3.米4月PPI、2009年以降で最大の下落率、ドル売りにつながる、デフレ懸念
 1)米労働省が発表した4月生産者物価指数(PPI)は前月比▲1.3%と、予想▲0.5%を下回った。前年比でも▲1.2%と2015年10月以来で最大の下落率。

 2)景気後退につながるデフレが懸念される可能性あり。

●4.FRB議長発言、「米経済はコロナ禍で長期低迷」 ⇒ 投資家の市場心理を冷やした
 1)パウエル議長は13日の講演で、新型コロナの感染拡大による景気の落ち込みについて、「範囲やスピードが近年では前例が無く、第2次世界大戦後のどの不況と比べても深刻」と指摘。「より深く、より長い不況が経済に永続的なダメージを残す可能性がある」と警鐘を鳴らした。そして、
  (1)議会はさらなる財政出動などの追加対策を取る必要があると主張。
  (2)FRBは必要に応じて一層の対応をすると明言。
  (3)トランプ大統領が求める「マイナス金利」については、「米国にとって魅力的な政策でなく、銀行の収益力低下など副作用があり、我々が使う政策手段ではない」と説明した。

 2)米国では経済活動の再開が始まっているが、再開を急ぐと新型コロナ感染の「第2波」を起こしかねないとの警戒感も強い。

 3)この状況でのパウエル発言が、さらに市場の景気懸念に拍車をかけた。そして投資家心理を冷やし、米国株式市場では景気敏感株を中心に売り優勢となった。

●5.コロナ禍による米国の景気対策とコロナ対策に2兆6,800億ドル(約287兆円)の財政支出
 1)米国の今年度の国防費約7,300億ドルの3年半分を超える規模。

●6.IMF(国際通貨基金)の2020年度GDP成長率(前年度比)予測
 1)米国   ▲5.9%減
   ユーロ圏 ▲7.5%減
   日本   ▲5.2%減
   中国   ▲4.9%減

 2)税収が急減する中で、巨額の国債が増発される
  ・米国の債務残高はすでに23兆ドル(約2,460兆円)に迫っており、これにコロナ関連支出が約3兆ドル加わる。
  ・日本の政府債務は1,114兆円(2019年末)。(地方自治体の債務除く)

●7.WHO(世界保健機構)、新型コロナは「消滅しない可能性」と、終息に長い道のりと認識
 1)新型コロナウイルスは、HIVウイルスと同じで、共生していかざるを得ない。

●8.トランプ氏、「中国主席と今は話したくない」と、中国との断交も示唆(FOXニュースとのインタビュー、5/14朝の放送)
 1)新型コロナを巡って、中国に「かなり失望した」。

 2)米国市場に上場の中国企業は米会計基準に従わないことに「非常に厳しく注視」と述べた。

 3)断交した場合、「5,000億ドル(約53.5兆円)を節約できるだろう」との見方を示した。

●9.半導体製造最大手TSMC(台湾)は米アリゾナ州に5ナノメートルの最先端半導体工場を建設
 1)投資額120億米ドル(約1.3兆円)、着工2021年・量産開始2024年の計画。

 2)米国のハイテク製造業のリーダー的地位強化と、安全保障・競争力の増強を後押し。

 3)TSMCにとっても、半導体回路設計に強い米企業との協業強化と消費地立地で競争力増す。

続いて、「中国株式市場」「日本株式市場」の分析、「注目銘柄」へ

■II.中国株式市場
●1.中国の自動車業界下位メーカーの脱落が加速
 1)湖南省の猟豹汽車(レオパルド)が長沙工場の運営を、浙江省の吉利汽車(ジーリー)に委託。

 2)猟豹汽車は国有企業・長豊集団の傘下にあり、前身は人民解放軍の軍需工場だった。1996年から三菱自動車の「パジェロ」をライセンス生産し、SUVに強い中堅メーカーとして一定の認知度を得ていた。2017年に年12万台以上を販売したが、2018年以降は深刻な販売不振に陥っていた。
 
 3)吉利汽車の親会社・浙江吉利控股集団はダイムラーとボルボの筆頭株主。董事長と親しい習近平・国家主席は「吉利を支援せずして、どの企業を支援するのか」と発言。吉利の董事長の夫人は、習近平夫人の妹と言われている。

●2.中国・環球時報は4/16付け記事で、「外交で『中国が唯々諾々と従う時代は終わった』」と言い放った。(Wedge 5/14)
(注)環球時報は、中国共産党機関紙「人民日報」系の国際版。

 1)ニューヨーク・タイムズを始めとする欧米メディアは、この記事に敏感に反応している。

 2)中国外交部の副報道局長は「戦う外交官」として強硬な発言を繰り返し、また各国駐在中国大使なども強圧的ともいえる強気の発言を行っている。

●3.米政権は、連邦職員・軍人の退職年金を運用する年金運用機関に要請
 1)近く新たに45億ドル(約4,800億円)を中国株に振り向ける計画だった。

■III.日本株式市場
●1.日経平均が下落する前兆
 1)アベノミクス相場スタート後の日経平均EPSとPERの推移
             EPS    PER
   2012年12月20日   610円  16.44倍
   2013年04月25日   594    23.41
   2020年03月16日  1,603    10.60
   2020年05月15日   728    27.50:EPSは3/16比▲54.5%安でPERを上昇
    注)PER:株価収益率、EPS:1株当たり利益

 2)EPSの大幅悪化は、時間差で株価急落の前兆となる可能性が高い。
   過去の事例
    2013年04月25日 PER   23.41倍
    2013年05月22日 日経平均15,627円 
    2013年06月13日 日経平均12,445 ・・・高いPERの後の下落率▲20.36%

 3)米NYダウとの連動性に変化
   NYダウが上昇時に日経平均は敏感に反応するが、NYダウが下落時に日経平均は鈍感

 4)PBRの1倍割れだけで、日経平均の割安さを主張するのは異常。

 5)日経平均の株価上昇のエンジンは国内大手(野村)であり、海外投資家ではない。

 6)日経平均VI(恐怖指数)は5/13 29.15と、3/16の60.67から低下したが、まだ高値圏といえる30近辺と高水準の為注意を継続したい。

●2.NYダウと日経平均との単純差が最接近 ⇒ 通常差に戻るには(1)NY株上昇か(2)日経平均下落か
 1)3/4 5,990 ⇒ 5/13 2,980pt(ポイント)
  この最接近が意味するところは、「米国株に対して日本株が強くなってきた」の意味か?

 2)早晩、5,000pt台に回帰すると思われるが、その修正方法は(1)NYダウ上昇または(2)日経平均の下落、と2通りあるが、素直にみると、いずれ(2)の日経平均株価が下落することで修正を計るだろう。理由は、PERが27.50倍と割高水準にあり、低下するEPSに合わせるのが妥当な為。

●3.企業業績
 1)武田薬品  2020年3月期の純利益は442億円(前期比▲67%減)巨額買収で。
         コロナ治療薬7月から臨床試験開始へ。
 2)ソニー   2020年3月期の営業利益8,455億円(前年比▲5.5%減)。
         2020年1~3月営業利益345億円(前年比▲57%減)。
         2021年3月期公表見送りながら、営業利益は▲3割減超と試算。
 3)三菱マテリアル 2020年3月期の最終損益▲720億円の赤字(前期+12億円の黒字)。
 4)三菱ケミカル  2020年3月期の純利益+540億円(前年比▲68%減)。
           2020年4~9月期の純利益ゼロ。2021年3月通年は+490億円。
 5)ユニ・チャーム 2020年1~3月期の営業利益+302億円(前年同期比+50.7%増)。
           2020年12月期通期見通しは据え置き。

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)
 ・4502 武田薬品   シャイヤーとの合併が良好な結果。
 ・6182 ロゼッタ   高性能翻訳機の需要が拡大。
 ・6981 村田製作所  5G関連の電子部品で強み。

執筆:中島義之(なかしま よしゆき) 

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