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超新星とX線バーストの謎に迫る、サリー大学が重要な核反応を実験で解明

(Nasa.gov)[写真拡大]
英サリー大学などの研究チームが、重力崩壊型超新星における放射性チタン44の生成と、タイプI X線バーストのニッケル・銅サイクルに関わる核反応を実験的に調べた。米アルゴンヌ国立研究所とミシガン州立大学の希少同位体ビーム施設(FRIB)で得られた成果は、学術誌『Physical Review Letters』に2本の論文として掲載された。
いずれの研究も、天体環境で起きる反応そのものを再現して反応率を直接測定したものではない。短寿命原子核を使った実験から、反応率を決める共鳴準位や核構造の情報を取得し、従来は理論計算への依存が大きかった反応率を実験データに基づいて制約した。これにより、超新星の元素合成量やX線バーストの光度曲線を計算する際の核物理学的な不確実性が小さくなる。
■超新星におけるチタン44生成反応を実験的に制約
大質量星の中心核が崩壊して超新星爆発を起こすと、星の内部から押し出された物質の一部では、「アルファリッチ・フリーズアウト」と呼ばれる元素合成が進む。ヘリウム4の原子核に相当するアルファ粒子などが関与する反応網を通じ、放射性同位体のチタン44も生成される。
チタン44の生成量を左右する反応の一つが、バナジウム45に陽子が捕獲され、クロム46とガンマ線が生じる「45V(p,γ)46Cr」反応である。この反応が進むと、反応網の物質がチタン44の生成につながる経路から失われるため、反応率の違いが最終的なチタン44生成量に影響する。
研究チームは、アルゴンヌ国立研究所のATLAS加速器施設で実験を行い、クロム46に存在する10個の未知の陽子非束縛準位を特定した。励起エネルギーやガンマ線崩壊の情報、殻模型計算を組み合わせ、45V(p,γ)46Cr反応率を決める共鳴状態を初めて実験的に制約した。
解析では、アルファリッチ・フリーズアウトの温度域において、共鳴エネルギー714キロ電子ボルトの状態が反応率を支配することが示された。得られた反応率は従来の推定より低く、超新星モデルに組み込むと、予測されるチタン44生成量は従来値より最大35%増加した。
チタン44は半減期が約60年で、その放射性崩壊に伴うガンマ線や硬X線を比較的若い超新星残骸から観測できる。爆発直後の星の中心部に近い領域で合成されるため、その量や空間分布は、爆発内部の物質の動きを調べる手掛かりになる。
NASAの宇宙望遠鏡NuSTARは、超新星残骸カシオペヤ座Aに存在するチタン44の分布を画像化している。この観測では放射性物質が一様な球殻や明瞭なジェット状に並ばず、爆発内部に大規模な非対称性があったことを示す分布が得られた。欧州宇宙機関のガンマ線観測衛星INTEGRALも、超新星1987Aの残骸からチタン44の崩壊に対応する放射を検出している。
今回の研究は、チタン44の観測量と超新星シミュレーションを比較する際に用いる反応率へ、初めて具体的な実験情報を与えた。爆発モデルにはほかにも核反応や天体条件に由来する不確実性が残るが、チタン44生成量を左右する要因の一つを狭める成果となる。
筆頭著者でサリー大学原子核物理グループの博士研究員クリストファー・カズンズ氏は、「この分野がどれほど進歩したかを目にするのは刺激的だ。このような測定は、わずか数十年前なら手の届かないものと考えられていただろうが、現在では天体物理学における最大級の未解決問題の一つに新たな知見をもたらしている」と述べた。
■X線バーストのNiCuサイクルを調べる
もう一つの研究は、近接連星系にある中性子星の表面で発生するタイプI X線バーストを対象とした。中性子星が伴星から水素やヘリウムを含む物質を取り込み、表面に蓄積した燃料が急激な熱核燃焼を起こすと、明るいX線が放射される。
この燃焼では、原子核が次々に陽子を捕獲して陽子過剰な重い原子核へ進むrp過程が働く。反応の流れがニッケル56付近に達すると、銅59を経由して亜鉛60側へ進む経路と、ニッケル56へ戻る経路が競合する。後者によって物質の一部が循環する反応網は、ニッケル・銅サイクル、またはNiCuサイクルと呼ばれる。
競合する反応は、銅59が陽子を捕獲して亜鉛60とガンマ線を生じる「59Cu(p,γ)60Zn」反応と、銅59が陽子と反応してニッケル56とアルファ粒子を生じる「59Cu(p,α)56Ni」反応である。両者の比率によって、より重い原子核へ進む物質と、ニッケル56側へ戻る物質の割合が変わる。
2026年2月に『The Astrophysical Journal』へ掲載された先行研究は、59Cu(p,α)56Ni反応を直接測定した。その結果、温度15億ケルビン以下では反応物質の再循環が5%以下となり、特定の1ゾーン型X線バーストモデルでは強いNiCuサイクルが生じないことが示された。
サリー大学などの研究チームは今回、もう一方の59Cu(p,γ)60Zn反応を左右する亜鉛60の核構造をFRIBで調べた。短寿命の銅59は通常の固定標的にできないため、銅59のビームを重陽子標的へ入射し、銅59が重陽子から陽子を受け取って中性子を放出する「59Cu(d,n)60Zn」反応を利用した。
これは陽子移行反応であり、X線バースト中の59Cu(p,γ)60Zn反応そのものを直接測る方法ではない。移行反応によって亜鉛60の励起状態を生成し、そこから放出されるガンマ線や反応断面積を解析することで、天体環境の陽子捕獲反応率を計算するための核構造情報を得る。
研究チームは、亜鉛60にある15個の陽子非束縛準位を特定し、励起エネルギーと分光学的因子を求めた。これらを恒星モデルの計算に組み込んだ結果、59Cu(p,γ)60Zn反応率の不確実性は従来の10分の1未満に縮小した。
計算上、NiCuサイクルが成立する条件は残るものの、その分岐の強さは38%未満に制限された。論文では、この範囲の分岐でも計算されるX線バーストの光度曲線に有意な影響を与え得るとして、周辺の反応率をさらに測定する必要性を指摘している。
筆頭著者でサリー大学原子核物理グループの博士研究員コナー・オシェア氏は、「最大の未知事項の一つは、X線バースト中に物質がニッケル・銅サイクルへ取り込まれるかどうかだった。私たちは、それが起こる一方で、割合は小さい可能性が高いことを示し、これらの爆発について、より現実的な像を得た」と説明した。
■光度曲線と中性子星内部を結ぶモデル
X線バーストの光度曲線は、明るさがどのように立ち上がり、ピークを迎え、減衰するかを示す。形状には燃料の組成、物質の降着率、核反応率、中性子星の重力など複数の要因が関係するため、観測とモデルの比較には核燃焼を精密に記述する必要がある。
X線バーストの観測は、中性子星の質量や半径、その組み合わせで決まるコンパクトさを調べる研究にも使われる。今回の成果は、こうした物性を直ちに高精度で決定するものではないが、59Cu(p,γ)60Zn反応率に由来する不確実性を小さくし、観測とモデルを比較するための核物理学的な基盤を改善する。
NiCuサイクルは、燃焼後に中性子星表面へ残る「バースト灰」の組成にも影響する。今回の計算では、サイクルが有意に働く場合、質量数が奇数の原子核が増えることが示された。こうした原子核は、中性子星地殻でニュートリノを介して熱を運び去るウルカ冷却に関係する可能性があり、反応率の改善は地殻の熱進化を計算する際にも役立つ。
■短寿命原子核で天体反応に迫る
2つの研究は、直接扱うことが難しい短寿命原子核を加速器で生成し、天体核反応率を決める準位や共鳴の情報を取得した点で共通する。地上の実験で超新星や中性子星表面の環境をそのまま再現するのではなく、反応網を構成する個々の原子核の性質を測り、天体モデルへ反映する取り組みである。
チタン44に関する研究成果は、超新星の元素合成モデルとガンマ線・硬X線観測を比較する際に利用できる。一方、NiCuサイクルには複数の反応が関与しており、その全体像や光度曲線への影響を定量化するには、隣接する反応率の追加測定が必要になる。
サリー大学の原子核物理学教授で両研究の研究代表者を務めたギャヴィン・ロテイ氏は、「何十年もの研究にもかかわらず、宇宙で最も壮大な天体爆発の一部を支える核反応について、私たちはまだ完全には理解していない。2つの研究は、これまで科学者が理論や推定に頼っていた部分へ実験的証拠をもたらし、X線バーストと超新星の内部で何が起きるかという重要な問いに答えるものだ」と述べた。
チタン44生成に関する論文は『Physical Review Letters』第136巻252701として2026年6月23日に、NiCuサイクルに関する論文は同誌第137巻022701として同年7月6日に掲載された。
■注目ポイントQ&A
●なぜ超新星研究でチタン44が重視されるのですか?
チタン44は約60年の半減期を持ち、その放射性崩壊に伴うガンマ線や硬X線を若い超新星残骸から観測できます。星の中心部に近い領域で合成されるため、生成量と分布は爆発内部の非対称性や物質の動きを調べる手掛かりになります。
●rp過程とは何ですか?
rp過程は、原子核が陽子を次々に捕獲し、陽子過剰な重い原子核へ進む反応の流れです。伴星から物質を取り込む中性子星の表面が高温になった際に働き、タイプI X線バーストのエネルギー放出と元素合成に関係します。
●NiCuサイクルは存在すると確認されたのですか?
今回の計算では、NiCuサイクルが成立する条件があり、その分岐の強さは38%未満と制約されました。サイクルの強さは温度や密度、競合する複数の反応率に依存するため、影響の全体像を定めるには追加の実験が必要です。
●今回の成果から中性子星の半径や質量が分かるのですか?
今回の測定だけで半径や質量が決まるわけではありません。X線バーストの光度曲線をモデル化する際の核反応率の不確実性を減らすことで、将来の観測と理論モデルの比較を改善する成果です。
●59Cu(d,n)60Zn実験では何を測ったのですか?
銅59が重陽子から陽子を受け取り、中性子を放出して亜鉛60になる陽子移行反応を利用しました。生成された亜鉛60の励起準位や分光学的因子を調べ、天体環境で起きる59Cu(p,γ)60Zn反応率の計算を制約しました。
元記事: Surrey Physicists Replace Theory With Data on Two Stellar Explosion Reactions
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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