多発性骨髄腫の生存期間は3年から15年超へ パティ・スキャルファの寛解と治療の進化

2026年8月6日 12:39

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記事提供元:Tech Times

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かつて全生存期間の中央値が3年だった多発性骨髄腫は、適切な治療を受けることで15年以上生存できる患者もいる病気へと変化している。ブルース・スプリングスティーンの妻であるパティ・スキャルファの寛解発表は、治療を取り巻く状況がいかに劇的に変わったかを示す、これまでで最も注目を集めた事例の一つだ。

76歳のブルース・スプリングスティーンは8月1日、毎年恒例のパン・マス・チャレンジ(PMC)に集まった数千人の参加者に向け、事前収録したビデオメッセージでこの知らせを伝えた。PMCは、ボストンのダナ・ファーバーがん研究所におけるがん研究と治療を支援する、マサチューセッツ州の自転車チャリティーイベントである。「ご存じの通り、パティは8年以上にわたり多発性骨髄腫を抱えて生きてきました。しかし、ありがたいことに、今は寛解しています」とスプリングスティーンは参加者に語りかけた。この事前収録された発表が数千人のサイクリストと数百万人の視聴者に届いたことは、ロック界で最もよく知られた家族の一つにとって、骨髄腫との闘いがいかに切実で個人的なものであったかを物語っている。

73歳のスキャルファは2018年に早期の多発性骨髄腫と診断され、2024年9月のドキュメンタリー『Road Diary: Bruce Springsteen and the E Street Band』で明らかにするまで、6年間にわたって診断を公表していなかった。今回の寛解は、臨床医がこの病気について、かつてはあり得ないように思われた「治癒」という言葉を使い始めようとしている時期に発表された。

■42年越しの返事

今回の出演には思いがけない背景があった。PMCの創設者で会長を務めるビリー・スターは、1984年、スプリングスティーンが『Born in the U.S.A.』のワールドツアーで多忙を極めていた年に、ライドへの参加を呼びかける手紙を送っていた。スプリングスティーンは持ち前のユーモアを交えて、「少し遅くなりましたが、こうして参加できました。皆さんとご一緒できてうれしく思います」と語った。

スプリングスティーンはこの機会に、感謝だけにとどまらないメッセージを伝えた。「医学研究は単なる考えではありません。政治でも、予算の一項目でもありません。希望を見つけることが最も難しいときに、家族が希望を見いだせる理由なのです」。アコースティックギターを手にすると、「私の最高のライディングソングの一つ」と紹介した『Born to Run』の弾き語りで締めくくった。

47年目を迎えたPMCは、スキャルファが治療を受けているダナ・ファーバーがん研究所のために、2026年は過去最高となる7900万ドル(約124億8200万円、1ドル=158円換算)の資金調達を目指していた。1980年の創設以来、累計で11億2500万ドル(約1777億5000万円、同レート換算)以上を集めており、米国で最も多くの資金を集める単一のスポーツ慈善イベントとなっている。今年のライドには約6500人のサイクリストと3500人のボランティアが参加し、参加者が集めた寄付金は全額、ダナ・ファーバーに直接提供される。

スプリングスティーンはこの取り組みを自身のキャリアと結びつけ、「私はこれまで、人生から信じる理由をすべて奪われても、なお信じ続ける人々について歌を書いてきました。それはパティと私にとって、常にアメリカの最も素晴らしい姿でした」と語った。

■骨髄腫における「寛解」の本当の意味

この発表はすぐに多くの祝福をもって受け止められた。それに値する知らせでもある。しかし、この病気に直接関わる人にとって重要な区別が一つある。多発性骨髄腫において、「寛解」と「治癒」は同じ意味ではない。

多発性骨髄腫は、骨髄で作られる白血球の一種で、通常は抗体を産生する形質細胞のがんである。形質細胞が悪性化すると、正常な造血組織を圧迫し、機能不全を起こしたMタンパク質を大量に産生する。これにより腎臓が損傷し、骨が弱くなり、免疫機能も抑制される。

近年に至るまで、骨髄腫は慢性的に再発する病気として管理されてきた。治療後に再発すれば再び治療することを繰り返し、目標は根絶ではなく制御に置かれていた。寛解とは標準的な検査でがんを検出できない状態を意味するが、がんが完全に消えたことを意味するものではなかった。完全奏効に達した患者でも、多くは最終的に再発していた。

その現実は今、10年前には考えにくかった形で変わりつつある。メイヨー・クリニックの医学教授で、NCCN多発性骨髄腫ガイドライン委員会の委員長を務めるシャジ・K・クマール医師によると、この分野は初めて、骨髄腫における治癒の正式な定義に近づいている。治療を受けずに、分子レベルで検出不能な状態を5年連続で維持した患者は、治癒した可能性があると表現されるようになっている。「パラダイムは、慢性再発性疾患から、一部の患者については治癒を目指すアプローチへと移行しつつあります」と、クマール医師は2026年6月にThe Cancer Newsへ掲載した分析で記している。

スキャルファの家族は、彼女の寛解が臨床的完全奏効なのか、微小残存病変(MRD)陰性なのか、あるいは別の指標によるものなのかを明らかにしていない。確認されているのは、かつて多くの患者の全生存期間中央値が3年だった病気と8年以上にわたり生きながら、スプリングスティーンが公表を選ぶほど良好な状態にあるということだ。

それだけでも、現在の医療に何が可能になったかを示している。

■3年から15年へ:数字で見る変化

20年前、「多発性骨髄腫の患者はどのくらい生きられるのか」という問いに対する一般的な答えは、当時の全生存期間中央値である約3年だった。現在では、多くの患者の生存期間が「15年を超える可能性がある」とクマール医師は記している。

米国国立がん研究所(NCI)のSEERプログラムによると、米国では年間推定3万6110人が多発性骨髄腫と診断され、同疾患は全がん新規診断の約1.8%を占める。2022年時点では、米国内で約19万2000人が骨髄腫とともに生活していた。NCIのSEERデータによると、5年相対生存率は2000年の34%から62.4%へ上昇している。

死亡率も低下している。Oncotargetに掲載された2026年のSEERデータに基づく分析では、骨髄腫の死亡率は2014年から2021年まで年率1.73%で低下し、2021年から2023年には年率5.64%の低下へと大きく加速した。この低下には、この時期に承認された新たな種類の薬剤の普及が影響した可能性がある。

多発性骨髄腫は依然として女性より男性に多く、非ヒスパニック系黒人の発症率は白人の約2倍である。年齢は最も強いリスク要因で、診断は65歳から74歳の間に最も多い。

■治療革命はどのように起きたのか

骨髄腫の治療成績を変えたのは、前の段階を土台として重なり合うように発展した3つの治療の波である。

第1波は、IMiDとプロテアソーム阻害薬(2000年代から2010年代)である。サリドマイド誘導体のレナリドミドやポマリドミド、プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブやカルフィルゾミブは、骨髄腫細胞が依存するタンパク質分解経路を妨げ、がん細胞を死滅させる。これらの薬剤は従来の化学療法レジメンに代わって使われるようになり、生存期間を大幅に延ばした。患者自身の造血幹細胞を採取、保存し、大量化学療法後に戻す自家造血幹細胞移植と組み合わせることで、多くの患者に数年間持続する奏効をもたらした。

第2波は、抗CD38モノクローナル抗体(2010年代半ばから現在)である。ダラツムマブは、骨髄腫の形質細胞に多く発現するCD38という細胞表面タンパク質を標的とする。CD38に結合して複数の免疫学的な攻撃機構を同時に働かせることで、短期間のうちに、初回治療と再発後治療の多くで中心的な役割を担う薬剤となった。

第3波は現在進行中の免疫療法で、CAR-T細胞療法と二重特異性抗体がその最前線にある。

CAR-T細胞療法では、患者自身のT細胞を採取し、骨髄腫細胞が発現するタンパク質、最も一般的にはBCMAを認識して結合するよう、研究施設で遺伝子改変する。その細胞を数十億個まで増やした後、患者の体内へ戻す。骨髄腫に対してFDAの承認を受けたCAR-T細胞療法には、イデカブタゲン ビクルユーセル(Abecma)とシルタカブタゲン オートルーセル(Carvykti)がある。Carvyktiは、CARTITUDE-4試験で初回再発患者における標準治療を上回る成績が確認された後、初回再発時の治療として承認された。

二重特異性抗体は、T細胞と骨髄腫細胞に同時に結合し、免疫系の攻撃役を腫瘍へ直接引き寄せる新しい種類の薬剤である。TEC-3試験では、骨髄腫細胞のBCMAとT細胞のCD3を標的とするテクリスタマブとダラツムマブの併用により、再発患者の3年無増悪生存率が83%となった。クマール医師はこの結果を「骨髄腫ではこれまで見たことがないもの」と表現している。初回再発時の治療において、画期的な結果といえる。

■4剤併用療法の時代

治療の進化における最新の段階は、2026年1月27日に訪れた。FDAは、幹細胞移植を受けられない新規診断の骨髄腫患者を対象に、ダラツムマブ、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンを組み合わせたD-VRdと呼ばれる4剤併用療法を承認した。

同じ4剤併用療法は、PERSEUS試験に基づき、移植適応のある患者を対象として2024年に承認されていた。2026年1月の承認により、D-VRdは移植適応の有無にかかわらず、すべての新規診断患者に承認された唯一の抗CD38抗体ベースのレジメンとなった。

承認の根拠となったデータは目を引く。クマール医師によると、4剤併用の寛解導入療法に続いて幹細胞移植と維持療法を受けた移植適応患者では、4年無増悪生存率が約85%に達する。20年前に全生存期間中央値が約3年だったことと比べれば、大きな変化である。

移植に耐えられない、より高齢で身体的に弱い患者を対象としたCEPHEUS試験では、標準的なVRdの3剤併用療法にダラツムマブを追加することで、VRd単独と比べて病気の進行または死亡のリスクが40%低下した。

■寛解が約束できること、できないこと

スキャルファがどの治療を、どの施設で、どのような順序で受けたのか、具体的な情報は明らかにされていない。スプリングスティーンが治療先として挙げたダナ・ファーバーは、米国有数の骨髄腫センターの一つで、年間1200件以上の進行中の臨床試験を抱えている。

詳細が公表されていなくても、今回の発表は、早期に診断され、経験豊富な医療機関で現代的なレジメンによる治療を受けた患者が到達し得る結果を示している。8年前、早期の多発性骨髄腫と診断された患者は、それ以前と同様に厳しい生存見通しに直面していた。現在利用できる薬剤や4剤併用療法、微小残存病変(MRD)検査によって分子レベルで病気を測定する技術が、その経過を変えてきた。

MRD検査では、次世代シーケンシングを使い、正常な細胞10万個、あるいは100万個の中にある1個の骨髄腫細胞まで検出する。治療をいつ終了するか、いつ強化するか、そして最終的に、専門医が慎重に「治癒した可能性」と呼ぶ基準に患者が達したかどうかなど、治療方針を決める指標として利用が広がっている。主要な骨髄腫センターでは、MRD検査を治療判断に用いることが標準的な診療になりつつある。

ただし、こうした進歩が病気そのものを消し去ったわけではない。再発は今も起こる。骨髄腫の発症率を巡る人種間格差も解消していない。専門の移植センターへの紹介と数週間の製造工程を必要とするCAR-T細胞療法へのアクセスには、依然として地域差がある。地方に住む患者は、ダナ・ファーバーで治療を受ける患者にはない障壁に直面する可能性がある。

それでも変化の方向は明らかであり、スキャルファの寛解はその現実的な一例である。彼女が2018年に診断されたときの骨髄腫は、2001年当時の骨髄腫とは異なる病気になっている。

■研究資金とその重要性

スプリングスティーンが「医学研究は予算の一項目ではない」と語った背景には、具体的な状況があった。トランプ政権は2026会計年度の米国国立衛生研究所(NIH)の予算を約40%削減する案を示していた。議会はその削減案の大半を退け、最終的には4億1500万ドル(約655億7000万円、1ドル=158円換算)の増額を承認し、2026会計年度のNIH予算を487億ドル(約7兆6946億円、同レート換算)とした。

しかし、こうした不確実性は研究現場に混乱をもたらした。米国国立がん研究所(NCI)の助成金採択率は、2025会計年度中、一時4%まで低下した。研究者25人のうち1人しか資金を得られない水準である。

PMCのプレスリリースは、2026年のライドについて、「連邦政府による研究支援が縮小し、助成金採択率が歴史的な低水準に達し、がん症例が増加し続けている、特に重大な時期」に開催されると説明している。マサチューセッツ州だけでも、新たながん症例は2020年から2024年までに27%増加した。

20年連続で、参加者が集めた寄付金は全額ダナ・ファーバーへ提供されている。企業スポンサーがイベントの運営費を負担することで、この仕組みが可能になっている。

■多発性骨髄腫の現在と5年前の比較

骨髄腫治療の変化の速さは、立ち止まって考えるに値する。2020年から2026年にかけて、FDAは複数の新薬と併用療法を承認した。2種類の異なる抗原を標的とするCAR-T細胞療法、複数の治療を受けた患者で60%を超える奏効率を示す二重特異性抗体、そして2026年1月には、幹細胞移植への適応の有無を問わず使用できる4剤併用レジメンが承認された。これらの承認は、2020年以降の骨髄腫治療を再構築し、わずか5年間で標準治療を根本的に変えた。

SEERの死亡率データは、その累積的な効果を示している。2010年代後半には骨髄腫による死亡率が年約1.7%のペースで低下していたが、SEERのデータでは2021年以降、そのペースが約3倍になった。これはCAR-T細胞療法と二重特異性抗体が日常診療に導入された時期と重なる。

「私たちは、骨髄腫における治癒を正式に定義する入り口に立っていると考えています」と、クマール医師は2026年6月に記している。「現在の患者は、標的抗体、CAR-T細胞、二重特異性エンゲージャーなど、数十年前には利用できなかった幅広い有効な治療を受けられます。こうした治療は、この病気が最初に記載された当時には存在していませんでした」

これが、土曜日に発表されたブルース・スプリングスティーンの知らせを取り巻く科学的な背景である。8年を経て、彼の妻は、彼女がともに生きてきた間に治療環境が根本的に変わった病気の寛解に至った。今年、多発性骨髄腫と診断される約3万6000人の米国人にとって、この変化が意味するものは決して抽象的ではない。

■注目ポイントQ&A

●多発性骨髄腫は治癒可能ですか?

多発性骨髄腫は歴史的に治癒が困難な病気とされ、患者は寛解しても最終的には再発すると考えられてきました。現在、その分類は見直されつつあります。メイヨー・クリニックのシャジ・K・クマール医師をはじめとする専門医は、正常な細胞100万個に1個を検出できる感度の検査で骨髄腫が陰性となり、治療を受けずにその状態を5年連続で維持した患者を、「治癒した可能性がある」とみなす新たな基準を示しています。現代的な4剤併用レジメンによって、この基準に達する患者の割合は増えています。大半の患者にとって依然として治癒可能な病気とはいえませんが、慢性疾患と治癒との境界は、これまでにない形で変わりつつあります。

●多発性骨髄腫の患者にとって「寛解」とは何を意味しますか?

骨髄腫における寛解は、検査の精度によって意味が異なります。「完全奏効(CR)」とは、Mタンパク質を検出できず、標準的な画像検査や骨髄生検でも骨髄腫細胞が確認されない状態です。「MRD陰性」の寛解はさらに深い状態を意味し、通常は、正常な細胞10万個または100万個の中にある1個の異常細胞を検出できる次世代シーケンシングを使っても、骨髄腫細胞を検出できないことを指します。寛解が深く、長く持続するほど、長期的な見通しは良好になります。スキャルファの家族は、現在の状態がどの臨床的定義に当たるのかを明らかにしていません。スプリングスティーンが確認したのは、診断から8年以上を経て彼女が寛解しているということです。これは患者自身の力と、利用可能な骨髄腫治療の進歩の双方を反映した結果です。

●2026年現在、利用可能な最新の多発性骨髄腫治療は何ですか?

2026年現在、新たに診断された多くの骨髄腫患者に対する標準的な初回治療は、ダラツムマブという抗CD38抗体と、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンを組み合わせたD-VRdと呼ばれる4剤併用レジメンです。FDAは2026年1月、幹細胞移植を受けられない患者を含むすべての新規診断患者を対象として、この併用療法を承認しました。再発した患者には、FDA承認済みのAbecmaとCarvyktiという2種類のCAR-T細胞療法や、テクリスタマブ、タルケタマブ、エルラナタマブなどの二重特異性抗体があります。TEC-3試験で、初回再発患者にテクリスタマブとダラツムマブを併用した際の3年無増悪生存率が83%となったことは、近年の骨髄腫治療における重要な成果の一つです。治療方針を決める際に利用が広がっているMRD検査については、担当の腫瘍医に相談してください。

●現在、多発性骨髄腫の患者はどのくらい生きられますか?

その答えは大きく変わりました。20年前、骨髄腫と診断された後の全生存期間中央値は約3年でした。現在、現代的な4剤併用レジメンに続いて幹細胞移植と維持療法を受けた患者では、4年無増悪生存率が85%に達しています。また、専門医は、多くの患者の生存期間中央値が15年を超える可能性があるとみています。5年相対生存率も、2000年の34%から62.4%へ上昇しました。これらの数値には、さまざまな医療環境と病期で治療を受けた患者が含まれています。専門施設で治療を受けた患者、特に主要な臓器に障害が生じる前に早期発見された患者では、さらに良好な結果となる可能性があります。

元記事: Patti Scialfa Is in Remission: Multiple Myeloma Survival Has Risen Fivefold in 20 Years

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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