遅発性精神病患者の約3分の2にタウタンパク質の蓄積―QST・京大研究

2026年8月4日 23:15

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40歳以降に初めて幻覚や妄想を発症する「遅発性精神病」の患者の約3分の2で、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患に関係するタウタンパク質が脳内に蓄積していることが、量子科学技術研究開発機構(QST)と京都大学の研究チームによる特殊な脳スキャンで初めて確認された。この発見は、精神疾患とみられてきた症状の一部が、実際には未発見の神経変性疾患の初期段階である可能性を示している。現時点では承認された治療法や標準的な診断スキャンは存在しないが、将来的なバイオマーカーに基づく早期介入に向けた重要な一歩となる。

■遅発性精神病とタウタンパク質の関連性が明らかに

40歳以降に初めて幻覚や妄想を発症した患者の脳内に、アルツハイマー病などに関係するタウタンパク質が蓄積していることを、研究者らが生きた患者を対象とする特殊な脳スキャンによって初めて明らかにした。本日(2026年8月4日)、学術誌『Molecular Psychiatry』に掲載されたこの発見は、これまで十分に解明されていなかった精神疾患の症候群が、多くの場合、神経変性疾患の初期段階である可能性を示すものだ。量子科学技術研究開発機構(QST)と京都大学の研究チームが主導したこの研究では、遅発性精神病患者の約3分の2にタウ病理が認められた。同年代の健康な対照群における割合は約15%であり、タウ病理が認められる割合には約4倍の差があった。

中年期以降に初めて精神病エピソードを発症する世界中の数百万人と、その原因を理解しようとする臨床医や家族にとって、この発見は重要なメッセージを含んでいる。精神疾患のように見えるものが、多くの場合、未発見の脳疾患である可能性があり、現在、その疾患に対する承認済みの治療法や標準的な診断スキャンは存在しないということだ。

タウは構造タンパク質であり、健康な神経細胞では、脳細胞の生存や細胞内での物質輸送を支える内部の足場である「微小管」を安定させる役割を持つ。タウオパチーと総称される疾患群では、タウが過剰にリン酸化され、本来は持たない化学的な修飾を蓄積する。その結果、微小管を支える役割から外れ、異常な構造に折り畳まれて凝集し、神経回路を徐々に損なう神経原線維変化を形成する。アルツハイマー病は最も一般的なタウオパチーだが、それだけではない。進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒病(AGD)、ピック病、前頭側頭葉変性症(FTLD)もタウオパチーに含まれ、それぞれ標準的な脳スキャンでは区別できない固有の分子的特徴を持っている。

正式な認知症の診断を受けていない患者において、タウが精神症状の発生に直接関与しているかどうかは、これまで極めて不明確だった。従来の証拠は、死後の脳を調べる研究と、遅発性精神病患者が著しく高い割合で認知症へ進行することを示す人口統計に限られていた。超遅発性統合失調症様精神病の患者1万5,409人を対象としたスウェーデンの人口コホート研究では、認知症発症のハザード比が4.22(95%信頼区間4.05~4.41)と約4倍高く、認知症と診断されるまでの期間の中央値が、対応する対照群より75%短かった。しかし、人口統計上の関連は直接的な証拠ではない。今回のQSTと京都大学による研究は、生きた患者における生体内画像の証拠を初めて提示した点で、従来とは異なる水準の証拠となる。

■新技術「florzolotau」がもたらしたブレイクスルー

この研究を可能にしたのは、QSTと商業パートナーのAPRINOIA Therapeuticsが開発したPET用放射性トレーサー「18F-florzolotau」である。「18F-PM-PBB3」または「18F-APN-1607」とも呼ばれる。このトレーサーの重要性を理解するには、従来のタウPETトレーサーに何ができないのかを知る必要がある。

第1世代のタウトレーサーである18F-flortaucipir(AV-1451、商品名Tauvid)は、アルツハイマー病型のタウ病理を検出する目的でFDA(米食品医薬品局)の承認を受けている。しかし、4Rタウへの結合能力が限られているため、PSP、CBD、AGDに見られる純粋な4リピート型(4R)タウのアイソフォームを十分に画像化できない。18F-MK-6240や18F-PI-2620などの第2世代トレーサーは、3リピート型と4リピート型のタウを検出する能力が改善されているものの、純粋な4Rタウオパチーを臨床的な鑑別に必要な感度で検出するには至っていない。

18F-florzolotauは、アルツハイマー病やピック病に特徴的な3Rタウ、PSP、CBD、AGDに特徴的な純粋な4Rタウ、アルツハイマー病型の神経原線維変化に見られる3R・4R混合型タウを含む、主要なタウアイソフォームに結合する。また、第1世代トレーサーよりもMAO-B酵素へのオフターゲット結合が少なく、偽陽性シグナルを抑えられる。本研究で特に重要なのは、精神病患者に見られるタウがアルツハイマー病型なのか、それとも別の神経変性疾患群に属するのかを明らかにできるトレーサーだという点である。従来のタウトレーサーでは、この問いに明確に答えることができなかった。

この研究では、タウを検出する18F-florzolotau PETと、アルツハイマー病のもう一つの特徴的なタンパク質であるアミロイドベータを検出する11C-PiB PETを組み合わせた。同じ患者に両方のスキャンを実施することで、研究者らはタウ陽性の患者を、アミロイドの蓄積も伴う患者、すなわちアルツハイマー病型のパターンと、アミロイドを伴わない患者に分けることができた。この区別は、治療を考えるうえで極めて重要な意味を持つ。

■タウ陽性患者の約半数が非アルツハイマー型を示唆

研究チームは、37人の患者と47人の健康な対照者を対象に、18F-florzolotau PETとアミロイドベータ(Aβ)PETの結果を比較した。患者群は、統合失調症スペクトラム障害や妄想性障害を含む遅発性精神病の患者で構成され、平均年齢は69.9歳だった。年齢と性別を調整した多変量共分散分析の結果、脳の頭頂葉皮質におけるタウの取り込みに有意差が認められた(p=0.004)。遅発性精神病患者では、頭頂葉皮質のシグナルが最も高かった。この差は、解析対象をアミロイド陰性患者だけに限定しても統計的に有意だった(p=0.002)。このことは、この患者群のタウ病理を、偶然併存したアルツハイマー病だけでは説明できないことを意味する。

京都大学のプレスリリースによると、遅発性精神病患者の約65%に検出可能なタウ沈着が見られたのに対し、健康な対照群では約15%で、割合には約4倍の差があった。タウ陽性患者は、アミロイドの蓄積も伴うアルツハイマー病型の患者と、アミロイドを伴わない患者にほぼ半数ずつ分かれた。これは、タウ陽性の精神病患者の約半数では、精神症状の背景にアルツハイマー病以外の神経変性疾患が存在する可能性を示唆している。

非アルツハイマー型のタウ病理には、AGD、PSP、CBD、前頭側頭葉変性症などが含まれる可能性がある。これらはいずれも、運動症状が現れる前に精神症状を引き起こす可能性があり、通常の臨床評価では検出されないことのあるタウオパチーである。

■アルツハイマー型と非アルツハイマー型の区別が持つ意味

多くの遅発性精神病患者に、アミロイドを伴わないタウ病理、いわゆる非アルツハイマー型タウオパチーが認められたことには、数字だけでは十分に表せない臨床上の重要性がある。

現在、臨床試験中の抗タウ療法は、主としてアルツハイマー病のモデルに基づいて設計されている。アルツハイマー病を対象とする第2相試験でタウの減少と認知機能上の利益を示したとされるdiranersen(BIIB080)は、アンチセンスオリゴヌクレオチドによってタウの産生を抑えることを目指す。この仕組みは非アルツハイマー型タウオパチーにも応用できる可能性があるが、これらの疾患ではまだ検証されていない。PSP、CBD、AGDについては、現在、承認済みの疾患修飾治療法は存在しない。

遅発性精神病が非アルツハイマー型タウオパチーによって引き起こされている患者の場合、標準的な精神科治療である抗精神病薬は症状に対処するものの、背景にある神経変性そのものには作用しない。診断が1カ月遅れるたびに、将来は治療可能になるかもしれない進行性の生物学的プロセスが、抑えられないまま進むことになる。

■診断や治療を受けていない可能性がある患者

40歳以降に初めて精神病エピソードを発症する遅発性精神病は、まれな状態ではない。統合失調症症例の約23.5%は40歳以降に初めて発症し、45~64歳の成人における統合失調症の1年間の有病率は約0.6%である。この割合を同年齢層の米国人口に当てはめると、任意の時点で数十万人が該当する計算になる。

こうした数字にもかかわらず、京都大学のプレスリリースによると、中年期に発症した精神病患者のうち、何らかの治療を受けている人は約4分の1にすぎず、大多数は診断や支援を受けないまま地域社会で暮らしている。その背景には構造的な理由もある。高齢者に遅れて現れた精神症状は、社会的孤立、感覚機能の低下、通常の加齢などによるものと誤認されることがある。また、適切な専門医への紹介につながるバイオマーカーツールが存在しないことも理由の一つである。

■神経変性疾患の「前駆期」としての遅発性精神病

遅発性精神病と、その後の認知症との疫学的な関連は、すでに十分に確立されていた。超遅発性統合失調症様精神病の患者1万5,409人を対象としたスウェーデンの人口コホート研究では、この状態にある人の認知症発症に関するハザード比は4.22(95%信頼区間4.05~4.41)だった。また、認知症と診断されるまでの期間の中央値は、対応する対照群より75%短く、認知症発症率の上昇は最長20年間の追跡期間を通じて持続していた。

その研究で答えられなかったのは、なぜ両者が関連するのかという点である。今回のQSTと京都大学のデータは、直接的な生物学的機序の候補を示している。精神疾患と診断されている段階で、すでに患者の脳内にタウ病理が蓄積しているということだ。精神病とは無関係な別の疾患として後から認知症が現れるのではなく、かなりの割合の患者では、両者が共通する基盤を持つ可能性がある。

このような段階は「前駆期(prodrome)」と呼ばれる。完全な症候群が現れる前に、生物学的な疾患プロセスが進み、認識可能な症状を引き起こしている期間を指す。中年期の精神病をタウオパチーの潜在的な前駆期として捉えることで、診断上の新たな機会が生まれる。将来、バイオマーカーに基づく介入によって、理論上は疾患の進行を変えられる可能性がある期間だ。現時点では、その期間に用いる治療法は存在しない。しかし、標的となる生物学的変化と、それを持つ患者を特定できる脳スキャンが示された。

■血液検査の可能性と今後の課題

PET画像検査は高額で専門的な設備を必要とし、多くの臨床現場では利用できない。また、18F-florzolotauは現在FDAの承認を受けておらず、研究用ツールにとどまる。一方、アルツハイマー病を対象とする血液中のp-tau217検査は、一部の集団でアミロイドPETに匹敵する性能を示す段階に達している。その開発過程は、今後どのような展開が可能かを考えるうえで参考になる。

血漿中のリン酸化タウマーカーやその他の血液バイオマーカーを、今回のような研究で得られる18F-florzolotau PETのデータに照らして評価できれば、将来、比較的安価な血液検査が、中年期に新たに精神病を発症した患者のタウオパチーを調べる初期スクリーニングとして機能する可能性がある。その実現は数年先とみられるが、QSTと京都大学の研究は、将来の血液検査を検証する際の基準となる生体内データを提供する。

ただし、いくつかの重要な留意点がある。この研究に参加した患者は37人だった。概念実証として意味のある規模ではあるものの、臨床診断の手順を変更するには、より大規模な多施設共同研究による再現が不可欠である。また、横断研究であるため、タウ病理が精神症状を引き起こしたのか、両者に共通する上流の生物学的要因があるのか、あるいは精神症状がタウの拡大を加速させるのかは、このデータだけでは判断できない。遅発性精神病患者のタウバイオマーカーを調べる米国の別の試験(NCT06336382)では長期追跡が進められており、これらの疑問に答えるには縦断的な研究が必要である。

また、この研究では精神病患者の約35%から検出可能なタウが見つからなかった。これは、遅発性精神病がほぼ確実に多様な病態を含むことを示している。神経変性病理を持つ患者がいる一方で、より純粋に精神医学的な経過をたどる患者もいると考えられる。

18F-florzolotau自体は研究用ツールであり、いずれの規制当局からも臨床診断用として承認されていない。この研究は、この技術を適用することで何が見えるようになるかを示したものであり、臨床医が現時点で通常の診療として依頼できる検査ではない。

この研究は、京都大学大学院医学研究科の窪田学博士と、QSTの高畑圭輔博士が主導し、慶應義塾大学、東京理科大学、国立病院機構の共同研究者が参加した。論文は本日、『Molecular Psychiatry』誌に掲載された。

■注目ポイントQ&A

●中年期に始まる幻覚や妄想は、アルツハイマー病の兆候になり得ますか?

その可能性はあります。今回、その可能性を裏付ける直接的な脳スキャンの証拠が示されました。QSTと京都大学の研究では、複数の種類の神経変性タウ病理を検出できるPETトレーサーを使用し、40歳以降に初めて精神病エピソードを発症した患者の約3分の2にタウタンパク質の蓄積を確認しました。タウ陽性患者の約半数では、アルツハイマー病のもう一つの特徴であるアミロイドベータの蓄積も認められました。一方、残りの約半数ではアミロイドを伴わないタウが認められ、非アルツハイマー型タウオパチーの可能性が示唆されました。この結果は、遅発性精神病のすべてがアルツハイマー病であることを意味しません。研究に参加した患者の約35%では、検出可能なタウが見つかりませんでした。ただし、40歳以降に初めて幻覚や妄想を発症した患者では、バイオマーカー評価を含む神経学的評価を検討する価値があることを示しています。

●汎タウオパチーPETトレーサーとは何ですか?また、なぜこの研究で重要なのですか?

FDAによって承認されているflortaucipir(Tauvid)などの標準的なタウPETトレーサーは、主としてアルツハイマー病型のタウ、すなわち神経原線維変化に含まれる3R・4R混合型タウを検出するよう設計されています。これらのトレーサーは、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、嗜銀顆粒病に見られる純粋な4リピート型(4R)タウ病理に対する感度が限られています。この研究で使われた18F-florzolotauは、3Rと4Rの両方のタウアイソフォームに高い親和性で結合します。このため、精神病患者に見られるタウがアルツハイマー病型なのか、それとも別の疾患カテゴリーに属するのかを明らかにできるトレーサーです。この区別は、将来どのような治療が適切になり得るかを考えるうえで重要です。

●タウ病理を伴う遅発性精神病の患者には、どのような影響がありますか?

現時点では、診療が直ちに大きく変わるわけではありません。ほとんどの非アルツハイマー型タウオパチーに対して承認された疾患修飾治療法はなく、18F-florzolotauも医師が通常の診療で依頼できる臨床検査ではないためです。背景にタウオパチーがある遅発性精神病の患者も、通常は精神症状に対処する抗精神病薬で治療されますが、この治療は神経変性プロセスを遅らせるものではありません。今回の研究は、新たな治療標的を考えるための生物学的な根拠を示しました。diranersenなどのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含め、アルツハイマー病を対象に試験中のタウ標的治療は、将来的に他のタウオパチーへ応用する候補となる可能性があります。ただし、その実現は数年先です。患者や家族が現時点でできることは、長期的なリスクの上昇を踏まえ、神経学的評価や認知症のモニタリングについて担当医と話し合うことです。

●この種のタウ病理に対する血液検査は将来実現しますか?

実現する可能性はあります。アルツハイマー病を対象とする血液中のリン酸化タウ検査は、現在、一部ではPETスキャンに近い精度を示しています。その技術開発の道筋は、今回のような研究から先に進むための参考になります。18F-florzolotau PETによって、遅発性精神病患者のうち誰が有意なタウ蓄積を持つかを識別できれば、そのPETデータを基準として評価された血液中のタウマーカーが、将来、プライマリケアでの初期スクリーニングに利用できる可能性があります。実現には長期追跡を伴う、より大規模な研究が必要であり、おそらく数年を要します。今回の研究が生み出す生体内データは、将来の血液検査を検証する際に必要な基準となります。

元記事: Brain Scans Find Alzheimer’s Tau Protein in Two-Thirds of Late-Onset Psychosis Patients

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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