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中国、「国網」衛星の配備を加速 ITU期限迫るなか軍民両用の可能性に注目
中国は、ブロードバンド通信に加え、情報・監視・偵察(ISR)に利用できる機能も備えている可能性が指摘される巨大衛星コンステレーション「国網(GuoWang)」の構築を急いでいる。2026年末までに310基を配備する目標を掲げているが、7月下旬時点の稼働数は約177基にとどまり、目標達成には打ち上げペースの大幅な引き上げが必要となる。国際電気通信連合(ITU)の7年マイルストーンを迎える2027年後半が近づくなか、衛星の製造能力が計画に追いつくかどうかが重要な焦点となる。
■打ち上げペースの加速と目標への遅れ
長征8号Aロケットは、8月4日(火)08時44分(協定世界時、日本時間同日17時44分)ごろ、文昌商業宇宙発射場から打ち上げられ、国網のブロードバンド・メガコンステレーション衛星9基を地球低軌道へ投入する予定だ。Space Launch Scheduleは、このミッションについて、商業第1発射施設(Commercial LC-1)からの「Go For Launch」、すなわち打ち上げ実施可能な状態と記載している。このミッションは、中国が自ら公表した目標からすでに遅れている配備計画を加速させる新たな一歩となる。同時に、中国政府がStarlinkに対抗するブロードバンド網として位置付けるこのコンステレーションが、そもそもブロードバンドを主目的とする計画なのかどうかについて、独立系アナリストの疑問が強まるなかでの打ち上げでもある。
中国の国網衛星を追跡する包括的なトラッカーによると、7月下旬時点で地球低軌道にある稼働中の国網衛星は約177基である。12月31日までに310基とする年間目標を達成するには、中国の国有コンステレーション運営会社は今後約5カ月で少なくとも133基を追加で打ち上げる必要がある。現在の配備ペースを前提とすると、2026年の最初の7カ月における月平均打ち上げ数を3倍近くに引き上げなければならない。この増強はロケットの確保だけでなく、中国がこれまで公表していない衛星製造ラインの生産能力にも左右される。
■長征8号A:高頻度配備に特化した設計
長征8号Aは、国網の継続的な配備を支える主力ロケットである。その設計を見れば、国網の現在の配備ペースがどのような条件に左右されているかが分かる。標準型の長征8号を改良した8Aは、第1段とサイドブースターを従来型と共用する一方、新設計の直径3.35メートルの液体水素・液体酸素第2段と、直径5.2メートルに拡大したペイロードフェアリングを採用している。特に重要なのが大型フェアリングで、従来の長征シリーズが搭載していた小規模な衛星群よりも多い9基の国網衛星を、1基のロケットにまとめて収容できる。
長征8号の技術仕様によると、8Aは全長50.5メートル、打ち上げ時の重量は371トンで、総推力は約480トン重である。第2段には、長征5号で使われるYF-75Dを改良したYF-75Hエンジンを2基搭載する。各エンジンはターボポンプの回転速度を高めることで、10トン重の推力を発生する。高度700キロメートルの太陽同期軌道に最大7トンのペイロードを投入できる。
長征8号Aは、運用開始からの期間こそ短いものの、これまでの全飛行を成功させている。中国航天科技集団(CASC)は2026年1月の国網衛星打ち上げ後、打ち上げ準備工程の継続的な最適化により、前回のミッションから18日後に次のミッションを実施できたと説明した。中国運載火箭技術研究院は、最近導入した複数ミッションを並行して準備するための設備により、2026年中に長征8号Aの年間打ち上げ回数を2桁にできるとの見通しを示している。8月4日のミッションはその目標を前進させるが、完全に実現できるかどうかは、ロケットの準備状況だけでなく衛星の生産にも依存する。
■国網衛星が実際に搭載しているもの
コンステレーションの名称である国網は、文字通り「国家ネットワーク」を意味する。運営主体は、2021年4月に設立された国有企業の中国衛星網絡集団(China SatNet)で、中国の主要国有企業を監督する国務院国有資産監督管理委員会(SASAC)の直轄下に置かれている。中国は2020年9月、国際電気通信連合(ITU)に国網コンステレーションを申請し、2つのサブコンステレーション、合計12,992基について周波数の割り当てを届け出た。内訳は、高度500~600キロメートルに6,080基を配備するGW-A59と、高度約1,145キロメートルに6,912基を配備するGW-2である。
これまでの打ち上げはすべて、より高度の高いGW-2シェルを対象としている。Starlinkの主要な運用高度に最も近く、低遅延が期待できる低高度のGW-A59シェルについては、まだ配備ミッションが実施されていない。
国網衛星が実際に何を搭載しているかについては、独立系の分析者による検証が進んでいる。SpaceNewsが2026年1月に報じたところによると、国網衛星は、ブロードバンド専用の機器だけでは説明しにくいほど質量が大きいと推定されており、航法、リモートセンシング、宇宙状況把握に関連するペイロードも搭載している可能性がある。The Space Reviewによる国網の分析では、中国の国有情報源が、コンステレーションのペイロードにブロードバンド、レーザー通信、合成開口レーダー(SAR)、光学リモートセンシングが含まれると説明したことが紹介されている。SARと光学リモートセンシングは、消費者向けブロードバンドとは異なり、ISR、すなわち情報・監視・偵察に利用できる機能である。
国網の初期衛星群の軌道データを分析した独立系衛星トラッカーKeepTrackは、衛星の質量特性がブロードバンド専用衛星とは整合しないと結論付けた。寸法、質量、発電能力など、衛星の製造仕様はCASCやChina SatNetから公表されていない。これは、2024年12月の初打ち上げ以降、計画全体を取り巻いてきた運用面の不透明さとも一致する。
したがって、長征8号Aによる国網ミッションを、薄型のブロードバンド衛星を搭載するSpaceXのFalcon 9によるStarlink打ち上げと単純に同一視することはできない。8月4日に打ち上げられる9基が、これまでの国網衛星と同様の構成であるなら、ブロードバンドだけでなく、中国の軌道上ISR基盤の構築につながるペイロードも搭載している可能性がある。配備先の高度1,145キロメートルは、Starlinkが運用される高度530~550キロメートルよりも大幅に高く、その高度によって広い範囲を継続的に観測しやすいという特性を持つ。
■中国は自らの目標を実際に達成できるのか
計画されている配備数の増加幅は大きい。中国のコンステレーションを追跡する包括的なトラッカーによると、China SatNetが公表したスケジュールでは、2026年に310基、2027年に900基、2028年以降は年間3,600基を配備することになっている。計画を追跡する包括的な独立系モニターが7月下旬に更新したデータによると、2024年12月の計画開始からこれまでに打ち上げられた国網衛星は約177基である。
8月4日のミッションが計画通り実施されれば、9基が加わり、累計は約186基となる。12月31日までに310基へ到達するには、その後約4カ月半で少なくとも124基を追加で打ち上げなければならない。長征8号Aが1回に9基を搭載することを考えると、年末までに同ロケットによる専用ミッションが少なくともあと14回必要になる計算だ。さらに、過去に国網衛星の打ち上げに使われた長征12号、長征6号A、長征5号Bによる打ち上げも必要となる。
KeepTrackの分析によると、高頻度のコンステレーション配備を想定して設計された長征8号Aは、現在の設備でも理論上は年間最大16回の打ち上げが可能で、これを24回まで増やす取り組みも進められていると報じられている。しかし上限の24回に達したとしても、長征シリーズのほかのロケットや商業ロケット事業者による並行ミッションがなければ、長征8号Aだけで必要な配備ペースを満たすことはできない。
衛星の生産能力という制約は、打ち上げ頻度以上に解決が難しい可能性がある。長征8号Aによる各ミッションには9基の衛星が必要で、打ち上げ前にすべての製造、試験、文昌への輸送を完了していなければならない。中国は自動化された生産ラインや新たな製造施設に投資してきたが、国網衛星の実際の生産能力を示す公開データは存在しない。独立系の配備目標分析によると、2028年に年間3,600基という目標を達成するには、毎日約10基の衛星を完成させて出荷する必要がある。これと比較すれば、実現までに数年にわたる工場投資を要したSpaceXのコンステレーション拡大でさえ、相対的に緩やかに見える規模である。
2026年の年間目標とは別に、さらに厳しい外部期限がある。中国が2020年9月に行った申請から起算するITUの7年マイルストーンでは、申請した衛星数のうち所定の最低割合が、2027年後半ごろまでに運用されていることをChina SatNetが示す必要がある。現在の進捗、すなわち2026年半ばまでに軌道上の衛星が約190基という水準を前提にすると、中国はこの基準に近づくため、2027年の目標である900基の大部分を予定通り打ち上げ、運用を開始しなければならない。2026年の遅れは、そのまま2027年の計画に重くのしかかる。
■法的枠組み:中国法が要求するもの
国網を運営する中国衛星網絡集団は、中国法の適用を受ける国有企業である。2017年施行の中国国家情報法第7条は、すべての組織と国民に対し、国家情報活動を支持、支援し、これに協力するよう求めている。データセキュリティ法(2021年)とサイバーセキュリティ法(2017年)は、衛星運営会社を含む中国の事業体が収集または送信するデータをどのように取り扱うか、またどのような場合に政府へアクセスを提供する必要があるかについても規定している。これらは特定の疑いが生じた場合に限って発生する義務ではなく、恒常的に適用される要件である。
中国の国有情報源が説明するように、国網がブロードバンドに加えてレーザー通信、SAR、光学リモートセンシングのペイロードを搭載しているのであれば、こうした法的条件の下で、中国政府はISR機能を持つ衛星ネットワークに継続的にアクセスできることになる。これは、具体的な商用サービスが開始されるかどうかや、消費者が実際に加入するかどうかとは別の問題である。
■中国の2026年における宇宙打ち上げ計画
8月4日の国網ミッションは、中国が進める大規模な宇宙打ち上げ計画の一部である。中国の宇宙開発動向を扱ったSpaceNewsの報道が引用したCAS Space創業者のYang Yiqiang氏によると、中国は2026年に約140回の軌道打ち上げを計画している。これは2025年に記録した過去最多の93回から52%の増加となる。2026年3月末までに、中国はすでに34回の軌道打ち上げを成功させ、米国を除くすべての国を上回っていた。
TechTimesによるコンステレーション打ち上げの分析では、中国の2大コンステレーションである国網と、上海を拠点とする競合計画「千帆(Qianfan、Thousand Sails)」が、2025年に合わせて推定45回の打ち上げを必要とし、2026年には70回以上を占めると予測されている。これは中国が計画する年間打ち上げ回数の約半分に当たり、メガコンステレーションの配備が中国の宇宙産業全体の打ち上げ日程を大きく左右するようになったことを示している。
打ち上げ急増を支えているのが、中国の宇宙インフラの拡張である。SpaceNewsによるインフラ関連の報道が伝えているように、海南島・文昌の商業発射施設、酒泉の国有宇宙基地、山東省海陽で拡張が進む沿岸の海上打ち上げ拠点が、それぞれコンステレーション配備計画の一部を担っている。
独立系の分析によると、このペースを部分的に後押しした地政学的要因の一つが、ウクライナの軍事作戦を支えるためにStarlinkが広範かつ効果的に利用されたことである。これは中国の国防当局にとって想定外であり、ブロードバンドサービスと軍事面での強靱性を併せ持つ独自のコンステレーション基盤を開発する戦略的優先度を高めたとされる。
Starlinkは現在、地球低軌道に9,000基を超える衛星を持ち、主要な運用シェルである高度530キロメートルと550キロメートルは相当程度まで衛星が配備されている。orbitalradar.comによる国網の配備分析では、中国が高度1,145キロメートルのGW-2シェルを優先し、低高度のGW-A59シェルを後の配備段階に回した判断には、低軌道の混雑に加え、高高度のシェルが広域ISRにもたらす異なる性能特性が部分的に影響しているとされる。
■中国は軌道上インターネット競争に勝っているのか
12,992基という計画数は実際に示されており、ITUへの申請も行われている。配備も現実に進んでいるが、その状況は「中国がStarlink 2.0を構築している」という単純な説明では捉えきれない。2026年7月下旬時点で、国網の衛星数は年間目標310基に対して約177基だった。一方、Starlinkは同じ時点までに9,000基を超える運用衛星を持ち、世界各地の数百万人の契約者に商用ブロードバンドを提供していた。
中国が2028年から年間3,600基というペースを実現できるかどうかは、衛星製造を大幅に変革できるかにかかっている。このペースは2030年代初頭までにコンステレーションを完成させるために必要とされるが、求められる規模の生産体制がすでに構築されつつあることを示す公開情報はない。長征8号Aは、信頼性が高く、運用効率の改善が続くロケットであることを示している。8月4日のミッションは衛星数を増やし、打ち上げペースを維持するとともに、ロケット計画が順調に機能していることを示すだろう。しかし、より重要なのは、そのロケットに載せる衛星を製造する工場が同じペースで稼働できているかどうかであり、中国はこの点を公表していない。
米国とその同盟国の政策立案者、アナリスト、衛星業界の関係者にとって、戦略上より重要なのは、国網が最終的にブロードバンドサービスを提供するかどうかではない。提供する可能性もあれば、提供しない可能性もある。より重要なのは、SAR、レーザー通信、光学リモートセンシングのペイロードを搭載し、情報活動への恒常的な協力義務を負う国有企業が運営し、高度1,145キロメートルから広域を継続的にカバーできる軌道ネットワークが、主として商業インフラ計画なのか、それとも商業計画として位置付けられた国家の防衛・情報資産なのかという点である。
■注目ポイントQ&A
●国網とは何ですか、またStarlinkとどう違うのですか?
国網は、中国衛星網絡集団が政府の直接的な監督下で運営する国有のブロードバンド・メガコンステレーションです。中国は2020年9月、2つの軌道シェルに合計12,992基を配備する計画を申請しました。2026年7月下旬時点で打ち上げられた衛星は約177基です。一方、Starlinkは9,000基を超える運用衛星を持ち、世界各地の有料契約者にサービスを提供しています。国網は、いずれの市場でも商用ブロードバンドサービスを発表していません。消費者向けサービスでStarlinkと最も直接的に競合する低高度のGW-A59シェルには、まだ衛星が配備されていません。
●国網は軍事衛星システムですか?
China SatNetは国網を商用ブロードバンドサービスとして位置付けています。しかし、SpaceNewsの報道とKeepTrackによる独立した質量分析は、国網衛星がブロードバンド専用の衛星としては説明しにくいほど重い可能性を示しています。また、The Space Reviewによる国網の分析は、中国の国有情報源が、ブロードバンドに加えてレーザー通信、合成開口レーダー、光学リモートセンシングのペイロードを搭載していると説明したことを紹介しています。後者の2つは一般に、ISR、すなわち情報・監視・偵察に利用できる機能です。さらに、China SatNetは2017年施行の中国国家情報法の適用を受ける国有企業であり、中国の組織には国家情報活動への協力が法的に求められています。こうした法的条件と衛星の物理的構成を踏まえると、国網は軍民両用のシステムと評価されます。
●中国は2026年の衛星配備目標を現実的に達成できますか?
China SatNetが公表している目標は、2026年末までに国網衛星を310基配備することです。7月下旬時点の稼働数は約177基であり、今後約5カ月で少なくとも133基を追加する必要があります。これは2026年の最初の7カ月における月平均打ち上げ数を、3倍近くまで引き上げることを意味します。そのためには、ロケットの打ち上げ頻度を高めるだけでなく、中国が必要な規模で公表していない衛星生産能力も拡大しなければなりません。KeepTrackやorbitalradar.comの分析では、2026年の310基から2028年の年間3,600基へ増強するには、公開情報からはまだ確認できない規模の産業変革が必要になると指摘されています。2026年の目標を達成できる可能性はありますが、確実ではありません。2028年の年間配備ペースを実現できるかどうかは、さらに不透明です。
●長征8号Aロケットは以前の中国製ロケットと何が違うのですか?
長征8号Aは、高頻度のコンステレーション配備を想定して設計されています。標準型の長征8号に対する主な改良点は、直径3.35メートルの液体水素・液体酸素第2段と、標準型の直径4.2メートルから5.2メートルへ拡大したペイロードフェアリングです。これにより、従来の小規模な衛星群ではなく、1回のミッションで9基の国網衛星を搭載できます。第2段のYF-75Hエンジンは、ターボポンプの回転速度を高めることによって1基当たり10トン重の推力を発生します。高度700キロメートルの太陽同期軌道への最大投入能力は7トンです。2025年後半に文昌へ導入された並行準備用の設備によって、発射施設におけるミッション間の準備期間は最短5日まで短縮され、年間2桁の打ち上げが可能になったとされています。
元記事: China Piles Dual-Use GuoWang Satellites Into Orbit Ahead of ITU Deadline
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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