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火星探査車キュリオシティの車輪損傷、配線ショートを防ぐJPLの「岩で切り離す」対策とは

(Nasa.gov)[写真拡大]
NASAが今週公開した火星探査車「キュリオシティ」のひび割れた後輪の画像は、見る者に不安を抱かせる。しかし、ミッションを終わらせかねない本当の脅威は車輪の破損そのものではなく、支持を失った車輪の内側部分が配線に接触して引き起こすショートである。JPL(ジェット推進研究所)はこの事態を防ぐため、火星の岩を利用して損傷部分を意図的に切り離す対策を開発し、地上試験と手順の文書化を完了している。
■破損ではなく「ショート」が真の脅威
NASAが今週公開したキュリオシティのひび割れた後輪の画像は、見る者に不安を抱かせるものだ。アルミニウム製の薄板部はへこみ、整然と並んでいた突起は、14年間にわたって火星の岩にさらされたことで大きく変形している。しかし、こうした目に見える損傷自体が、火星探査車のミッションを終わらせるわけではない。JPLの車輪摩耗タイガーチームによると、ミッションを終わらせかねないのは、もっと目立たず、かつ具体的な故障である。構造用の突起による支持を失った車輪の内側部分が、車輪アセンブリの内部で不安定に動き、ハブモーターから探査車本体のコントローラーへ伸びる配線に接触することだ。
これが実際に警戒されている故障モードである。問題は単に車輪が壊れることではなく、車輪内部でショートが起きることだ。
JPLは2017年初頭に最初のグルーサー(走行時の牽引力と構造強度を担う突起)が破損して以来、この問題を把握している。その後、物理的な探査車のテストベッドを使って検証し、ショートを防ぐための対策手順を詳細に文書化した。この計画では、尖った火星の岩を使い、損傷した車輪の内側部分を意図的に折り取る。「ツイスト・アンド・シャウト」と「ピジョン・トー」と呼ばれる一連の操作を行い、残った外側3分の1の部分で走行を続ける。JPLはこの状態を「リム付き車輪」と呼んでいる。JPLのマーズヤードで、走行試験用ローバー「スケアクロウ」を使って行われたテストでは、リム付き車輪でもミッションを継続するのに十分な牽引力を維持できることが確認された。
NASAは2026年7月29日、ゲール・クレーターで、これまでに例のないハニカム状の地質学的亀裂が広がる領域を発見したと発表した。このキュリオシティによる重要な発見とともに、ソル4963に当たる7月23日に撮影された、後輪の一つの劣化を示す最新画像も公開された。このタイミングにより、キュリオシティがあとどれほど稼働できるのか、また損傷が悪化した場合にNASAが具体的にどう対応するのかに、改めて注目が集まっている。
■キュリオシティの車輪の構造と問題点
キュリオシティの6つの車輪は、それぞれ直径50センチメートル(19.7インチ)、幅40センチメートル(15.7インチ)で、航空機グレードのアルミニウムの単一ブロックから削り出されている。薄板部の厚さは0.75ミリメートルだ。各車輪の円周には、グルーサーと呼ばれるジグザグ状の突起が19本配置されている。グルーサーは、緩い砂地や岩の多い地面で牽引力を確保するための隆起部分で、高さは約6.35ミリメートル(0.25インチ)である。
この設計は初期試験では十分に機能したが、火星表面には、打ち上げ前のシミュレーションでは完全に再現できなかった特有の危険があった。鋭い縁が上向きに突き出した、地面に埋まっている角張った玄武岩である。2022年の車輪損傷評価によると、着陸から14か月以内に、NASAのエンジニアは薄いアルミニウム製の薄板部に、想定より速いペースで穴や裂け目が生じていることに気づいた。その後、キュリオシティがシャープ山へ向かう途中で特に険しい地形を通過するにつれ、損傷は悪化した。
薄板部は広範囲に劣化しても、直ちに車輪を機能不全に陥らせるわけではない。車輪の構造を支えているのはグルーサーだからだ。各グルーサーは構造的に独立したリブであり、JPLは、1つの車輪でかなりの本数を失っても走行能力には影響しないと判断している。工学的な判断を左右するのは、グルーサーが破損する位置である。破損は一貫して、内側にある補強リングの縁、すなわち車輪の支持された部分が終わり、支持されていない内側3分の2が始まる位置で発生している。
同じ車輪で破損するグルーサーが増えると、車輪の内側3分の2が外側のリムとの結合を失っていく。その段階になると、支持を失った内側部分が横方向に動く可能性がある。しかも、ハブモーターと本体に取り付けられたモーターコントローラーを接続するワイヤーハーネスが、まさにその空間を通っている。配線がショートすれば、その車輪が動かなくなるだけでなく、探査車に搭載された他のモーターの制御システムまで損傷する可能性がある。これが、この故障モードが単なる車輪の破損とは性質の異なる、より深刻な危険である理由だ。
■現在の損傷状況
JPLが公表した直近の詳細な評価は、ジェット推進研究所のアルトゥーロ・ランキン氏らが2022年2月に発表した論文である。同論文では、2021年8月時点でキュリオシティのグルーサーは合計4本破損しており、内訳は左中輪が3本、右中輪が1本だったことが確認されている。また、左前輪、左中輪、右中輪の薄板部に生じた亀裂も記録されている。将来破損する可能性があると推定されたグルーサーは、それぞれ10本、7本、11本だった。
7月23日に撮影されたソル4963のMAHLI(火星ハンドレンズ撮像機)の画像では、後輪の一つに目立った劣化が確認できる。JPLは2026年時点のグルーサー破損数を公表していない。一方、正式な対応を検討する具体的な基準は、1つの車輪で14本のグルーサーが破損した段階である。JPLのモデルでは、現在の走行戦略を続けた場合、この水準に達するのは2034年ごろになると予測されている。
時間の経過とともに見通しが楽観的になった背景には、2つの要因がある。1つ目は、JPLが2017年に導入したトラクションコントロールのソフトウェアアップデートだ。リアルタイムのサスペンションデータを使って各車輪の回転速度を個別に調整し、鋭い岩が車輪の薄板部にかける負荷を軽減する。
2つ目は、より直感に反する要因である。キュリオシティの電源である多目的放射性同位体熱電発電機(MMRTG)は、プルトニウム238の放射性崩壊を利用して発電しているが、発電量は年々わずかに低下する。利用できる電力が減るにつれて、探査車の年間走行距離も短くなる。それが結果として累積的な車輪の摩耗を抑え、損傷が基準に達する時期をさらに先へ延ばしている。
■JPLの計画:岩を見つけて利用する
1つの車輪にある19本のグルーサーがすべて破損するという危機的状態に達した場合、目標は車輪自体を温存することから、内部の配線を守ることへ移る。JPLが開発し、検証した解決策は「ホイール・シェディング」と呼ばれる。支持を失った車輪の内側3分の2を意図的に完全に切り離し、外側の構造用リムを、走行可能な「リム付き車輪」として残す方法である。
なお、正式な対応を検討する基準は14本の破損であり、19本すべての破損は、この切り離しが必要になる危機的な状態を示している。
課題は、キュリオシティに搭載された機器の中に、この作業を目的として設計されたツールがないことだ。そこで、この計画では火星の地形そのものを利用する。JPLのエンジニアが想定する理想的な岩は、地面にしっかり埋まっており、高さが10〜15センチメートル(3.9〜5.9インチ)で、1つか2つの急な面を備え、上部に車輪を引っ掛けられる突起があるものだ。科学ミッションに沿ってキュリオシティが進むルートの特定地点で、これらすべての条件を満たす岩を見つけること自体が、数週間を要する可能性のある運用上の課題となる。
適切な岩が見つかると、一連の操作は2段階で実行される。
第1段階は「ツイスト・アンド・シャウト」と呼ばれ、損傷した車輪を岩の上に載せる。他の5つの車輪を直進させながら、ミッションチームは損傷した車輪を90度ひねるよう指令を送る。回転トルクと固定点として働く岩を組み合わせ、内側の損傷部分に残っている接合部へ逆向きの力を加えて破断させる。これが、内側部分と外側部分を分離するための最初の破断となる。
第2段階の「ピジョン・トー」では、車輪をまっすぐに戻し、再び岩に向かって動かすことによって、ほぼ切り離された内側部分を岩の面に押し付ける。その後、探査車は短い前進と後退を交互に繰り返し、損傷部分を岩に当てながら前後に動かす。接合部に2回目の破断が生じ、内側部分が完全に分離するまで、この操作を続ける。
適切な岩を探す段階から、2つの操作を完了するまでの全工程には、車輪1つにつき1〜2か月かかる可能性がある。すべての手順は実行前に地球上で計画され、検証される。地球と火星の間には片道約20分の通信遅延があるため、それぞれのコマンドシーケンスを事前に完全に作成しておかなければならない。
キュリオシティのモビリティおよびメカニズム・サブシステムを率い、MSL車輪摩耗チームにも所属するJPLのエンジニア、エヴァン・グレイザー氏は2021年、IEEE Spectrumに対し、この手順はスケアクロウのテストベッドで検証済みであり、リム付き車輪でも走行には「おおむね問題ない」と語った。一方で、「実際の探査車では、得られる情報が搭載カメラからのものに限られるため、はるかに難しい」とも述べ、1億マイル離れた場所から複雑な地形上の操作を実行する難しさを説明している。
■キュリオシティの教訓がパーサヴィアランスの車輪を改善
キュリオシティの車輪に生じた問題は無駄にはならなかった。JPLは損傷評価から得られた知見を、マーズ2020「パーサヴィアランス」探査車の車輪の再設計に活用した。グレイザー氏がIEEE Spectrumで説明したところによると、パーサヴィアランスはジェゼロ・クレーターでの活動中に、キュリオシティと同様の損傷を経験していない。
グレイザー氏によると、パーサヴィアランスの車輪には、より多くのグルーサーが狭い間隔で配置されている。これにより、岩の縁がリブの根元に食い込む原因となっていた隙間をなくした。トレッドについても、キュリオシティで使われたシェブロン(山形)パターンをやめ、より単純な形状を採用した。アルミニウム製の薄板部も厚くなっている。打ち上げ前の広範な試験では、新しい設計がキュリオシティの車輪よりも良好に機能し、損傷にも効果的に耐えられることが確認された。
キュリオシティで発生した予期せぬ損傷、車輪摩耗タイガーチームによる分析、そしてパーサヴィアランスの再設計へと続く技術的な系譜は、キュリオシティのミッションがもたらした成果のうち、比較的知られていないものの一つである。キュリオシティの損傷履歴が体系的に研究され、その結果が設計に反映されたことで、次の火星探査車が同じ種類の車輪問題を繰り返すことはない。
■キュリオシティは科学ミッションを完遂できるか
JPL自身の予測に基づけば、短い答えは「イエス」であり、かなりの余裕もある。グレイザー氏らは2022年の論文で、「探査車の予測寿命中に、いずれの車輪も深刻な損傷状態には達しない」と推定している。より適切なルート計画、2017年に導入されたトラクションコントロールソフトウェア、そしてMMRTGの経年変化に伴う走行ペースの低下が組み合わさり、車輪1つ当たり14本のグルーサー破損という基準に達する時期は大幅に先へ延びた。キュリオシティの運用期間中には、この基準に達しない可能性もある。
依然として不確かなのは、予期しない地形上の危険によって、現在の予測を上回る速さで損傷が進む可能性があることだ。キュリオシティは、傾斜が増し、地質学的にも複雑になるシャープ山上部を登っている。探査ルートを決める科学上の目標は、車輪を守るための最も滑らかな経路と常に両立するとは限らない。探査車をある場所へ向かわせる必要がある科学上の要請と、そこを迂回させたい工学上の要請との間にある緊張関係を、車輪摩耗チームは走行のたびに調整している。
キュリオシティは2026年8月5日に、火星着陸から14周年を迎える。当初の設計寿命を6年上回っており、少なくともこれまでのところ、設計に盛り込まれていた余裕が、JPLの関係者が当初認識していた以上に大きかったことを示している。
■注目ポイントQ&A
●車輪が故障した場合、何がキュリオシティのミッションを終わらせるのですか。また、壊れた車輪のまま運用を続けられないのはなぜですか。
車輪の破損自体が、必ずしもミッション終了につながるわけではありません。重大なリスクが生じるのは、1つの車輪にある19本の構造用突起であるグルーサーがすべて折れ、車輪の内側3分の2が支持を失って自由に動くようになった場合です。その内側部分が横にずれ、車輪内のハブモーターと本体側のモーターコントローラーをつなぐワイヤーハーネスに接触する可能性があります。そこでショートが起きれば、その車輪が恒久的に動かなくなるだけでなく、最悪の場合には電気的な損傷が他のモーター制御システムに及ぶ恐れがあります。JPLが正式な対応を検討する具体的な基準は、1つの車輪で14本のグルーサーが破損した段階です。この水準に達すると、ケーブルに接触する危険が無視できなくなるため、JPLは車輪の内側部分を切り離す対策を改めて検討することになります。
●「ツイスト・アンド・シャウト」とは何ですか。また、テストされていますか。
「ツイスト・アンド・シャウト」は、JPLが用意した車輪内側部の切り離し計画における、2段階の操作のうち最初のものです。深刻な損傷を受けた車輪の緩んだ内側部分を、外側の構造用リムから折り取るために設計されています。探査車は、条件に合う地面に埋まった岩の上に損傷した車輪を載せ、他の5つの車輪を直進させながら、その車輪を90度ひねります。固定された岩を支点のように使って、内側部分と外側部分の接合部を破断させる仕組みです。続く「ピジョン・トー」では、ほぼ切り離された部分を岩の面に押し付け、短い前進と後退を繰り返して分離を完了させます。どちらの手順もJPLのマーズヤードにあるスケアクロウ・ローバーで実地試験されており、外側3分の1だけが残ったリム付き車輪でも、走行を続けるのに十分な機動性を維持できることが確認されています。全工程には、車輪1つにつき1〜2か月かかる可能性があります。
●JPLは車輪の損傷をどのように抑えているのですか。
JPLは主に3つの方法を用いています。1つ目はルート計画です。毎回の走行前に軌道上から撮影した画像を分析し、特に鋭く、地面に埋まった岩を避けるルートを選びます。なかでも、キュリオシティの運用初期に損傷を加速させた、ゲール・クレーター下部の角張った玄武岩を警戒しています。
2つ目は、2017年に導入されたトラクションコントロールのソフトウェアアップデートです。リアルタイムのサスペンションデータを読み取り、各車輪の回転速度を個別に調整することで、滑りや岩の縁から受ける負荷を抑えます。
3つ目は直感に反する要因ですが、キュリオシティのプルトニウム238を利用した電源の発電量が年々減少していることです。利用できる電力が減ると年間走行距離も短くなるため、累積的な車輪への負荷が軽減されます。これらの要因が組み合わさることで、深刻な損傷の基準に達する時期は大幅に先へ延びました。JPLの2022年の評価では、探査車の予測寿命中にはその水準に達しないと見込まれています。
●キュリオシティの車輪問題は、パーサヴィアランスの改良につながったのですか。
はい、直接つながっています。JPLの車輪摩耗タイガーチームは、グルーサーがどこで、なぜ破損したのか、また地形の種類によって破損速度がどう変わるのかなど、キュリオシティの損傷を体系的に分析しました。その知見は、マーズ2020「パーサヴィアランス」探査車の車輪の再設計に活用されました。
パーサヴィアランスの車輪には、より多くのグルーサーが狭い間隔で配置されています。トレッドには、応力が集中するキュリオシティのシェブロン(山形)パターンではなく、より単純な形状を採用し、アルミニウム製の薄板部も厚くしました。打ち上げ前の試験では、新しい設計が牽引力と耐損傷性の両面でキュリオシティの車輪を上回ることが確認されました。また、パーサヴィアランスでは同等の車輪損傷は報告されていません。キュリオシティから得られた工学的な知見は、今後の火星探査車にも引き継がれていくことになります。
元記事: Curiosity Back Wheel Nears Cabling Risk as JPL Prepares Rock-Snap Contingency
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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