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NTTドコモがEricssonの新型基地局装置を国内初導入、性能とAI-RAN戦略を検証

(Ericsson.com)[写真拡大]
NTTドコモは、Ericssonの最新型大容量基地局装置「RAN Processor 6672」の商用導入を国内で初めて完了した。大容量化と省電力化に加え、O-RAN ALLIANCE仕様への準拠を特徴とする。Ericssonが進める専用シリコン型RANと、NokiaがNVIDIAと開発するGPUベースのAI-RANでは技術的な方向性が異なるが、現時点の発表だけで両者の総合的な優劣を判断することはできない。
■RAN Processor 6672を2026年6月に商用導入
ドコモは2026年7月31日、Ericssonと連携し、RAN Processor 6672の商用導入を2026年6月に完了したと発表した。RAN Processor 6672が日本の商用ネットワークに導入されるのは、ドコモ調べで国内初となる。
ただし、ドコモの発表には導入地域や設置台数、全国規模での配備完了を示す記述はない。そのため、今回の発表は「ドコモの商用ネットワークへの国内初導入」と表現するのが正確であり、「全国ネットワーク全体への導入」とまでは確認できない。
導入時期については、両社の説明に違いがある。ドコモは2026年6月に商用導入を完了したとしている一方、Ericssonの日本語発表は、同プラットフォームの商用導入を2026年7月に開始したと説明している。対象とする導入範囲または工程が異なる可能性はあるが、公開資料だけでは差異の理由は分からない。本稿では、日本での導入主体であるドコモの日本語公式発表に基づき、2026年6月に商用導入を完了したものとして扱う。
■ドコモとEricssonで異なる容量性能の表現
RAN Processor 6672は、4Gと5Gを含む複数世代の移動通信システムに対応するベースバンド処理装置である。基地局におけるデータの符号化と復号、無線信号の変調と復調、無線リソースの割り当てなどの計算処理を担う。
性能に関するドコモとEricssonの説明は、使用している指標が異なる。ドコモは、従来のEricsson製基地局装置と比べて4倍の収容効率と50%以上の消費電力削減を実現すると説明している。
一方、Ericssonは、最新のEricsson Siliconを搭載したRANコンピュートプラットフォームについて、従来モデルと比べて収容局数を最大2倍にしながら、消費電力を半分未満に抑えるとしている。2023年に6672を発表した際には、前世代比で4倍の容量を提供するとの説明も行っていた。
「収容効率」「収容局数」「容量」は測定対象が異なる可能性がある。このため、これらを一律に「処理能力が2倍」または「処理能力が4倍」と言い換えるのは適切ではない。それぞれの数値を発表主体への帰属を付けて示す必要がある。
■O-RAN準拠と周波数利用
RAN Processor 6672はO-RAN ALLIANCEの仕様に準拠しており、複数のベンダーが提供するO-RAN準拠の無線装置との相互接続を実現するための基盤となる。
ドコモは、エリアの特性に応じた無線装置と6672を組み合わせることで、通信需要が大きい都市部でも5Gエリアを迅速かつ柔軟に展開する方針だ。さらに、3.5GHz帯、3.7GHz帯、4.5GHz帯の3バンドを束ねた合計280MHz幅の周波数リソースを、Massive MIMO Unitによって有効活用するとしている。
これは、特定ベンダーの無線装置だけに構成を限定するのではなく、O-RAN準拠製品との相互接続を視野に入れた設計である。実際の相互運用には個別の検証が必要になるが、ドコモは今回の導入をOpen RANの推進と6G時代に向けたネットワーク高度化の一環に位置づけている。
■C-RANで期待される省電力効果
Ericssonは、今回のRANコンピュートプラットフォームがC-RANと呼ばれる集中型無線アクセスネットワークでの運用効率化とコスト削減に寄与すると説明している。
C-RANでは、各基地局サイトにベースバンド処理装置を個別配置するのではなく、複数サイト分の処理装置を拠点に集約する。処理能力を共有できるため、時間帯や場所によって変動する通信需要に合わせてリソースを利用しやすい。
6672の大容量化と省電力化は、こうした集約構成でサイト運用の効率化と総所有コストの削減につながる可能性がある。ただし、今回の公式発表では具体的な設置拠点数、運用コストの削減率、ドコモ全体の消費電力に与える影響は公表されていない。
■AI活用を見据えた次世代ネットワーク
EricssonのRANコンピュートプラットフォームは、4G、5G、5G Advancedに加え、RANにおけるAIと機械学習の処理を想定して設計されている。同社は、AIネイティブかつプログラム可能なネットワークを構築し、長期的なソフトウェアの進化を支えられるとしている。
ドコモで無線アクセスネットワーク設計を担当する執行役員兼無線アクセスデザイン部長の増田昌史氏は、増大するトラフィック需要に対応しながら通信品質を維持・向上させるため、ネットワーク処理能力の高度化を進めていると説明した。
ドコモとEricssonは、将来のAI活用によって発生するトラフィックの増加を想定した、次世代ネットワークアーキテクチャの共同検討にも取り組む。Ericssonは2025年12月に、ドコモの4.5GHz帯5Gネットワーク向けMassive MIMO無線機「AIR 3255」の商用展開も開始している。
■AI in RANソフトウェアとの違い
RAN Processor 6672と、Ericssonが2026年6月に発表した「AI in RAN」は別の製品である。6672は基地局側の計算処理を担うハードウェアであり、AI in RANは基地局や無線装置上でAIモデルを動かすソフトウェアサブスクリプションである。
AI in RANは、既存のAI対応Ericsson製ハードウェア上で利用でき、追加の専用ハードウェアを必要としないことを特徴とする。ビームフォーミング、リンクアダプテーション、複数レイヤーの連携、ネットワーク観測などをAIで最適化する機能が含まれる。
EricssonとT-Mobileが実施した5G Advanced商用ネットワーク上の大規模試験では、AIネイティブなスケジューラーとリンクアダプテーションによって、従来のルールベース方式と比べて周波数利用効率が約10%向上し、ダウンリンクスループットが最大15%向上したと発表されている。これはT-Mobileのネットワークにおける試験結果であり、ドコモへの6672導入によって同じ改善率が直ちに得られることを意味するものではない。
■NokiaとNVIDIAが進めるGPUベースAI-RAN
Nokiaは2026年7月15日、NVIDIAのAI-RAN技術を利用するAIネイティブRANプラットフォームを発表した。NokiaのanyRANソフトウェアとNVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティング技術を組み合わせる構成で、既存AirScale設備に追加するGPUカード、独立型AI-RANノード、汎用サーバーを利用するCloud RANという複数の導入方式を用意する。
Nokiaは、AIを利用した無線技術によって20%を超える周波数利用効率の向上をすでに実証したとしている。さらに、2027年に50%、2028年に100%を超える向上を目標としている。ただし、2027年と2028年の数値は実ネットワークで確定した成果ではなく、今後のロードマップ目標である。パイロット導入は2026年末、商用提供は2027年を予定している。
NVIDIAは2025年10月、AI-RANの開発と5Gから6Gへの移行を加速する戦略的提携の一環として、Nokiaへ10億ドルを出資すると発表した。1ドル=158円で換算すると約1,580億円となるが、発表時点では通常の取引完了条件が付されていた。
■専用シリコンとGPUは単純比較できない
Ericssonは、無線ネットワークの処理に最適化したEricsson Siliconと専用RANハードウェアを展開している。専用設計によって処理効率と省電力性を高め、既存の商用ネットワークで段階的にAI機能を利用できる点が特徴だ。
NokiaとNVIDIAは、GPUのプログラム可能性と高い並列計算能力を生かし、より計算量の大きなAIアルゴリズムを基地局側で実行する方向を目指している。将来的には無線処理とAI処理を同じ計算基盤で動かす構想も含まれる。
ただし、両社が公表した性能値は、試験環境、対象機能、比較対象、消費電力条件が同じではない。Ericssonの約10%という周波数利用効率向上と、Nokiaの20%超または将来目標の50〜100%超を、そのまま横並びにして優劣を判断することはできない。
また、今回のドコモによる6672導入だけを根拠に、Ericssonの専用シリコン戦略がNokiaのGPU戦略に勝利した、あるいはドコモが将来の6GまでEricssonへ固定されたと結論づけるのは時期尚早である。ドコモはOpen RANとマルチベンダー接続を推進する方針を明示しており、6672もO-RAN ALLIANCE仕様に準拠している。
■今回の導入が示すもの
今回確認できる事実は、ドコモがEricssonのRAN Processor 6672を日本で初めて商用導入し、基地局の大容量化、省電力化、Open RANへの対応を進めているということである。
一方、Ericssonが2026年にソフトバンクと結んだ主要契約はコアネットワーク刷新に関するものであり、KDDIとの主な公式発表はAIによるアップリンク最適化のフィールド試験だった。これらを6672または同世代カスタムシリコンの採用契約とみなし、「国内3大キャリアすべてがEricssonのカスタムシリコンで統一された」とすることは、公開情報からは裏づけられない。
今後の焦点は、ドコモが6672の導入範囲をどこまで拡大するのか、O-RAN準拠の異なるベンダーの無線装置とどのように組み合わせるのか、そしてAI in RANの機能を商用ネットワークでどの程度活用するのかにある。Ericssonの専用シリコン型RANとNokia・NVIDIAのGPUベースAI-RANの競争についても、同等条件での電力効率、周波数利用効率、導入コスト、商用運用実績がそろって初めて、実質的な比較が可能になる。
■注目ポイントQ&A
●RAN Processor 6672は全国のドコモネットワークに導入されたのですか?
ドコモは2026年6月に商用導入を完了したと発表していますが、導入地域、設置台数、全国展開の完了については公表していません。したがって、「ドコモの商用ネットワークに導入された」とするのが正確です。
●処理能力は前世代の2倍ですか、4倍ですか?
ドコモは「4倍の収容効率」、Ericssonは「収容局数を最大2倍」と説明しています。比較指標が異なる可能性があるため、単純に同じ処理能力の数値として比較することはできません。両社の表現を分けて記載する必要があります。
●日本の3大キャリアすべてがEricssonのカスタムシリコンを採用したのですか?
今回確認できた公式資料だけでは、そのようには結論づけられません。ソフトバンクの2026年のEricssonとの主要契約はコアネットワーク刷新に関するもので、KDDIの公式発表はAI最適化アプリケーションの試験です。ドコモと同等の新型ベースバンド採用を示すものではありません。
●EricssonのASICとNokiaのGPUでは、どちらが優れているのですか?
現段階では単純に判断できません。Ericssonは専用設計による省電力性と既存商用ネットワークへの展開を重視し、NokiaはGPUの柔軟性と将来の大幅な周波数利用効率向上を重視しています。公表された性能値は条件が異なり、Nokiaの2027年以降の数値には将来目標も含まれます。
元記事: Ericsson Locks All Three Japan Carriers on Custom Silicon as Docomo Deploys New Baseband
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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