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米EAのCEO報酬が過去最高の約62億円に、『Battlefield 6』ヒットの裏で進むレイオフ

(Ea.com)[写真拡大]
Electronic Arts(EA)のCEOであるAndrew Wilson氏の2026会計年度の総報酬が、過去最高の約3860万ドル(約62億円)に達したことが、同社の年次報告書から明らかになった。一方で、記録的なヒットを飛ばした『Battlefield 6』の開発スタジオを含む複数の部門では、同年度内に数百人規模のレイオフが実施されている。現在進行中のサウジアラビア系ファンドによる巨額買収を前に、経営陣の巨額報酬と現場のコスト削減という対照的な状況が浮き彫りになっている。
■過去最高額となったCEO報酬の内訳
EAが7月29日に米国証券取引委員会(SEC)に提出した年次報告書(Form 10-K)によると、CEOのAndrew Wilson氏の2026会計年度の総報酬は3864万9984ドル(約62億円、1ドル=161円換算)だった。この金額は、前年度の3053万ドルから27%増加し、2022年度の1986万ドルからほぼ倍増しており、2013年に同氏がCEOに就任して以来、EAが公表した中で最高の報酬額となる。
この報告書が提出されたのと同じ週、同社の『Battlefield』開発スタジオの4チームは、今年度初めに数百人のポジションを削減したレイオフの余波に依然として対応していた。皮肉なことに、このチームの仕事が生み出した記録的な業績こそが、EAの報酬委員会がCEOのボーナス増額の理由として評価したものだった。
Wilson氏の報酬パッケージは、ほぼ完全に株式を中心に構成されている。130万ドル(約2億900万円)の基本給は、同氏が受け取った総額のわずか3%強にすぎない。大部分を占める2848万ドル(約45億8500万円)は、業績評価指標に連動した株式報酬として支払われた。これに650万ドル(約10億4600万円)の現金ボーナスと、237万ドル(約3億8100万円)の「その他の報酬」が加わる。
「その他の報酬」には、個人警護サービスや、私的旅行での社用機の利用が含まれる。2025年6月に独立して実施されたセキュリティ評価では、Wilson氏が公私すべての旅行でプライベート機を利用することが推奨されており、その手配にかかる費用が報酬表に計上されている。
EAの報酬委員会は、ボーナスをフランチャイズの業績に直接結びつけている。報告書によると、『Battlefield 6』は「高品質なローンチに向けたすべてのマイルストーンを達成」し、批評家からの肯定的なレビューや安定したサービスとゲームプレイを実現したとされている。『EA Sports FC』、『Apex Legends』、そして同社による生成AIツールの導入も、ボーナス算出に貢献した戦略的勝利として挙げられている。
■従業員との給与格差は305対1に
財務指標もこれを裏付けている。EAの2026会計年度の非GAAPベースの純売上高は80億2600万ドル(約1兆2921億円)となり、目標の7850万ドル(※原文ママ、文脈上は78億5000万ドル)を上回った。非GAAPベースの希薄化後1株当たり利益(EPS)は8.88ドルだった。これらの数値により、財務ボーナスの支払い係数は目標の106.2%、事業業績の資金調達率は110%となった。
恩恵を受けた上級幹部はWilson氏だけではない。幹部報酬表によると、社長のLaura Miele氏が1370万ドル、CFOのStuart Canfield氏が1130万ドル、最高法務責任者のJake Schatz氏が840万ドル、最高人事責任者のMala Singh氏が830万ドルを受け取っている。トップ幹部5人は、単一の会計年度で合計約8030万ドル(約129億円)を受け取ったことになる。
ドッド・フランク法第953条(b)の規定により、EAはCEOと従業員の中央値の給与比率を開示することが義務付けられている。2026会計年度のこの比率は305対1だった。
昨年、EAの従業員の中央値が受け取った総報酬は12万6612ドル(約2038万円)だった。Wilson氏は、これ以上の額をたった1日の労働で稼ぎ出した計算になる。
この比率は一貫して上昇傾向にある。2021年に株主による拘束力のない「反対」票が投じられた後、2022会計年度のWilson氏の報酬は1986万ドルに減少した。しかし報酬履歴によると、それ以降はほぼ毎年上昇しており、2024年度は2564万ドル、2025年度は3053万ドル、そして今回は3865万ドルとなっている。なお、2025年の役員報酬に関する勧告的投票(セイ・オン・ペイ)では、約90%の株主の支持を集めている。
■AI導入がボーナス指標となる一方で進むレイオフ
今年度の報酬開示において、あまり注目されていない側面が一つある。EAの年次報告書は、2026会計年度の役員ボーナス算出に考慮された戦略的目標の一つとして、生成AIの導入を明確に挙げているのだ。そして同じ報告書には、同年度中に3回のレイオフが実施されたことも記載されている。
この関連性は単なる推測ではない。報告書のボーナス枠組みに関する文書は、開発パイプライン全体でのAI統合目標の達成と、それに伴う人員削減に対して、幹部らが同じ期間に金銭的な報酬を得ていたことを示している。2026年の2月、3月、または6月のレイオフで職を失った開発者にとって、AIがもたらしたとされる効率化の向上がボーナス原資の測定可能な要素であったという、これまで暗黙の了解にすぎなかった事実が、この報告書によって可視化された形だ。
2020年にEAを退社した元『Dragon Age』クリエイティブ・ディレクターのMark Darrah氏は、EAのような企業を「たまたまゲームを制作している金融機関」と表現し、開発者コミュニティの多くの人々が共有する見解を示した。2026会計年度の報酬構造は、この表現を単なる皮肉として片付けることを難しくしている。
■記録的ヒットとスタジオ縮小の矛盾
EAの2026会計年度における最も顕著な内部矛盾は、その数字に表れている。
『Battlefield 6』は2025年10月に発売され、最初の3日間で700万本を売り上げた。2025暦年で最も売れたシューティングゲームとなり、2026年3月のUkie Video Game Awardsでは英国のゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞し、EA自身もフランチャイズ史上最高のローンチと呼ぶほどの成功を収めた。
しかし、同作を開発した4つのスタジオ(DICE、Criterion Games、Ripple Effect Studios、Motive Studio)は、2026年3月にレイオフに直面した。EAはこの人員削減を「コミュニティにとって最も重要なことにチームをより適合させるための、Battlefield組織内での選択的な変更」と説明し、スタジオごとの内訳や具体的な削減人数は明らかにしなかった。当時、組織全体で約300人の従業員が削減されたとみられている。
これに先立つ2026年2月の第2弾のレイオフでは、長期開発中の『Skate』リブート版を手がけるFull Circleが対象となった。さらに6月の第3弾では、ゲーム発売後にEAのオンラインマルチプレイヤー環境を機能させる役割を担う、ファンケアのカスタマーサポート担当者、IT、採用担当スタッフなど、トラスト&セーフティ部門が対象となった。
EAが報告した2026会計年度の純利益は8億8700万ドル(約1428億円)で、記録的なネットブッキング(純受注額)を達成したにもかかわらず、前年の11億2100万ドルから約21%減少した。この利益率の低下は、550億ドルの買収が完了した際に抱えることになる負債の負担を考慮すると、特に重要な意味を持つ。
■巨額買収を控えた財務戦略の影
今回の年次報告書は、EAが公開企業として提出する最後の年次報告書の一つになる可能性が高い。
2025年9月、EAはサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が主導するコンソーシアムによる550億ドル(約8兆8550億円)の非公開化買収に合意した。PIFは93.7%の支配株を取得する予定だ。残りの権益は、プライベート・エクイティ企業のSilver Lakeと、Jared Kushner氏が共同設立した投資会社Affinity Partnersが保有する。EAの株主は2025年12月に圧倒的多数でこの取引を承認しており、1株あたりの評価額は210ドルと、発表前の取引価格に約25%のプレミアムを上乗せしたものとなっている。
欧州委員会は7月23日、競争上の懸念を生じさせないとしてEUの独占禁止法に基づく承認を付与した。さらに、EAが年次報告書を提出したのと同じ7月30日には、政府系資本によるEU市場の競争歪曲を防ぐための「外国補助金規則」に基づく個別の承認も付与し、本格的な第2段階の調査を開始しないことを決定した。
これにより、残る主要な規制上のハードルは米国の対米外国投資委員会(CFIUS)のみとなった。CFIUSは数か月にわたってこの取引を審査しており、特にEAのプレイヤーデータ(同社のライブサービスゲームは、報告されている7億以上のアカウントから行動、支払い、アカウントデータを収集している)と、EAのAI開発能力に焦点を当てている。CFIUSの審査開示によると、契約上の期限は2026年9月28日とされており、規制当局の承認が保留された場合は12月28日まで自動延長される可能性がある。元財務省高官らは、全面的な禁止の可能性は低いと評価しており、何らかの緩和条件が課される可能性が高いとみられている。
取引構造の分析によると、この買収には主にJPMorgan Chaseが手配する約200億ドル(約3兆2200億円)の負債資金調達が伴う。独立系アナリストの推定では、買収完了時のレバレッジ比率はEAの粗利益の約6倍に達する。歴史的に見て、この比率は買収された企業に対し、負債を返済するために買収完了後4〜7年間にわたって営業キャッシュフローによる継続的なコスト削減を要求する水準だ。買収完了前にEAが実施した3回のレイオフは、この計算と一致している。
■ゲーム業界全体への波及と問い
利益を上げながらレイオフを実施しているのは、EAだけではない。2300人以上の業界関係者からの回答に基づく「GDC 2026 State of the Game Industry」レポートによると、米国のゲーム開発者の3人に1人が過去2年間にレイオフを経験しており、AAAスタジオの回答者の3分の2が同様の報告をしている。職を失った人のうち、48%はまだ新しい就職先を見つけていないという。
しかし、『Battlefield 6』をめぐる状況——記録的な売上の数か月後にスタジオが縮小され、同じ役員報酬パッケージにAI導入のボーナス指標が含まれ、EAの近年の歴史で最高のCEO報酬額が記録されたこと——は、このパターンを異常なほど明確に示している。305対1という給与比率は、EAの規模の企業としては市場の異常値ではないが、ゲーム開発者や業界ウォッチャーが過去2年間にわたって問い続けてきた「フランチャイズが記録を更新した会計年度において、実際に利益を得るのは誰なのか?」という疑問に対し、具体的な金額を提示するものだ。
EAの組織図の頂点に立つ5人の幹部が合計8030万ドルを受け取り、それ以外の従業員の中央値が12万6612ドルであるという年次報告書の回答は、今や公的な記録となっている。
■注目ポイントQ&A
●なぜ数百人の開発者がレイオフされた年に、EAのCEOは3860万ドルの報酬を受け取ったのですか?
EAの報酬委員会は、Wilson氏のボーナスをフランチャイズの業績指標に直接結びつけました。EAの報告書に記載されている通り、『Battlefield 6』の記録的なローンチ、『EA Sports FC』の業績、そして生成AIツールの導入などが計算に組み込まれ、目標の106.2%という財務ボーナス支払い係数が算出されました。同社の報酬体系は圧倒的に株式に偏っており、強力な業績指標が達成されれば、自動的に多額の株式報酬の権利確定とボーナス支払いが発動します。財務構造の観点からは、レイオフとCEOの報酬引き上げは論理的に矛盾するものではありません。どちらも、従業員の雇用状況に関わらず、特定の主要指標に報いるよう設計された報酬システムにおいては両立し得る事実です。株主がそのシステムを再設計すべきかどうかは、システムが設計通りに機能しているかどうかとは別の問題です。
●EAの「305対1」というCEO給与比率は何を意味するのですか?また、これは異常に高い数値ですか?
305対1という比率は、ドッド・フランク法に基づくCEO給与比率の開示によると、Wilson氏が2026会計年度に12万6612ドルを稼いだEAの従業員中央値の305倍の総報酬を受け取ったことを意味します。より広範なテクノロジーおよびゲーム業界の文脈で見ると、低賃金の海外スタッフを含むグローバルに分散した労働力を抱える大規模なAAAパブリッシャーやテクノロジー企業では、200対1を超える比率は一般的です。EAの数値は高いものの、このセクターにおいて前例のないものではありません。2026会計年度の開示が異例なのは、それが3回のレイオフ、前年比27%の報酬増、そして人員増加ではなくAI導入がボーナス指標として明確に含まれていることと組み合わさっている点です。
●生成AIはEAの役員報酬体系にどのように組み込まれていますか?また、それはレイオフと関係していますか?
EAの年次報告書は、2026会計年度の役員ボーナス算出に考慮された戦略的目標の一つとして、生成AIの導入を挙げています。同社は複数のスタジオの開発パイプラインにAIツールを統合し、AIによる効率化を競争上の優位性として位置づけています。AIツールがレイオフを引き起こしたのか、それとも単に時期が重なっただけなのかについては議論が分かれています。OpenAIのCEOであるSam Altman氏は、企業がAIに関係なく実施したであろう人員削減をAIのせいにすることがよくあると認めていますが、報告書は、AIの導入が役員にとってボーナス獲得の指標であったこと、そしてそれが3回の人員削減を含む会計年度の特徴であったことを記録しています。
●サウジアラビアのPIFによるEAの買収計画は、報酬やレイオフの傾向を変えるのでしょうか?
買収はまだ完了していません。CFIUSの審査開示に記されている通り、CFIUSの審査は現在進行中であり、契約上の期限は2026年9月28日、規制当局の承認が保留された場合は12月28日まで自動延長される可能性があります。取引構造の分析によると、買収が完了すると、EAは約200億ドルの負債を抱えることになり、そのレバレッジ比率は粗利益の約6倍に達します。過去の大規模なレバレッジド・バイアウト(LBO)において、この比率は負債を返済するために買収完了後4〜7年間にわたる継続的なコスト削減を要求してきました。買収完了前の3回のレイオフは、このパターンと一致しています。サウジアラビアの非公開企業となった体制下で役員報酬が変化するかどうかは、従業員が引き続き削減に直面するかどうかとは構造的に異なる問題であり、歴史的に見て、これら2つの結果に相関関係はありません。
元記事: EA CEO Nets $38.6M as Battlefield 6 Broke Records and Its Studios Lost Staff
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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