ISSのロボットアーム「カナダアーム2」が故障、明日から約6.5時間の船外活動で修理へ――7月14日の宇宙船打ち上げに向けた最優先課題

2026年7月1日 15:48

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記事提供元:Tech Times

国際宇宙ステーション(ISS)で、5月27日から稼働を停止しているカナダ製のロボットアーム「カナダアーム2(Canadarm2)」の修理に向け、明日から約6時間40分に及ぶ船外活動(EVA-95)が実施される。この修理は、2026年7月14日に予定されている宇宙船「ソユーズMS-29」の打ち上げに向けた唯一の必須条件とされている。今回の船外活動の成否が、今後のISS運用や新型クルーの交代スケジュールに直接影響を及ぼす見通しだ。

■故障の経緯と修理の重要性

米国東部時間(ET)の火曜日午前8時35分(日本時間同日午後9時35分)、NASAのクリス・ウィリアムズ宇宙飛行士とジェシカ・メイヤー宇宙飛行士がISSのクエスト・エアロックから船外に出て、約6時間40分にわたる船外活動を行う。彼らの任務は、5月27日からオフライン状態になっているカナダアーム2の故障した手首関節を交換することだ。この修理は、7月14日に予定されているソユーズMS-29の打ち上げに向けた唯一の前提条件となっている。ソユーズMS-29には、元SpaceXのフライトサージャン(宇宙航空医師)で今回が初の宇宙飛行となるNASAのアニル・メノン航空宇宙エンジニアのほか、ロスコスモスのピョートル・ドゥブロフ宇宙飛行士、アンナ・キキナ宇宙飛行士が搭乗し、第74次/第75次長期滞在クルーとして8カ月間のミッションを開始する予定だ。

機能するカナダアーム2がなければ、ISSは無人補給船を結合(バース)させることができず、予定されているクルー交代を安全に調整することも、設計寿命25年を迎えたプラットフォームの稼働を維持するための外部メンテナンス作業を行うこともできない。他のすべての作業を進める前に、まずこのアームを機能させなければならない状況にある。

■何が壊れ、なぜ問題なのか

5月27日、カナダアーム2にある7つの電動手首関節のうち1つが、通常運用中に高いモーター電流を検出したものの、動作しなくなった。電力を消費しているにもかかわらず動作しないという故障の兆候は、関節内部のモーター・ギアボックス・アセンブリの固着または故障を示唆していた。NASAのエンジニアとカナダ宇宙庁(CSA)はアームを安全で安定した構成に配置し、この関節は遠隔での修理が不可能であり、船外活動による直接の作業が必要であると判断した。

この影響は深刻だ。カナダアーム2は、無人の「ドラゴン」や「シグナス」といった補給船をISSの米国セグメントに結合させるために不可欠な存在である。また、船外活動を行う宇宙飛行士を離れた作業現場に配置するためや、当初の設計寿命である15年を10年超えて運用されているISSの外部メンテナンスを継続するためにも欠かせない。NASAのISS運用・統合マネージャーであるビル・スペッチ氏は、6月25日の記者会見で、アームの修理と継続的なメンテナンスは、ISSの計画された運用終了まで妥協できない必須事項であると認めている。

■軌道上での修理を前提とした設計

カナダアーム2は、2001年4月19日にスペースシャトル「エンデバー」でISSに届けられ、設計寿命は15年とされていた。それが現在、予測を10年超える25年間にわたって稼働し続けているのは、地球を出発する前になされた「すべての主要コンポーネントを軌道上で取り外し・交換可能にする」という設計上の決定によるものだ。

CSAは、中央のエルボー(肘)関節1つ、肩と手首の各クラスターにある3つの回転関節の計7つの電動関節を中心にアームを構築した。これらはそれぞれ、宇宙服を着た宇宙飛行士が物理的に取り外して交換できる独立したボルトオン式のユニットとなっている。先端にあるケーブル締め付け式の把持ハンド「ラッチング・エンド・エフェクタ(LEE)」も同様に交換可能だ。全長17.6メートル、重量約1,500キログラムに及ぶカナダアーム2は、大気圏再突入に耐える設計にはなっておらず、地上に戻して本格的なメンテナンスを行うことはできない。そのため、軌道上でのモジュール式交換こそが、運用寿命を無期限に延ばす唯一の技術的手段となっている。アームは、ISSが稼働している限り、宇宙服を着た人間が部品ごとに分解して組み立て直すことができるように作られている。

この手法が使われるのは今回が初めてではない。設置からわずか1年余りの2002年6月には、固着した手首のロール関節を船外活動で交換した。また、2017年末から2018年初めにかけての2回の船外活動では、摩耗の兆候が見られた両端のLEEが交換されている。今回の「EVA-95」は、同アームが必要とした3回目の軌道上修理であり、ISSの組み立て、メンテナンス、アップグレードを支援する船外活動としては通算280回目となる。

今回の修理計画には、技術的な皮肉とも言える側面がある。ISSの内部では、SpaceX「Crew-12」のパイロットであるジャック・ハサウェイ宇宙飛行士とESA(欧州宇宙機関)のソフィー・アデノ宇宙飛行士が、カナダアーム2自体を操作して、ウィリアムズ氏とメイヤー氏が作業しやすい位置にアームを配置する予定だ。アームは、故障した手首関節以外の残り6つの関節が機能しているため、作業現場への位置決めは可能だが、実用的な作業に必要な微細な動作を行うことはできない。「アームを使ってアームを修理する」というこの方法は、まさにモジュール式アーキテクチャが意図していた通りの運用方法である。

今回の成否の影響は、7月14日の打ち上げだけに留まらない。ISSが当初の設計寿命である2016年を超えて稼働し続けられるかどうかは、有限の寿命で設計された個々のコンポーネントが、システム全体の連鎖的な故障を引き起こす前に軌道上で交換できるかどうかにかかっている。火曜日の船外活動は、そのメンテナンスモデルの最新の試金石であり、そしてこれが最後ではない。

■船外活動の視聴方法

EVA-95のライブ中継は、米国東部時間6月30日(火)午前7時(日本時間同日午後8時)から、NASA+、Amazon Prime Video、Netflix、およびNASAのYouTubeチャンネルで開始される。船外活動自体は午前8時35分(日本時間午後9時35分)に開始される予定だ。2025年11月にソユーズMS-28でISSに到着したウィリアムズ宇宙飛行士は、識別用の赤いストライプが入った宇宙服を着用する。これまでに5回の船外活動を経験し、2019年10月にクリスティーナ・コック宇宙飛行士とともに史上初の女性のみによる船外活動を行ったメイヤー宇宙飛行士は、マークのない宇宙服を着用する。また、ヒューストンの管制室からは、CSAのジェニー・ギボンズ宇宙飛行士が2人をサポートする。

■SpaceXのフライトサージャンからISSクルーへ:アニル・メノンとは何者か

修理が計画通りに進めば、関心はカザフスタンのバイコヌール宇宙基地へと移る。そこでは7月14日協定世界時(UTC)午後2時43分(日本時間午後11時43分)にソユーズMS-29の打ち上げが予定されている。コマンダーのドゥブロフ氏、フライトエンジニアのキキナ氏とメノン氏で構成されるクルーは、昨年11月に打ち上げられたソユーズMS-28ミッションの予備クルーとして共に訓練を積んでおり、地上にいる段階からすでに息の合ったチームとなっている。

メノン氏が7月14日の打ち上げ台に立つまでの道のりは、一般的な宇宙飛行士のキャリアとは異なる。インドとウクライナからの移民の両親のもとミネアポリスで生まれた彼は、ハーバード大学で神経生物学の学位、スタンフォード大学で機械工学の修士号と医学博士号(M.D.)を取得し、救急医学と宇宙航空医学の研修を修了した。米国宇宙軍の大佐でもあり、ヒューストンのメモリアル・ハーマン・テキサス医療センターで救急医療の臨床も継続している。NASAの宇宙飛行士になる前には、2010年のハイチ地震や2015年のネパール地震の被災地で医療支援活動を行った経験もある。

2021年にNASAの宇宙飛行士候補生に選ばれ(2024年に卒業)、自身が宇宙に飛び立つ前、彼は長年にわたり他の宇宙飛行をサポートする側として活動していた。SpaceX初のフライトサージャンとして、2020年の「Demo-2」ミッションにおいて有人飛行向け「クルードラゴン」の認証取得を支援し、4回の有人ドラゴンミッションの回収作業に立ち会った。また、NASAのフライトサージャンとして複数のISS長期滞在ミッションをサポートし、ロシアの星の街(スターシティ)に6カ月以上滞在して、いつか同僚となるクルーたちを支えた。そして7月14日、その役割が逆転する。

■メノン氏が軌道上で行う任務

メノン氏とクルーはISSに約8カ月間滞在し、2027年春に地球へ帰還する予定だ。このミッションは第74次/第75次長期滞在の枠組みに属しており、クルーは第74次の最終数週間に到着し、そのまま第75次へと移行する。

医療研究の計画には、医師であるメノン氏のバックグラウンドが反映されている。彼は、微小重力が宇宙飛行士の静脈構造、血流、血液組成にどのような変化をもたらすかを調べる研究に参加する。この研究は、NASAが計画している月や火星への長期有人探査ミッションに直接役立つものだ。持続的な微小重力環境下にある宇宙飛行士は、1カ月あたり約3%の骨量を失うとされるが、ISSでの研究により、すでにそのリスクを軽減する抵抗運動(レジスタンス運動)などの対抗策が生み出されている。メノン氏の任務は、この医学的アプローチをさらに前進させることだ。

また、地球からの医療物資の補給が不可能な深宇宙探査ミッションにおいて極めて重要となる、ISSの飲料水から静脈注射用の輸液を製造するプロセスの実証試験も行う。さらに、宇宙空間の過酷な環境下でも生存可能な細菌を探索する外部実験を行うことも確認している。これは、過去の不確定な結果を踏まえ、実験の対照群(コントロール)を改善して実施される。

■修理成功の先にあるスケジュール

EVA-95が成功すれば、カナダアーム2は完全な運用能力を取り戻し、7月14日の打ち上げに向けた最後の障害が取り除かれる。その後のスケジュールは過密であり、2026年9月にはSpaceXの「Crew-13」の打ち上げが目標とされている。ISS全体の今後のミッションカレンダーは、計画されている運用終了までこのアームが機能し続けられるかどうかにかかっている。

この修理は、より大きな意味も持っている。ISSが当初の設計寿命を超えて稼働し続けられるかどうかは、全体的な頑丈さの問題ではなく、有限の寿命を持つ個々の部品を、システム全体の致命的な故障につながる前に軌道上で交換できるかどうかにかかっている。火曜日の船外活動は、そのメンテナンスモデルの最新の検証であり、修理が失敗した場合の代替プランは存在しない。

■注目ポイントQ&A

●カナダアーム2とは何ですか?なぜ7月14日の打ち上げ前に修理が必要なのですか?

カナダアーム2は、国際宇宙ステーション(ISS)の主要なロボットアームであり、到着した補給船のキャッチ、船外活動を行う宇宙飛行士の位置決め、外部メンテナンスなどに使用されるカナダ製のシステムです。5月27日に7つある電動関節の1つが固着し、通常運用ができなくなりました。このアームが機能しないと、無人補給船の結合や、新クルーを乗せた宇宙船の安全な受け入れ管理ができないため、7月14日のソユーズMS-29打ち上げ前に修理を完了させる必要があります。

●アニル・メノン宇宙飛行士とはどのような人物で、なぜ今回のミッションが注目されているのですか?

アニル・メノン氏は、NASAの宇宙飛行士であり、救急医療の医師、機械工学のエンジニア、そして米国宇宙軍の大佐でもある人物で、今回のソユーズMS-29で初の宇宙飛行に臨みます。彼が注目される理由は、自身が宇宙に行く前に、長年他者の宇宙飛行を支える側として活躍していた点にあります。SpaceX初のフライトサージャンとして有人宇宙船「クルードラゴン」の認証取得を支援したほか、NASAのフライトサージャンとしてロシアの星の街に滞在し、多くのISSクルーをサポートしてきました。今回の打ち上げで、彼は「宇宙飛行士を支える医師」から「自ら宇宙に行く宇宙飛行士」へと立場を変えることになります。

●メノン氏はISSでどのような研究を行う予定ですか?

メノン氏は約8カ月間の滞在中に、微小重力が宇宙飛行士の静脈構造、血流、血液組成に与える影響を調べる研究を行います。これは将来の月や火星への長期ミッションに向けた医療計画に役立てられます。また、地球からの補給が受けられない深宇宙探査を想定し、ISSの飲料水から静脈注射用の輸液を製造するプロセスの実証試験を行うほか、宇宙空間で生存可能な細菌を探索する外部実験も行う予定です。

●現在のISSの状況と、今後の運用期間はどのようになっていますか?

カナダアーム2の故障以外にも、ISSでは「ズヴェズダ」サービスモジュールの移送トンネル(PrK)における空気漏れの悪化が課題となっており、6月5日にはクルー5名が一時的に避難する予防措置が取られました。NASAのISS運用マネージャーによると、現在PrKの圧力は安定しているものの、構造的な根本原因の調査が続けられています。ISSは当初の設計寿命(2016年)を10年以上超えて運用されており、国際的なパートナーシップによって少なくとも2030年までの資金提供と運用継続が合意されています。

元記事: ISS Crew Launch on July 14 Hinges on a 6.5-Hour Spacewalk Starting Tomorrow

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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