アスカネットは調整一巡、23年4月期も収益拡大基調

2022年5月9日 11:25

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 アスカネット<2438>(東証グロース)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業と、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業を主力としている。フューネラル事業では「葬Tech」を、フォトブック事業では新サービスの開発・拡販を推進している。さらに空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業も、セブンーイレブン店舗の非接触・空中ディスプレイPOSレジ「デジPOS」実証実験など量産化に向けた動きが加速している。22年4月期はコロナ禍の影響が和らいで大幅増益予想としている。さらに23年4月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急騰した3月の年初来高値圏から急反落の形となってやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。なお6月10日に22年4月期決算発表を予定している。

■写真加工関連を主力として、新規事業の空中結像も推進

 遺影写真加工と写真集制作を主力としている。さらに新規事業として、非接触ニーズでも注目される空中結像ASKA3Dプレートの量産化・拡販を推進している。

 セグメント区分(22年3月期から名称変更)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業(従来のメモリアルデザインサービス事業)、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業(同パーソナルパブリッシングサービス事業)、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業(同エアリアルイメージング事業)としている。

 21年4月期のセグメント別構成比は、売上高がフューネラル事業43.2%、フォトブック事業54.7%、空中ディスプレイ事業2.1%、営業利益(調整前)がフューネラル事業75.7%、フォトブック事業57.8%、空中ディスプレイ事業▲33.4%だった。

 フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。

 なお人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。22年1月にはベンチャーファンド「XVC1号投資事業有限責任組合」へ出資した。

■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進

 フューネラル事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。92年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。21年4月期末のハード設置件数は2578カ所、21年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約36.7万枚、電照焼増枚数が約12.3万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため推定市場シェアは約30%(1位)である。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。

 21年1月には「tsunagoo」による訃報作成数が累計5万件を突破した。21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500カ所を突破した。全国の葬儀場約9200カ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透したことになる。21年8月にはコロナ禍の影響で報告が遅くなりがちな葬儀の報告をスムーズに行えるサービス「tsunagoo AFTER」をリリースした。

■フォトブック事業は写真集製作サービス

 フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力として、NTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。21年4月期末時点で約4720社の写真館向けなどに年間約40万冊(OEM除く)を提供している。マイブック会員数は約28.1万人となった。

 21年1月には、スマートフォンやパソコンから簡単に出産報告や出産お祝い金の受け渡しができるWebサービスの「e-tayori(いい・たより)」(特許出願中)を開始した。コロナ禍でウエディング関連が厳しい環境のため、スタジオ写真向けや建築写真向け商品など新サービスの開発・拡販を推進している。

 22年1月には「マイブック」が、ワールドスポーツコミュニティ(愛知県名古屋市)が提供するSDGs認定の世界初のスポーツ×教育プログラム「kidss」に参画すると発表した。

■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレートの量産化推進

 空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一して、量産化(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を推進している。プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色としており、サイネージ分野の他、非接触ニーズも背景として車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートの従来よりも大きい250mm角サイズを開発して21年4月からサンプル販売を開始した。10インチ相当の画面サイズまで空中結像を可能にしたことで、操作パネルとしての用途拡大が期待されている。

 生産面では月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行している。一部工程の生産設備を増強することで比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。

 営業面では海外販売体制拡充に向けて、20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。

 21年7月にはASKA3Dプレートが、ENEOSが実施する非接触セルフ給油機の実証実験に採用された。21年12月にはASKA3Dプレートが、マクセルの空間映像マンマシンインターフェイスAFMIに採用された。従来の空間映像表示装置よりも高輝度かつ高精細な空中映像を可能にした。

 22年1月には、大和ハウス工業およびパナソニックとの「空中タッチインターホン」共同実証実験を発表した。大和ハウス工業が開発中の分譲マンション「プレミスト津田山」(川崎市高津区)のマンションサロンエントランスにおいて、ASKA3Dプレートを活用した「空中タッチインターホン」共同実証実験を開始する。

 22年2月には、セブンーイレブン・ジャパンがセブンーイレブン店舗(東京都内6店舗)において、ASKA3Dプレートを使用した世界初の非接触・空中ディスプレイPOSレジ「デジPOS」実証実験を開始した。

 22年3月には、NTTドコモのリモート接客システム「TimeRep」とASKA3Dプレートを組み合わせた「完全非接触型リモート接客システム」が、NTTドコモ中国支社から広島県庁に導入された。自治体としては全国で初めての導入となる。

■22年4月期大幅増益予想、23年4月期も収益拡大基調

 22年4月期の業績(非連結、収益認識会計基準適用だが損益への影響なし、3月7日に上方修正)は、売上高が21年4月期比9.6%増の63億26百万円、営業利益が59.0%増の4億41百万円、経常利益が34.8%増の4億45百万円、当期純利益が38.7%増の3億12百万円としている。配当予想は21年4月期と同額の7円(期末一括)としている。

 前回予想に対して売上高は56百万円、営業利益は1億56百万円、経常利益は1億60百万円、当期純利益は1億12百万円それぞれ上回り、営業利益は従来の小幅増益予想から大幅増益予想に、経常利益と当期純利益は従来の減益予想から一転して大幅増益予想に転じた。

 コロナ禍の影響が想定よりも和らいで売上高が前回予想を上回り、フューネラル事業における利益率が相対的に高い画像加工収入の好調、フォトブック事業における自社工場稼働率の回復が寄与する見込みだ。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比比11.9%増の46億88百万円、営業利益が2.6倍の3億69百万円、経常利益が95.7%増の3億74百万円、四半期純利益が2.1倍の2億62百万円だった。コロナ禍の影響が和らいで大幅増収増益だった。

 セグメント別(22年4月期から名称変更、内部売上・全社費用等調整前)に見ると、葬儀関連のフューネラル事業は売上高が10.6%増の20億18百万円で営業利益が17.7%増の5億17百万円だった。コロナ禍も影響して葬儀の小型化が継続しているが、葬儀施行件数が正常化し、画像処理技術やピント復元ツールなどの強みを生かした営業も奏功して新規契約件数が順調に推移した。この結果、遺影写真加工収入、ハード機器売上、サプライ品の売上が増加した。利益面は、人員増強で人件費が増加し、展示会出展で広告宣伝費も増加したが、利益率が相対的に高い画像加工収入の増収効果やオペレーションセンター稼働率上昇効果で吸収した。

 写真集関連のフォトブック事業は売上高が12.1%増の25億49百万円で営業利益が72.9%増の4億88百万円だった。一般消費者向け「マイブック」は旅行や各種イベントの自粛に伴う撮影機会の減少で厳しい状況が続いているが、プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」のウエディング市場において、コロナ禍の影響が和らいで売上が想定以上に回復した。利益面は、売上回復に伴って自社工場の稼働率が上昇した。

 空中結像プレートASKA3D関連の空中ディスプレイ事業は売上高が35.1%増の1億20百万円で営業利益が2億38百万円の赤字(前年同期は1億90百万円の赤字)だった。売上面は海外向けが増加したため増収だが、利益面は展示会出展の再開に伴う広告宣伝費の増加、技術開発センターの本格稼働に伴う研究開発費や減価償却費の増加で赤字が拡大した。なおセブンーイレブン店舗「デジPOS」実証実験開始など、将来の量産化に向けた実績を積み上げている。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が14億66百万円で営業利益が42百万円、第2四半期は売上高が14億64百万円で営業利益が71百万円、第3四半期は売上高が17億58百万円で営業利益が2億56百万円だった。

 修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.1%、営業利益が83.7%、経常利益が84.0%、当期純利益が84.0%だった。下期の構成比が高い収益特性を考慮すれば会社予想に再上振れ余地がありそうだ。さらに23年4月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。21年2月には、利用可能商品の選択肢を増やしてほしいとの要望に応え、多くの商品への利用が可能になるよう一部割引利用券の金額を変更(詳細は会社HP参照)した。

■株価は調整一巡

 21年12月23日発表の自己株式取得(上限14万5000株・1億円、取得期間21年12月24日~22年4月28日)については終了した。22年4月28日時点の累計取得株式総数は5万6700株だった。

 株価は急騰した3月の年初来高値圏から急反落の形となってやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。5月6日の終値は1033円、前期推定PER(会社予想のEPS18円57銭で算出)は約56倍、前期推定配当利回り(会社予想の7円で算出)は約0.7%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS345円75銭で算出)は約3.0倍、時価総額は約180億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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