相場展望10月15日号 バイデン氏の政策は、保護主義傾向が強く、 色濃いオバマ回帰・トランプ否定

2020年10月15日 09:37

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)10/12、NYダウ+250ドル高の28,837ドル
  ・投資家の関心は、バイデンのリードで大統領選から、企業業績に向きつつある。
  ・今週から本格化する米企業の決算が予想以上に良くなるとの思惑から、主力ハイテク株や金融株への買いが目立った。

【前回は】相場展望10月12日号 バイデン政策: 財政支出1,050兆円と増税450兆円 バイデン・民主党上下院勝利ならGAFA企業分割か

 2)10/13、NYダウ▲157ドル安の28,679ドル
  ・米追加経済対策への期待後退と、ワクチン治験の一時停止がJ&Jとイーライリリーにあり、投資家心理を冷やした。
  ・アップルの新型iPhone発表で、材料出尽くしとなり売りに押された。

 3)10/14、NYダウ▲165ドル安の28,514ドル
  ・ムニューシン財務長官が選挙前の追加経済対策について、民主党との合意困難との見方が伝わり下落した。

●2.米経済追加対策の協議

 1)政府が1.8兆ドルに増額したが、民主党(2.2兆ドル)とは合意に至らず協議継続。

●3.米選挙の結果シナリオ

 1)最悪のケース
  ・大統領選で、僅少差により法廷闘争にもつれ込み、追加経済対策も暗礁に乗り上げる。

 2)バイデン勝利・上院は共和党・下院は民主党の捻じれのケース
  ・民主党の大型財政政策が議会を通過できず、大統領権限で法人税の引上げが先行。

 3)好ましいケース
  ・「トランプ勝利・上下院とも共和党」。
  ・「バイデン勝利・上下院とも民主党」。
  ・どちらでも、勝利後のリスクは、(1)米中対立激化と(2)法人税増税等、が残る。

●4.バイデン氏7/9発表の「経済政策の基本理念」

 1)Buy American    米国製品の購入。   4年で4,000億ドルの調達。
 2)Make it America   米国で作る。     米製造業の設備投資・活性化。
 3)Innovation America  米国流技術刷新。   EV、新素材、5G、AI等。
 4)Invest All America   米国全体に投資。   人種・性別・場所を問わず。
 5)Stand up America   立ち上がれ米国。   米国本位の税制・通商政策。
 6)Supply America    米国内で供給。    米国での生産・サプライチェーン

 (注)
  ・バイデン氏の政策は、民主党本来の保護主義的傾向が強く、トランプ大統領の基本政策と同様だと言われても、違和感の無い基本理念である。
  ・ただ、バイデン氏は、より洗練されたアプローチを行う可能性が高く、敵国や同盟国はさぞかし、ほっとするだろう。
  ・バイデン氏が所属する民主党の対中国政策は、共和党よりも強硬的であるが、交渉手法はトランプ氏とは異なったものになるだろう。

●5.バイデン氏の具体的政策

 1)省エネを推進し、2035年までに発電所のCO2排出ゼロ。
 2)「国産」のソーラーパネル5億枚、「国産」の風力発電設置6万基。
 3)バッテリー、クリーンエネルギー送電網の開発・性能向上。
 4)乗用車・トラックの環境基準強化、スクールバスのEV化50万台。
 5)EV製造への補助金、新燃料車への買い替えに補助金。
 6)CO2低減となる高速鉄道網への投資。
 7)石油・ガスに対する環境規制の復活・見直し。
 8)化石燃料補助金廃止・海外の石炭関連融資の廃止。
 9)パリ協定再加入、気候外交を最優先。
 10)クリーンエネルギー投資・輸出策の推進

 (注)バイデン氏政策は、オバマ政権時代への回帰であり、トランプ政策の全面否定が窺える。

●6.米企業動向

 1)JPモルガン  7~9月期は貸倒引当金積み増し大幅減で、予想外の増益。株式と債券の手数料収入が30%増もあり2020年の四半期では最高益。
 2)アップル  初の5G対応「iPhone12」を10/13に発表。価格は799ドルから。画面は6.1インチ。処理速度5割増。一回り小さい5.4インチ「iPhone12ミニ」の価格は699ドルから。
 3)ブラックロック 7~9月期決算は純利益+22%増(前年同期比)。
 4)デルタ航空   7~9月期決算は旅客収入▲83%減で最終赤字5,600億円。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の動向

 1)10/12、+86高の3,358
  ・政府の景気刺激策期待で大幅上昇。

 2)10/13、+1高の3,359
  ・9月貿易統計は前年比4カ月連続で上回り、輸入は3カ月ぶりにプラスとなったが、株価への反応は無かった。

 3)10/14、▲18安の3,340
  ・4営業日ぶりに反落した。
  ・約1カ月半ぶりの高値を付けていたため、利益確定売りが優勢だった。
  ・習近平国家主席の10/14深圳市での演説に対する反応も限定的だった。

●2.中国がレアメタルを輸出禁止の報道

  1)輸出禁止は、米国等の半導体やデバイス製造等の一部企業に打撃。

●3.中国の海外からの先端技術の掠め取り方(JBPressより抜粋

 ・オーストラリアのシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)調査報告書

 1)中国の「海外人材採用ステーション」は、中国共産党(CCP)中央統一戦線工作部の活動と連携しており、その政治的影響力の取組みと重なっている。中国の「人材採用プログラム」の標的は、大学や研究所のハイレベルな科学者等である。
  ・中国の公的統計では、2008~2016年の間で約6万人の海外の専門家を獲得した。
  ・日本からも1,000人以上の個人が採用されている可能性がある。

 2)中国共産党(CCP)の問題点は、同プログラムを利用して、違法または不透明な手段によって海外から技術を獲得していることにある。
  ・この取組みは、透明性が無く、不正行為、知的財産の窃取またはスパイ活動に広く関与しており、そして人民解放軍の近代化にも寄与している。

 3)中国政府および中国共産党の人材採用ステーションは世界で600あり、国別設置数は米国146ドイツ57、オーストラリア57、英国49、カナダ47、日本46、フランス46、シンガポール21、ニュージランド13、スウェーデン12である。

 4)日本ではステーションに、全日本華僑専門家連盟(通称:中国留日同社)があり、少なくとも8つ運営しており、主要な統一戦線グループである。活動内容は、人材採用イベントを開催や、中国での人材採用博覧会に科学者を招聘し、例として福建省のために30人の科学者を採用したと言われている。

 5)これ以外に、中国は2017年に中国国民に対し国家への情報活動の協力を義務付ける「国家情報法」を施行し、全国民を活用して各国の情報を中国政府・共産党に集中する仕組みを作っている。 

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/12、日経平均▲61円安の23,558円
  ・米追加経済対策について早期成立困難との不安感がくすぶり、直近の高値圏で利益確定売り優勢が優勢だった。
  ・ただ、米企業の決算発表を前に様子見姿勢が強く、下値の模索は限られた。

 2)10/13、日経平均+43円高の23,601円
  ・100円を超える買い先行後は、決算発表を控え、米株先物が下げ幅を拡大したこともあり、買いに慎重となった。

 3)10/14、日経平均+24円高の23,626円
  ・米国株安を受けて安く始まったが、政府の第3次補正予算に対する期待が広がり、米NYダウ先物も堅調に推移し、投資家心理を支えた。

●2.日経平均の先行き

 1)「米国」株は決算発表での予想EPSの大幅改善を織り込む動きが始まったが、「日本」は2020年の予想PERが22.9倍、2021年の予想PERが17倍という現状から、先行した株高に業績改善が追い付いていないことが顕著。

 2)月末から始まる3月期決算企業の内容を確かめるまでは、米国株上昇との連動性は低下の可能性高い。

●3.外資系先物手口から見ると『日本株売り』の流れに変化なし

 1)先週は、米国株急伸受けて買戻し優勢となったが、基本的なスタンスは日本株売りの流れに変化は見られない。

●4.コロナによる予防的資金需要にピークアウト感、大企業は借入返済の動き(Bloombergより抜粋

 1)新型コロナ感染を背景とした企業の資金需要にピークアウト感が出てきた。大企業は先行き不透明感に伴って厚めに確保した資金を返済する動きが見られる。

 2)なお、地方銀行や信用金庫では中小・零細企業が多く、実質無利子融資などが引き続き増加している模様。

 3)コロナの影響が長引けば、借入金返済に支障をきたす企業が増加する恐れがある。ゾンビ企業救済につながる追加融資については慎重な対応となる。

●5.企業動向

 1)高島屋   8月中間決算は最終損益▲232億円赤字。通期予想は▲365億円赤字。
 2)Jフロント  8月中間決算は最終利益▲163億円赤字。通期予想は▲186億円赤字。但し、赤字幅縮小の上方修正。ギンザシックス、パルコなど保有。
 3)マルイ    池袋店と静岡店を2021年9月に閉店すると発表。

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

 ・4185 JSR    来期の利益好調予想。
 ・6902 デンソー  トヨタ生産10%増効果もあり営業利益急増。
 ・5401 日本製鉄  鋼材需要上昇
 ・9104 商船三井  自動車輸出増の効果

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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