相場展望8月31日号 FRBの低金利政策が長期化でも、『金利上昇する危うさ』 安部政権の『光と影』

2020年8月31日 07:22

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)8/27、NYダウ+160ドル高。
  ・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、物価上昇するまで利上げ見送りの考えを示した。
  ・しかし、インフレ期待の高まりで米長期金利が上昇し、ハイテク株が売られ、景気敏感株が買われる展開となった。

【前回は】相場展望8月28日号 FRBがインフレ容認ならば、『ドル売り・金と株価上昇』 注目:1.FRB議長講演 2.安倍首相会見 3.FOMC内容

 2)8/28、NYダウは続伸し+161ドル高の28,653ドルと、昨年末を上回る。
  ・ドル安で、輸出関連株に買いが集まった。
  ・FRBのゼロ金利政策長期化を背景に、利回りが低い債券に対して株式の魅力が高まるとの見方から半導体関連などハイテク株が買われた。
  ・注意点は、FRBの低金利政策の長期化にもかかわらず、市場金利が上昇し金融株が上がっていること。

●2.パウエル米FRB議長は8/27の講演で、『金融政策のインフレ目標を年平均2%とする』と発表

 1)この発表により、失業率の低下を目指し、FRBは物価2%超も容認することになった。

 2)FRBは持続的な2%のインフレ目標の未達は、好ましくないとの考えが背景にある。パウエル議長は、低インフレ率が経済に深刻なリスクを生む可能性があると警告した。加えて、インフレの上昇が、賃金の伸びにつながり、強い労働市場も成り立つと説明している。

 3)目標インフレ率を『年平均インフレ率』とすることで、FRBは今まで考えていた以上に長期間、大規模な金融緩和を維持する必要が出てきた。

 4)なお、FRBの思惑通り、『ドル安が進行』し、円やユーロに対してドル安が進展している。

 5)問題なのは、パウエル議長講演の結果、金利が低下するどころか上昇の動きを見せていることだ。もし、米長期金利の低下が進まないようなら、米国株が崩れる可能性が高くなってくる。 

●3.為替市場は、パウエル発言後に『ドル安・円高』が急伸、ユーロも「ドル安・ユーロ高」

 1)8/28NY時間で、円は前日比1円19銭高の105.37円。

 2)1ドル=100円に到達するかは、ドル次第。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数は8/28、+53の3,403

●2.中国の1~7月の対外投資は6兆4,700億円、「一帯一路」の沿線国への投資が活発

 1)中国商務省によると、対外直接投資(金融分野除く)は、前年同期比▲2.1%減少した。

 2)沿線国との新規工事請負額は、総投資額の17%を占め、7兆1,000億円に達した。特に請負工事の成長が著しいのが、一般建設、石油化学工業、土木建設の分野。

●3.中国フィンテック「アント」は上海・香港で上場へ、アリババ創業者の馬雲氏が株式過半数

 1)アント・グループは、上海と香港の証券取引所に新規株式公開(IPO)を申請した。同社はアリババの傘下にあり、キャッシュレス決済の「支付宝(アリペイ)」や個人向け信用評価システム「芝麻信用」などIT技術を駆使したさまざまな金融サービスを手掛けている。

 2)IPOによる資金調達額は最大300億ドル(約3兆1,800億円)と世界最大規模の可能性。

 3)アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は直接所有と間接所有の合計でアントの発行済株式の50.52%を握っている。

 4)アントの2020年1~6月期の売上高は前年同期比38%増の725億元(1兆1,100億円)、純利益は前年同期比11.6倍の219億元(3,350億円)に達した。

 5)なお、アリババに対する馬雲氏の持ち株比率は5%に満たず、「パートナーシップ制度」と呼ぶ特殊な仕組みでアリババに対する影響力を保持している。

●4.米駆逐艦がパラセル諸島(中国名:西砂諸島)の近くを航海したと米太平洋司令部が8/28発表

 1)中国人民解放軍は、米駆逐艦が「中国の許可なく領海に侵入した」と強く反発した。続けて、「米国が南シナ海で次々と問題を引き起きしている。挑発行為を即時中断せよ」と求めた。

●5.中国政府は米への対抗姿勢見せる、「中国アプリを禁止なら、iPhone使わなくてもよい」と

 1)中国外務省の報道官が8/27に記者会見で発言。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の動向

 1)8/28、日経平均は▲326円安の22,882円、一時▲600円超下落。
  ・朝方は米長期金利が上昇して金融株高となった。しかし、安倍首相の辞任報道を受け、相場が一変し大幅下落となった。

●2.安倍政権の『光と影』

 1)光:
  (1)政治において長期政権を築くことで、安定した政治・経済と一貫した外交ができ高評価を得た。それまでは短命内閣で政治混迷が長く続き、諸外国から日本は低評価だった。
  (2)企業業績は回復し、過去最高益となり、株価も約2倍上昇した。
  (3)雇用と所得は改善を見せた。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率が1倍を大幅に上回った。
  (4)金融資本市場の安定に貢献。
  (5)成長戦略の、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、環太平洋連携協定(TPP)などの通商交渉を進展させた。
  (6)法人税の段階的引き下げ、外国人労働力の受け入れなどで、企業の苦しみの解消に貢献した。
  (7)訪日外国人旅行客増加によるインバウンド需要を拡大した。
  (8)米国、特にトランプ大統領と親密な関係構築ができ、日米同盟を強固にした。
  (9)世界政治経済を代表するG7やG20で日本の存在感とリーダーシップを示した。

 2)影:
  (1)米中貿易摩擦による海外経済の減速の影響を受けた。
  (2)新型コロナ感染拡大の影響を受けて、世界経済も日本経済も失速。
  (3)相次ぐ自然災害に襲われた。
  (4)新型コロナで外国人労働力や旅行者の受け入れ停止し、インバウンドが消失した。
  (5)消費税率2回の引き上げも、財政悪化に歯止めかからず。今年度の国と地方を合算した債務(借金)残高は、1,146.5兆円の見込み。これはGDP(国内総生産)の2倍超で、政権発足した2012年度比+260兆円増。
  (6)景気後退局面に入った2019年10月に消費税増税に踏み切った『判断ミス』と、コロナ禍が重なり、実質GDPは4~6月期に年率換算で485兆円と、政権発足前の水準まで戻った。

●3.安倍首相の辞任表明で、日本の政局不透明感拡がるも、次期首相の早期決定で総選挙速まるか

●4.日本銀行は、「安倍首相の辞任表明受け、『政策に変更なし』」と声明

●5.企業動向

 1)ソフトバンクG
  ・携帯子会社ソフトバンク株を、最大1兆4,700億円規模の売却へ。
  ・ソフトバンクGは4兆5,000億円の資産売却を進めているが、この売出しで資金調達規模は6兆円近くに達する。
  ・調達資金は、自社株買や、企業買収に使われることになりそうだ。
  ・ソフトバンクGは8/28、1,000億円を上限とする自社株買を発表。その取得期間は今年の10月1日~2021年3月31日まで。

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

 ・2181 パーソル    「同一労働同一賃金制度」が単価上昇に寄与し、営業利益増加。
 ・3769 GMOPG     キャッシュレス決済の拡大。
 ・4739 CTC       5G、流通向けIT投資で受注増加。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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