相場展望8月28日号 FRBがインフレ容認ならば、『ドル売り・金と株価上昇』 注目:1.FRB議長講演 2.安倍首相会見 3.FOMC内容

2020年8月28日 08:06

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)8/25、NYダウは▲60ドル安、SP500が3営業日連続で過去最高値を更新。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が、新型コロナによる打撃からの回復過程にある米経済を、引き続き緩和策で支援すると投資家は当てにした過剰マネーで株価上昇。

【前回は】相場展望8月25日号 バイデン氏を待ち受ける『チャイナ&ウクライナ疑惑』 米8月経済指標は足踏み示し、市場は膠着・個別物色

 2)8/26、NYダウは+83ドル高の28,331ドル、ナスダックとSP500は4日連続最高値更新

 3)8/27、NYダウ(日本時間3:21現在)+228ドル高、一時270ドル超高。
  ・パウエルFRB議長講演での「当面は2%を緩やかに上回るインフレ率を認める」と述べた。
  ・パウエル発言で、『ゼロ金利政策が長期化し、株式市場に資金が流入しやすい状態が続く』との見方が強まり、買いを促した。

●2.米連邦準備制度理事会(FRB)は5年以上の長期間のゼロ金利政策維持の公算が大きい

 1)FRB金融政策を占うパウエル講演と、政策決定会合のFOMCに注目
  (1)パウエル米FRB議長8/27、ジャクソンホールでの演説内容
  (2)米公開市場委員会(FOMC)の9月会合

 2)FRBはインフレ容認の姿勢を取り、インフレ率が一時的に+2%を上回るのを歓迎することも考えられる。
  ・パウエルFRB議長は、新型コロナによる高い失業率や長期にわたる経済停滞が物価安に閉じ込められる可能性を回避するために、インフレを一時的に過熱させることを検討している模様。ディスインフレが最大のリスクになり得ると警戒しているようだ。
 ・米カンザスシティー連銀のジョージ総裁も8/26に、「インフレ率が2%目標を多少上回っても反対しない」と語ったのも『インフレ容認説』にヒントを与えた。

 3)過去、2008年の金融危機を受けてFRBはゼロ金利政策に踏み切ったことがある。その後、FRBがようやく利上げしたのは、その7年後の2015年12月だった。
  ・今回、FRBがインフレを加速させるのに、手間取ることを踏まえると、7年かかるかもしれないという見方もある。

 4)FRBが2%を超えるインフレ容認となれば、FRBが将来的な米経済の過熱を黙認すると宣言したことも同然となる。
 ・その場合、インフレ上昇は実質金利マイナス幅を拡大 ⇒ ドル安 ⇒ 輸入物価上昇でインフレ上昇 ⇒ 金価格・株など資産価格上昇のシナリオを想定する。
 ・ただし、市場はFRBのインフレによる物価目標導入をかなりの割合で織り込んでいる。このため、米長期金利の低下が進まないようなら米国株が崩れる可能性が高くなる。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の動向

 1)8/25~27は、合計で▲35安・引け値3,350のBOX相場が継続。

●2.アリババに対する投資家は、米制裁で、米ADR(米預託証券)から香港株に持ち株を転換

 1)理由:米国による制裁や、中国企業が米上場廃止に追い込まれる可能性を懸念して。
 2)転換社:テマセクHD、ベイリー・ギフォード、マシューズ・アジアなど。
 3)なお、アリババは米国で上場していたが、昨年に香港でも上場している。

●3.中国アントは香港と上海に上場申請、資金調達額は300億ドル(約3兆2,000億円)で最大

 1)中国電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を運営する金融会社アントは8/26に香港と上海の両取引所に株式上場を申請した。
 2)中国メディアによると、新規株式公開(IPO)による資金調達額は300億ドルとなり、世界最大になる可能性。
 3)アントは、中国電子商取引最大手のアリババ集団の傘下。

●4.米国は、南シナ海の人工島建設・軍事拠点化で(1)関係者にビザ制限、(2)中国24社に禁輸制裁

 1)ポンペオ国務長官は8/26、中国による南シナ海の埋め立てや軍事拠点化などに関与した中国人に対してビザ(査証)制限を実施すると発表した。
  ・ポンペオ氏は声明で、「中国政府は2013年以降、国営企業を使い、南シナ海の係争地で約1,200へクタール以上の埋め立て、『地域を不安定化させている』」と批難。
  ・そのうえで、『米国は、中国が南シナ海での威圧的行動を中止するまで行動する』と警告した。

 2)米商務省も、米国企業からの製品輸出を禁じる海外企業リストに中国企業24社を加えると発表した。
  ・中国企業24社は、南シナ海人工島の建設と軍事拠点化の関連企業である。
  ・国営企業・中国交通建設の子会社など建設、通信、造船など幅広い業種が含まれる。

 3)トランプ政権は7月、中国が南シナ海をめぐっても厳しい対応を取る方針を示していた。

●5.米ポンペオ国務長官、中国による香港抑圧に加担していると英銀HSBCを批難

 1)批難の内容
  ・香港メディア企業の壱伝媒(ネクスト・デジタル)を率いる黎智英(ジミー・ライ)氏が逮捕された後、同社幹部のクレジット口座や個人口座へのアクセスをHSBCが停止した。
  ・また、HSBCが、米国が制裁をしている人物に対しHSBCの銀行サービス提供を続けたとも指摘した。

 2)なお、HSBCは、中国による香港国家安定維持法の施行を機に、中国寄りの経営にシフトした。
  ・この問題が更にこじれると、HSBCはドル決済システムから排除される可能性がある
  ・HSBCは、香港の中央銀行機能を務める3銀行の1つであり、香港ドル紙幣を発券。HSBCが、ドル決済システムから排除された場合、ドルに連動している香港ドルの信認が揺らぎ、香港の国際金融センターとしての地位低下がより一層進展する懸念が生じる。香港証券取引所の株価指数であるハンセン指数は、HSBC傘下の恒生銀行の名に因んでいる。そうなると、香港が特別な都市から、中国の1都市に近づくことにつながる。

 3)HSBCの中国関連企業として交通銀行の19.9%、上海銀行の8%、中国平安保険の19.9%の株式を保有している。

●6.中国人民解放軍は8/26、南シナ海に中距離弾道ミサイルを4発発射


■III.日本株式市場

●1.日経平均の動向

 1)8/25、日経平均は+311円高の23,296円、2/11以来の高値。
  ・前日の米株式上昇を反映し、好業績株、空運の買いが目立った。
  ・コロナ感染からの経済活動再開の期待から、過去に売られていた銘柄の買戻しの動きが広がり、まんべんなく買われた。

 2)8/26、日経平均は▲5円安。

 3)8/27、日経平均は▲82円安の23,208円。
  ・米国株のナスダックとSP500の4営業日連続の最高値更新も、日本株にとって材料不足との見方。
  ・米FRB議長の講演を控え様子見。

●2.安倍首相8/28、17時からの記者会見に注目

●3.日銀ETFの減損リスク膨らむ

 1)日銀が買い進める資産買入政策の目的は、物価上昇が年2%になるように支えることだった。ところが、目的だった物価は上がらなかった。

 2)日銀のETF残高は・・・・・

 3)日銀は2020年3月期決算で不動産投資信託(J‐REIT)の減損損失で▲159億円の減損を計上した。

 4)しかし、日銀のETFは、日経平均が高値圏でも買っており損益分岐点を上げている。
  *7/31時点での損益分岐点(簿価)予想は20,129円程度。
  そのため、日経平均が高い所で買えば買うほど減損リスクは高まることになる。ETF買入の目的だったはずの『物価は上がらなかった』。日銀はETFやJ-REIT購入の規模だけ拡大させてきた結果、日銀保有のETF等の取得単価を高くして、リスクを高めている。新型コロナや米中対立激化次第で、相場は今後20,000円を割る可能性がある。日銀はETF買いの目的である『物価上昇』を果たせないまま、ETF減損リスクを高めている。

●4.雇用助成金、12月まで特例延長

●5.企業動向

 1)伊藤忠商事は8/25、子会社のファミリーマートに対して実施した株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表した。伊藤忠は今後、完全子会社化に向け手続きを進め、ファミマは年内にも上場廃止へ。

 2)キオクシア(旧:東芝メモリHD)は8/25発表、10月上場へ、時価総額は3兆円規模。東芝が約4割を出資する半導体大手。半導体のなかのMAND型フラッシュメモリーで世界2位。

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

 ・6981 村田製作所  アップル関連、5Gに加え、全個体電池にも期待。
 ・6752 パナソニック 車載用全個体電池に期待。
 ・7309 シマノ    自転車・釣り具の需要堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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