相場展望6月8日号 米国に対抗して、世界に覇権を求める新興・中国 新冷戦⇒早くも熱戦の勃発リスク増大  ~一考察~

2020年6月8日 08:48

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■I.中国の覇権国家への道は、『米国からの巨額貿易黒字と米国の油断』が開いた

●1.中国が覇権を求められるようになったのは、米国との巨額の貿易黒字が源泉

 1)米国から得た巨額貿易黒字を中国はどこに使ったのか?
  (1)軍事費を急増: 軍事近代化、世界に軍事拠点を拡大
   ・2020年国防費19.2兆円(前年比+6.6%増、1~3月期経済成長率▲6.8%減)。
   ・中国国防省・呉報道官「反分離主義闘争のせいで多くの予算を投入」と擁護発言。
 
  (2)巨額補助金急増: 先端・高度工業製品の育成
   半導体製造についてだけでも補助金は年3兆円規模の模様。
 
  (3)貧困国の隷属化: 経済支援を通じて、国連での中国支持国増大で米国に対抗
   ・国連の構成は、
    (1)拒否権を持つ5大国と
    (2)その他の国は大小ではなく「1国1票 」による多数決投票、
    で運営されている。
   ・中国による多数派工作の浸透と経済弱者国との2国間交渉で、中国の覇権拡大。
    例:世界保健機関(WHO)・・事務総長は前任者が中国人、現任者は中国主導で前任者が指名して選出したという経緯。
      東南アジア諸国連合 ・・「全会一致」が原則の為、カンボジア、ラオスの反対で、中国に対して不利な事項の不問続く。
      2国間で有利交渉  ・・フィリピンとの領有権問題で、国際司法裁判所決定を無視して、経済援助を餌に有利解決。

●2.米国が中国から得たのは、低コスト調達と農産物の輸出等の経済的利益で戦略的利益は小さい

 1)安価な労働力による食料品とサプライチェーン組込みによる低中級工業製品の低コスト調達という経済的魅力に目を奪われた。

 2)米国・西欧先進国が中国に求めたものは共産主義から民主主義国家への転換期待があった。そのため、世界経済への参画(WTOへの加盟等)を許可したが、中国に逆手を取られ、中国の強国化と世界貧困国の中国への隷属化を進展させ、中国の覇権国家づくりを許した。むしろ中国の覇権国家化の進展と中国共産党一党独裁制の完成度を高めさせ、当初の期待とは真逆の結果となった。

●3.トランプ大統領が会見で述べた、中国の問題行動の列挙

 1)知的財産の窃盗

 2)太平洋の領土問題: 南シナ海の岩礁を埋め立て、軍事基地を建設した問題など

 3)新型コロナウイルスの隠蔽

 4)製造業のサプライチェーンの見直し

 5)違法なスパイ活動: 中国人留学生に対する入国制限の必要性など

 6)米国証券市場に上場する中国企業の米国会計基準の違反

●4.米国が中国に勝てるワケ:米国には『金融核兵器』がある

 1)米国は国際決済基軸通貨「米ドル」を、中国人民元と香港ドルとの『交換停止』が出来る。
  ・国際決済銀行(BIS)の外国為替取引における占有率からも人民元は脆弱。
     占有率 : 米ドル 88.3%、日本円 16.8%、人民元 4.3%
  ・米ドルとの交換停止を発動されたら、中国本土は原油も食糧も買えなくなって立ち行かなくなる。香港も金融セクターとしての機能停止に追い込まれる。

 2)中国が空威張りしようと、米国が持つ『金融核兵器』には勝てない。
  ・香港では、すでに米ドルとの交換で交換業者が賑わっており、一度で数百万香港ドル単位で交換を求める客もいるという。
  ・米ドルへの逃避が中国本土でも始まっている。中国国民や共産党幹部でさえ人民元を信用していなく、米ドルに交換して米国や英国・カナダなどに隠しているという。

●5.自信(慢心)を付けた中国の現状

 1)中国は米国の圧力に屈しないという方針を明確にした。
  (1)中国は全人代において5月28日、香港国家安全法を採決した。
    ・香港国家安全法は反政府活動の全面禁止で、危険人物は最長30年の懲役刑。

  (2)香港を中国に返還する条約では、「2047年まで高度な自治を維持する」となっている。にもかかわらず、英国と中国が締結した国際条約の違反を中国共産党・政府は実行した。

●6.有力民営企業の事実上の国有企業化への進展 ⇒ 中国共産党支配の強化・拡大につながる

 1)民営企業アリババ   
  (1)創業者・馬雲の引退と中国地方政府から人材派遣で経営権奪守
  (2)アリペイに溜まった巨額資金を中国人民銀行が吸い上げ。

 2)有力民営企業も同様  (1)杭州市政府からだけで50人を民営企業に派遣し支配強化。
              (2)有力民営企業の創業者の引退時期はアリババ・馬雲と重なる。

 3)共産党支配強化    (1)民間企業273万社、外国企業10.6万社の7割超で中国共産党の党組織が企業内で設立され、共産主義が強化されている。
                 

●7.中国共産党政府の最近の失敗

 1)2019年香港暴動デモの抑圧を起因として、「香港」「台湾」で失敗が続く
  (1)香港の民主派が昨年の区議選挙で大勝

  (2)台湾の総統選挙で親中派・国民党の大敗と独立派・民進党の地滑り的大勝利を招く。
   ・台湾では、香港デモ抑圧するまでは中国本土と統一することを目指した国民党が断然優位だった。むしろ、独立派の蔡英文総統は1年前には支持率20%と落選が予想されていた。
   ・台湾国民は「1国2制度」を受け入れる政治的方向にあったが、香港弾圧を見て、中国本土の甘い言葉に気が付き、選挙において独立派・民進党と蔡英文の圧倒的勝利となった。
        
 2)新型コロナの情報統制と中国の自国主義が、世界先進国等から疑念と反発を招く。
  (1)習近平ではなく『習隠蔽』と揶揄される。
   ・香港サウスチャイナモーニング(SCMP)6月2日によると、WHO内部情報を分析した結果として、中国の厳格な情報統制により「中国は重要な資料を隠し、最小限の資料だけをWHOに提供したため、WHOは中国から、より多くの情報を速やかに得るため中国を褒めたたえた」と暴露した。
   ・また中国は1月に中国政府の研究所が新型コロナの遺伝子地図を完全に解読したが、1週間以上経ってから公開したと伝えられた。
   ・WHOの非公開会議では、中国が新型コロナ拡散の推移と危険性を判断するのに、十分な資料を共有しないと不満の声が出ていると、SCMPは伝えた。

  (2)新型コロナ被害で現在100兆ドル(1京1,000兆円)の損害賠償請求の訴訟が進行中。
   ・この金額だけで中国のGDP(国内総生産)の7年分に相当する額に達している。請求国は現在、米国・英国・ドイツ・イタリア・エジプト・インド・ナイジェリア・オーストラリアの8ヶ国。
   ・経済損失は先進7ヶ国(G7)に限っても、最低4兆ドル(425兆円)に上ると試算。

  (3)英国のシンクタンク「ヘンリー・ジャクソン協会」の指摘。
   ・中国政府は春節の長期連休前に湖北省武漢市民を多数出国させた。
   ・中国政府は世界保健機関(WHO)に十分な情報提供をしなかったことが、国際保険規則に反するとして、国際社会は中国政府に対し法的措置を取るべきと提言。

■II.中国・習政権が抱える難解な課題

●1. 経済失速

 1)失業率4月は20.5%
  (1)国家統計局発表では6.0%だが、中国有力証券会社の研究所発表では20.5%。(発表後、資料はお蔵入り、所長は解雇)
  (2)だが、国家統計局データからも、失業者7,000万人(失業率20.5%)と推計。農民工(農村部からの出稼ぎ)3.35億人のうち、農村に帰郷したのが5,000万人。輸出産業、小売り、飲食、旅行代理店などで2,000万人。

 2)2020年1~3月期のGDP成長率は前年同期比▲6.8%減とマイナス成長
  (1)新型コロナの前から個人消費や設備投資が落ち込んでおり、コロナ影響で急回復の見込みが無くなった。

 3)米中対立が激化
  (1)欧米諸国への輸出増も絶望的⇒ 雇用や消費の回復不可能な状況のため、全人代でGDP成長率予想は発表されず。

●2. 香港問題

 1)米国がとる措置の影響
  (1)中国本土から米国への高関税率を、適用除外の香港から米国への輸出にも適用。
  (2)香港がもつ金融センター機能を認めない。
   ・これまで香港が中国企業の外資誘致の窓口で資金調達してきたという役割ができなくなるという、悪影響がでる恐れ。
   ・100兆円といわれる資金が香港から流出するとの観測がある。
    (注)香港で事業をする米企業1,300社(雇用10万人)は反対の意向で要調整。

 2)中国の反論
  (1)1984年の英中共同声明の「1国2制度」等は、『英国の承諾を得たものでも、国際的な義務でもない』と述べ、共同声明に拘束されないとの見解を6月3日に明らかにした。
  (2)英国は英中共同声明に違反するとして中国に香港国家安全法の撤回を求めた。

●3. 台湾問題(中国は武力統一による台湾解放を否定せず)

 1)台湾の蔡英文総統が打ち出した方針
  (1)米国・日本・欧州と価値観を共有する国々と協力。
  (2)中国が提案する「1国2制度」は明確に拒絶した。

 2)米国は「台湾重視の政策」に切り替え、軍事品を台湾に売却。

 3)中国による台湾の武力統一のシナリオ予『3方向から台湾に軍事侵攻し、統一』
  (1)台湾の北東にある日本領土『尖閣諸島』を橋頭保とし、首都・台北市と台湾北部を制圧。
   ・尖閣諸島との距離:台湾とは170Km、中国本土と330Km、石垣島と170Km
   ・尖閣諸島の日本領海に長期間侵入し、日本漁船を長時間追跡したのは、尖閣諸島を台湾進攻時の橋頭保にする事前準備とみえる。
   ・尖閣諸島は、台湾の北部に位置し首都・台北にも近く、橋頭保として最も有効
  (2)中国本土に最も近い「台湾・金門島」を武力占拠し、台湾中部に侵攻。
   ・すでに、金門島には中国本土から中国人(民兵?)が多数居住。
  (3)「台湾・東沙諸島」を奪い橋頭保とし、台湾南部に侵攻。
   ・現在、中国空母「遼寧」等を派遣し東沙諸島奪取を想定した大規模な上陸演習を南シナ海で計画している事が分かったと、5月12日北京共同が伝えた。
   ・東沙島は台湾南部の高雄市から南西450Kmに位置し、台湾軍が駐留する。
   ・東沙諸島は、香港・台湾との中間に位置し(1)台湾侵攻と(2)太平洋侵出の要衝。
    (注)参考事例:・2014年ウクライナ騒乱に乗じた、ロシアによるクリミア併合

 4)日本との関わり
  ・中国軍の台湾侵攻となれば、日本・尖閣諸島は地政学的にみても中国軍に奪われ、台湾侵攻の橋頭保とされやすく、日本として他人事ではなくなる。
  ・中国が台湾統一問題で軍事活動に出た場合、国防動員法を発令する可能性は充分にある。その場合、中国に進出している日系企業は当局の徴発など、巻き込まれてマスク騒動以上の混乱が生じること必至となる。

 5)米中の海軍力比較
         米海軍  中国海軍(米に比べ)  
    1989年  337隻    6隻( 1.8%)  米海軍は圧倒
    2020年  199隻   134隻(67.3%)  中国は外洋艦隊建設に邁進
    シナ海での海軍力の展開に絞ると、米海軍は優位とは言えない。
    米軍縮小は、米財政赤字縮小のため軍事予算削減をオバマ政権等が推進した。

●4. 新型コロナ感染第2波

●5. 尖閣諸島

 1)日本領土になった経緯と現状
  ・1884年(明治17年)、実業家・古賀辰四郎が無人島であった尖閣諸島の探検を行い1909年には248人、99戸が生活していた。
  ・1885年以降、日本政府は現地調査し、無人島であり、清国などの国に属していない土地であることを慎重に確認し、1895年(明治28年)1月に閣議決定をし、国際法で認められる領有権取得に合致するものとし、日本の領土(沖縄県)に編入。
  ・尖閣諸島海域にイラクの埋蔵量に匹敵する海底油田の存在の可能性が1969年に報告された後に、1971年に中国と台湾が領有権を主張し始めた。

■III.「香港国家安全法」にちらつく中国の脆弱さ

 1)習近平国家主席の体制は盤石と言われているが、現実はその逆で、中国共産党独裁支配の足元が揺らいでいる危機感から強い姿勢に出ているとみる。

 2)中国共産党による1党支配は、民主主義的制度の選挙で成り立っていない。その正統性は何に依拠しているのか。
  (1)日本に勝利したこと
  (2)国民党との内戦に勝利したこと
  (3)改革開放政策による経済成長によって、急増する雇用を確保し果実を国民に配分することで中国共産党1党支配の正統性を主張し続けてきた。

 3)ところが、その経済成長に陰りが見え始めたところに、新型コロナウイルス感染でマイナス成長となるなど、経済政策が生み出してきた正統性に揺らぎが出始めてきた。

 4)国民の多くが、(1)海外旅行で見聞を広め、(2)情報化社会の進展で、世界の最先端情報を手にするようになった。こうした状況の中で、正統性の揺らぎを食い止めるため、
  (1)香港の鎮静化
  (2)台湾の統一
  (3)米国との貿易摩擦解消による経済成長の取り戻し
 が大きな課題として浮上してきている。
 特に、(1)香港の鎮静化が出来なければ、香港発の民主化を求める動きが中国本土に広がる可能性がある。そのようなことになれば、共産党支配の正統性は傷つき、共産党指導部にとって悪夢となる。

 5)中国共産党による国内統治の正統性を維持するために、中国共産党・中国政府は現在の強硬策を取らざる得ない状況となっている。
  (1)米国に対する農産物輸入停止
  (2)香港への国家安全法適用と、欧米諸国との緊張の高まり
  (3)台湾の武力統一の方針
  (4)東南アジア諸国との南シナ海問題での関係不安定
  (5)インドとインド東北部ラダック地域の国境を挟んだ軍事衝突緊張の高まり
   この状況は、かつて日本が太平洋戦争に向けて国連脱退した当時に酷似しているようにみえる。
   それだけに今回の中国共産党・中国政府の強硬策は、
  (1)国際社会での中国への信頼性を損ね
  (2)中国の孤立を決定的にし
  (3)中国経済の環境悪化させる
   という側面を持っており、ますます中国を窮地に追い込んでいく可能性がある。

  参考資料:東洋経済、現代ビジネス、サンデー毎日など多数

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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