2月の米雇用統計、予想を大幅に下回る伸びに

2019年3月10日 22:14

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 米労働省が8日に発表した2月の雇用統計では、経済政策の決定に影響力を持つ非農業部門の就業者数が2万人の増加にとどまった。ロイター社が集計した事前の市場予想は18万人増だったが、1年5カ月ぶりの小幅な伸びだった。一方賃金は上昇し、失業率は低下。雇用統計の発表を受け、8日のニューヨーク株式市場は、ダウ平均が22.99ドル安の2万5,450.24ドルで終わった。

 2万人の伸びは、複数のハリケーン損害が同時期にあった2017年9月以来の低水準。1月の31万人増からも大きく減少。米国GDPの7割を占める個人消費の動向を探るための重要指標である小売売上高は、先月発表された昨年12月の数値が9年ぶりの大幅マイナスとなったばかり。米国景気の先行きに対する懸念を強める結果となった。トランプ大統領による減税等刺激策の効果が薄れる中、好調を続けてきた米国経済について年内の減速を予想する見方が増えてきた。

 業種別では、製造業が0.4万人増、教育・ヘルスサービスが0.4万人増、プロフェッショナル・ビジネスサービスが4.2万人増だった一方、雇用の大きな受け皿である建設業と小売業がそれぞれ3.1万人、0.6万人のマイナスに転じた。

 前月が31万人増と非常に高い伸びだったため、その反動との見方があるほか、東海岸などでの雪の影響もあった。建設業においては、米FRBが2018年に4度の利上げを実行し、住宅投資が弱まった影響が出ている。小売業においては、メキシコ国境での壁建設予算をめぐる米政府内の対立から、一部政府機関が米国史上最長期間に渡り閉鎖され消費意欲が減退した影響を受けた。

 一方、今回の雇用統計では、失業率が3.8%まで下がり、歴史的な低水準を維持した。また労働市場の逼迫を受け、平均時給は前月比で0.4%(前年同月比では3.4%)伸びるなど、賃金も上昇した。伸び率は9年10カ月ぶりの高い水準。雇用統計の発表を受け8日のニューヨーク株式市場は売り優勢となったが、失業率と賃金の伸びからは米国経済の核となる個人消費の先行きをポジティブに見ることもできる。(記事:dailyst・記事一覧を見る

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