出光、豪州でポンガミアを試験植林 持続可能な航空燃料の原料候補
2025年1月10日 09:22
出光興産は9日、持続可能な航空燃料(SAF)の原料として期待されている「ポンガミア」の試験植林を開始すると発表した。ポンガミアの栽培・収穫ノウハウを持つ米Terviva(テルビバ)と共同で、豪州クイーンズランド州にて1月中旬から開始する。
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ポンガミアは、東南アジアやオセアニアなどの熱帯・亜熱帯エリアで生育するマメ科の植物だ。高さ15~25メートルほどの樹木になり、約3センチメートルの種子が入った非可食の実がつく。
種子を潰すと油が採れるが、その油収量(油の収穫量)効率が高いことから、SAFの原料候補として目されている。例えば大豆との比較では、半分以下のCO2排出量(CI値)で高効率に油を収穫できるという。
栽培もしやすい。強い日差しや干ばつ、土壌の塩分濃度が高いなど、他の作物が育ちづらい環境でも栽培可能。また、生育に必要な窒素を空気中から取り込んで蓄えることができるため、少ない肥料でも栽培でき、落葉などで土に還った際には土壌改善にも寄与する。
協業するTervivaは、米カルフォルニアに本社を置く農業イノベーション企業だ。地域の農家と提携し、10年以上にわたりポンガミア栽培や油の抽出などを研究開発。ポンガミアから採れた油で、バイオディーゼルや航空燃料、食用油などを手がけている。
今回の試験植林は非農業エリアで実施する。豪州最大規模の石炭資源会社であるStanmore(スタンモア)の協力を得て、同社が管理する約50ヘクタールの石炭鉱山の周辺用地で栽培を行う。試験植林を通じて、ポンガミアの長期安定的な栽培方法や、栽培からSAF生産までのサプライチェーンの最適化などを検証する。
出光はこれまでもSAF供給を目指して、国内の体制構築を進めてきた。2022年には、サトウキビなど植物由来のエタノールからSAFを製造する「ATJ」の装置を、千葉事業所内に建設。24年8月には、徳山事業所で使用済み食用油や植物の残渣などからSAFを製造する「HEFA」の事業化調査を終えた。いずれも28年度中の供給開始予定で、30年までに合わせて年間50万キロリットルの供給を目指している。
世界的にはHEFA技術の研究が先行しており、SAF製造の加速に伴い、原料不足が課題視されている。出光はポンガミアをHEFAの原料として想定。自社での大規模栽培を成功させ、安定的な原料確保と事業拡大を目指す方針だ。(記事:三部朗・記事一覧を見る)